アメリカ大統領選挙の前に読み返したい、『仕事』に関する研究〜雇用創出には自国回帰が答えなの?〜
日本を含め世界中で、11月3日に行われるアメリカ大統領選挙の結果に注目が集まっています。世界NO1のGDP規模を持つアメリカの動向は、日本経済にも世界経済にも影響を及ぼすからです。下記の記事からも、世界中の企業が注目していることが伺えます。今回は、私達の生活にも影響するアメリ大統領選挙に対して、両者の政策動向を踏まえつつ、働き方の未来予測にも活かせるだろう学術研究を紹介していきます。
*バイデン氏とトランプ氏の経済政策における共通点
海外の記事を見ると、バイデン氏とトランプ氏の経済政策には、いくつかの共通点が報じられています。それは、トランプ氏が掲げてきた、バイ・アメリカン政策(≒安価な海外製品に依存するのでなく、アメリカ国内企業の製品ありきで製造業を復活させようとする政策)に似たものです。それは、海外に拠点が散らばった製造業をアメリカ国内回帰させるために、政府が部材を米国企業から調達し雇用創出を促そうとする産業政策です。では、この政策によってアメリカ中間層の復活や雇用拡大にどれぐらいインパクトがあるのでしょうか。
*中国の存在と、アメリカの雇用
アメリカ雇用に関する学術研究をみると、下記のAutor et al.(2013)では、1990年から2007年の米国製造業の雇用喪失の4分の1は、中国製品など海外からの安い部材を輸入等の影響と検証しています。たしかに、この現象をみると、中国等からの安価な輸入品に頼ることをやめると、米雇用に好影響をもたらすような気もします。でも、冷静に考えると、4分の3は他の要因が関係しているといことです。それは何か?最近の実証研究を見ると、テクノロジーの影響は無視できないでしょう。
*世界で雇用の在り方が変化している
Goos et al(2009)では、産業のデジタル化や自動化に伴い、雇用の在り方が変化していることを指摘しています。具体的には、デジタル化により、必要とされる仕事が、高い技能を必要とする仕事と、ルーティン的なそれほど高い技能を必要としない仕事に二極化しており、それに伴う所得分布も上位と下位で二極化が起きているようです。結果的に、先進国全体で中間層が減る現象が起きているとのことです。
また、一時期話題にもなったFrey and Osborne (2017)では、テクノロジーの進化により米国全体の雇用の約47%は自動化される可能性をシミュレーションしています。
*私たちの働き方はどう変化していく?
以上の研究を踏まえると、アメリカの雇用創出には、たしかに自国第一主義的な自国で何でも賄うというのは一定の効果があるかもしれませんし、耳障りは良いと思います。しかし、デジタル化の影響で世界中で雇用市場が変化しつつあり、それに伴い世界で中間層の減少が報告されています。本来は、即効性はなくてもテクノロジー社会に沿った人材教育の継続的支援が必要なのかもしれません。そして、アメリカ大統領選挙は、そんな雇用の在り方について改めて考えさせられる契機となると思います。なぜなら、一部の先行研究では、他国が取り入れている政策や主義は、自国にも伝播することを示していますし、アメリカを他国が真似する可能性も秘めているからです。
まずは11/3に何が起こるか注目です!
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崔真淑(さいますみ)
*冒頭の画像は、崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)のイラストより引用。無断転載はご遠慮くださいね♪
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