2022年、複業(副業)トレンドのすべてを徹底解説〜国の動向と現在地と未来〜
日経COMEMOのKOLをしております、大林です。複業マッチングプラットフォーム「複業クラウド」を運営する株式会社Another worksの代表をしております。
KOLを拝命し、複業や働き方に関して、毎月寄稿させていただいてから、2年が経ちました。2020年から毎年1年の振り返りと次年度のトレンド予測を続けてきましたが、2022年は、副業元年と呼ばれる2018年からの流れが加速し、国や行政の複業(副業)への対応が急速に動き出した年でした。本記事では、国の政策や動きに注目し、2023年の複業(副業)がどう動くのか予測していきます。
2022年の複業(副業)解禁動向はこちらで解説していますので、併せてチェックしてみてください!
2022年は複業(副業)が国策として一気に動き始めた年
2022年は、国の動きに伴い、企業の複業(副業)受け入れ、解禁や容認が進んだ1年であったと言えます。6つのトピックスに分けて2022年を振り返っていきます。
副業元年2018年から2021年を振り返る
2022年の振り返りの前に、日本の複業(副業)解禁への流れを振り返りましょう。副業元年と呼ばれる2018年を皮切りに、多くの動きがありました。
2018年は、副業元年と呼ばれ、複業(副業)解禁に向け、日本は大きな1歩を踏み出しました。2018年1月に厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを発表、同時にモデル就業規則の変更を打ち出しました。モデル就業規則では、「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業の規定を新設、労働者が勤務時間外に他の会社の業務ができるようになりました。
一方、労働時間管理に関して、企業の負担が大きいという観点から企業の容認が進まず、継続的に議論がされていました。2020年、官邸で策定された「成長戦略実行計画」内では、兼業・副業の開始及び兼業・副業先での労働時間の把握は労働者からの自己申告制とし、申告漏れや虚偽申告の場合には、兼業先での超過労働によって上限時間を超過したとしても、本業の企業は責任を問われないこととすると定めており、制度整備が進みました。
①「人への投資」×複業(副業)
2022年は年始から政府に動きがありました。首相施政方針演説にて、人への投資と表し、スキル向上、再教育の充実、副業の活用といった人的投資の充実が、デジタル社会、炭素中立社会への変革を円滑に進めるための鍵であると示しています。8月には、人的資本経営コンソーシアムが発足し、経産省と金融庁が設立を支援し、320社の企業と官民一体で対策を進めています。
10月には、総合経済対策を閣議決定し、働く人の賃上げ実現に向けてリスキリング(学び直し)の支援に5年で1兆円を投じると表明しました。中には、転職者や副業する人を受け入れる企業への支援制度の新設が見込まれているとのことです。国は予算を投じ副業支援を進めていくことが分かりますね。
②企業の複業(副業)促進を促す2度目のガイドライン改定
2018年に公開、2020年に1度目の改定がされた副業・兼業の促進に関するガイドラインは、2022年7月に2度目の改定が行われました。2022年7月の改定では、企業が副業を制限する場合はその理由を含めて開示するよう促しています。同時に、制限することが許されるのは① 労務提供上の支障がある場合 ② 業務上の秘密が漏洩する場合③ 競業により自社の利益が害される場合 ④ 自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、に該当する場合とされています。複業(副業)の情報開示は、企業の解禁を促進すると同時に、「どの複業が許可されているのか」という個人の疑問を解消し、労働者の複業促進に繋がると読んでいます。
③リスキリング×複業(副業)
政府が打ち出す人への投資の中でもキーワードとなっているのが、リスキリングです。6月には「新しい資本主義」の実行計画が示され、社会人のリスキリング(学び直し)、成長分野への労働移動と共に、兼業・副業の促進が示されました。記事によれば、首相はリスキリングの重要性を訴え、具体案の1つに、企業間や産業間の人材移転を後押しするための転職や副業などを受け入れる企業への支援を新設し拡充したいとしているそうです。
また、厚生労働省でも、労働者の「学び直し」に向けて労使が取り組む事項を示した指針を策定しました。学び直しで得た新たなスキルを実践する場として、副業・兼業といった働き方ができる環境の整備も必要であるとしています。企業も学び直しのために複業(副業)を解禁する事例も増えており、国・企業どちらもリスキリングという観点で複業(副業)に注目しています。
④人手不足解消×複業(副業)
また、これらの取り組みの背景には、人材不足解消を狙う目的があるといいます。労働力人口減少が加速の一途を辿る現在、すでに多くの企業で人材難が顕在化しており、今後さらに拡大していくことが目に見えています。特に深刻な地方の人材難に対し、フルタイムではない、かつオンラインという距離や時間、環境を問わない複業という働き方はとても有効的な解決手段です。実際に複業プラットフォームでも地方企業の導入が増えており、正社員ではなかなかすぐに採用できない人材を、オンラインで即戦力として採用する動き出てきています。
また、一度退職した社員と再度接点を持ち、再入社を促す「アルムナイ」においても複業(副業)という接点の持ち方が有効的です。IHIは専用サイトを開設し、元社員に副業などの形で協業を呼びかけ、将来的な再入社の機会も探るといいます。また、三井住友海上では、退職者を貴重な社外人材に位置づけ、退職者に副業や兼業も呼びかけているといいます。アルムナイネットワークは上記2社をはじめ、日立ソリューションズ、横河電機などが開設しており、大手企業を中心に広がっています。
複業(副業)は非常に柔軟な働き方です。本業を続けながら、本来やりたかったことに挑戦することができるだけでなく、退職した後も思い入れのある職場に関わり続けることもできるのです。新しい働き方は今後も多くの場所で広がっていくでしょう。
⑤スタートアップ支援×複業(副業)
日本ではスタートアップの推進が課題となっていますが、そこでも複業(副業)がトピックスになっています。政府は、スタートアップ政策に対し、今後5年で投資額を10倍に増やす目標を掲げ、8月には担当大臣も任命したといいます。記事では、海外と比べ、日本の開業率・廃業率は低いことを挙げ、米国ではいずれも10%前後である一方、日本は4~5%と半分の水準であるとのことです。また、スタートアップのボトルネックとして人材を挙げ、対策として兼業・副業の奨励を示しています。
スタートアップにおいて複業人材は欠かせません。私が経営する株式会社Another worksでも、創業前から複業と共に組織をつくりました。新しい市場の創造のため、覚悟をもって起業した経営者の業務は数え切れず、中には専任を置くべき業務を兼務せざるを得ないケースが往々にしてあります。しかし、創業初期には、多数の正社員を抱えるリスクが大きく、売上が安定的に立っていない中でフルタイムの正社員を雇う金銭的余裕もありません。そこで、複業なのです。実際に手を動かし、数値を見ながら、経営者と共に組織成長に向き合ってくれるコアメンバーを求めています。
また、スタートアップに複業で入るメリットも大きくあります。コアメンバーとしての参画が可能なため、スキルに再現性を持たせたり、新しいスキルを学ぶなど、リスキリングや学び直しの観点で注目が集まっています。
⑥ジョブ型雇用×複業(副業)
近年、話題に上がるジョブ型雇用ですが、複業(副業)は究極のジョブ型雇用の働き方といえます。厚生労働省は企業に対して、将来の勤務地や仕事の内容を従業員に明示するよう求めるというニュースがありました。終身雇用を前提としたメンバーシップ型雇用が主流だった従来と比較し、デジタル人材など専門スキルが求められる職種が増えたことによりジョブ型の雇用が増えてきているといいます。
総合商社双日の子会社、双日プロフェッショナルシェアでは完全ジョブ型の取り組みが紹介されていました。すべての仕事内容をジョブ型で採用し、週2~3日の勤務や副業を認めているといいます。対象は35~55歳でキャリアの幅を広げたい人や介護で仕事量を抑えたい人などを想定し、会社に頼らないキャリア形成を後押しするといいます。
中途採用だけでなく、新卒採用でもジョブ型が求められる今、複業(副業)業務を依頼するための業務の切り出しやジョブディスクリプションの書き方はジョブ型採用に通ずる点があります。まずは、複業を受け入れ、ジョブ型雇用に慣れた上で、正社員採用にも活かしていく動きができるでしょう。
ズバリ2023年の複業(副業)はどうなる?
2022年は、国の制度整備が進んだ1年でした。現代課題と将来訪れる課題に対する解決方法が2022年にセットされ、2023年はセットされた制度や予算が本格的に運用が進む1年になるでしょう。間違いなく国は今以上に予算を張りながら、複業(副業)を解禁する企業への支援(人事制度のアップデートや社労士費用など)、そして複業人材を受け入れる企業を資金援助し、受け皿の母数を最大化していくでしょう。
また、公務員の複業解禁がより進んでいくと予測しています。2022年の複業(副業)解禁動向でのご紹介した通り、行政が複業で民間人材を巻き込むのは当たり前になりつつあります。そして、公務員の複業(副業)解禁・容認もかなり進んでおり、各自治体独自の制度設計があります。次のトレンドは、民間企業が公務員を複業で受け入れる段階です。SDGsやESGをはじめ、企業も公共性や社会性が求められる時代です。公務員の持つ知見は、企業にとっても欠かせない唯一無二のスキルとなります。行政複業が当たり前となり、2023年は公務員が民間企業で複業をする新しい時代が来るでしょう。
最後に
2022年の複業(副業)の動きと2023年のトレンド予測をしました。2023年も最新の複業動向や働き方のトレンドを日経COMEMOで発信していきます!
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