国際機関で日本人の活躍を――人数増に加え、姿勢が大切
国として経済的負担が大きいわりに、国際機関幹部職における日本人のプレゼンスが低いという問題は、古くて新しい。政府は国費で民間若手を送り込み、底上げを図る。
国際機関で働く日本人の数が相対的に少ないことは確かに問題だ。加えて、実際働いている日本人のマインドセットや姿勢にも課題があると考える。
中央省庁からワシントンDCの国際機関へ出向した経験を持つ要人に話を伺う機会があった。彼の観察によれば、人数比を横においても、「インド人や中国人に比べて、まとまりがないのが日本人」という。
一見、和を重んじる日本人気質と矛盾していそうだが、実は整合した説明ができる;日本人の「和」はあくまでも属するグループの和で、日本人という大きな共通項による和ではない。したがい、日本人の間でも「プロパー」「出向」といったグループが出来上がると、そのグループ間を隔てる垣根は高く、協力し合わないどころか、よそよそしい。そこが、国籍でまとまる中国人やインド人との差を生む。
そもそも日本人の数が少ない上にまとまらないのでは、国際機関で日本のプレゼンスを発揮することは余計に難しい。例えば、日本人に当てられたトップ幹部ポストがあっても、うまく盛り立てて国の政治力に生かすことができないという。国際機関で日本人の活躍を望むのならば、このようなソフトな課題を認識することも大切だろう。
では、処方箋は何か?偏狭な仲間意識に陥らず、むやみに自己主張だけ強くするのではないフラットに個人としてどんな相手とも対峙(たいじ)することのできる人材こそが、国際機関へ送り込むのにふさわしい人材だ。そのような候補を多く育てるためには、留学経験を早くから積ませ、企業でも、大局的な視点を意識付けながらも個人を尊重する文化を醸成することが肝要となる。
その上で、特に国際機関では、いざというとき「日本人という共通項」でまとまることが国益につながり、ひいては働く個人にとっても便益があることを理解して働いてほしい。
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