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「サスティナビリティ」が最初に問われる産業

今年に入り、ぼくがラグジュアリーをキーワードにいろいろと探索をはじめた理由はいくつかありますが、その一つにラグジュアリーと称される分野は、社会的な責任に関する問いに真っ先に答えられる立場であるはずだ、ということがあります。いわゆる「贅沢」「高級」といった言葉が醸し出す雰囲気に惹かれて、というわけではないです。残念ながら 笑。

さて、11月28日にミラノで開催された、高級ブランドから構成されるアルタガンマ財団とベイン・アンド・カンパニーの報告会について、前回、以下の記事を書きました。免税市場です。今回はベイン・アンド・カンパニーの報告のなかでぼくが注目する点を紹介します。冒頭で書いたことに直結しています。

彼らの報告でキーワードとして「責任」が使われ、以下のデータが示されています。

ラグジュアリーのカスタマーの60%は「ラグジュアリーブランドは他の産業よりも社会的な責任を果たすべき」と考えており、80%は「社会的な責任を果たしているブランドを好む」と回答しています。この社会的責任については、先進国だけでなく、アジアの新興国の消費者においても言及するようになっています。極め付けは、ラグジュアリーのカスタマーは「ラグジュアリー商品の価格は、サスティナビリティのためのプレミアムが既に含まれていると考えるのが当然である」と回答している部分です。

即ち、ラグジュアリーの分野は、サスティナビリティのモデルをつくりやすい条件が整っている。同時にそう期待されている。しかしながら、それが十分に実現されているとは言い難いのが現状です。組織・オペレーション・戦略・ヴィジョンのそれぞれのレイヤーに単発的に「責任感らしきものが散見され」ているだけであり、それが幅をもって広がっているわけではないです。

だからこそ、この分野にサスティナビリティについて成熟した考え方が行き渡る必要がどうしてもあるのです。ベイン・アンド・カンパニーの報告は、次のように語ります。

現在、ラグジュアリーの消費者であってさえ、これまでのようにブランドをコアとして周縁にいてトレンドを追う存在ではなく、消費者自身が自分とは何かを示すアイデンティを自分で作っていく方向に変わりつつあります。

それが前回に触れた、ミレニアル世代からZ世代が主力が移る際の変化で、次の点を指摘しています(パワーポイント資料には説明がないので、ぼくの解釈が入っています)。

ミレニアル世代は「批判的消費者」「経験重視」「便利な新しさーレンタルやシェア」「インクルーシブを対抗的に語り多様性を強調」「デジタルによるユニバーサリティが第一」「ソーシャルメディアのセレブレティやインフルエンサーに依拠」が理解の鍵になっているのに対し、Z世代は「批判的アクター」「製品を通じた経験」「倫理的厳格さーリサイクルとメイク」「境界線を設定せずとも文化的適合性を重視」「身体性とデジタル及びグローバルとローカリティの融合とバランス」「ソーシャルメディアを通じた友人と家族の関係を優先し、自らがインフルエンサーであろとする」との傾向がみられます。

ラグジュアリーの消費者には、伝統的スノッブ層とは一線を画して、新しい価値やビジネスモデルに対して感受性が高く、ルールを変えていくことに魅力を感じる人たちが増えていると見られるのです。それが若い世代の進出や新興国市場の拡大と話としては繋がってきます。

ただ、社会的責任についてみたとき、経済的な不平等の減少や社会におけるジェンダー平等あるいは貧困の絶滅、環境問題への立ち向かいなどを見渡した時、新興国の方がより多くの問題の壁を打ち破る必要があります。ここに先進国発が多いラグジュアリー産業がどのように共に立つか、というテーマがでてくるでしょう。

サスティナビリティやSDGsという言葉が空中戦のように飛び交っています。それを現実的なビジネスに落とし込んでいくに、「ロックな場」だけでなく、既にある市場にインパクトを与えていくとするなら、繰り返しますが、ラグジュアリー産業の中身と動向をよく知るのが先決であると思います。

写真は@nzai_ken 


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