通貨は、限界が来ているのかもしれない
日経COMEMOの新しいテーマ企画として、Facebookが手掛ける仮想通貨「リブラ(Libra)」に対する意見募集があったので、便乗してみたいと思う。
ブロックチェーンが、やっと本来の意味で使われるようになってきた
リブラに関する説明は、他の詳しいサイトやNOTEに任せたいとおもうが、Facebookによるリブラに対する、私個人の感想としては「やっと、ブロックチェーンが正しい用途に使われるようになったか」と快哉を叫びたい気分だ。
元々、ブロックチェーンが純粋なテクノロジーとして登場したときは、国境で制限されない貨幣流通の在り方や公的サービスの電子化に期待が高まっていた。しかし、実際に普及したのは、ビットコインに代表される仮想通貨の世界であり、新しいマネーゲームの駒として広まってしまった。そのため、健全な利用法についての議論が停滞していた感があった。地域仮想通貨も、期待だけは大きかったが盛大に空振りした感がある。
しかし、仮想通貨によるマネーゲームにも良い点があった。ブロックチェーンの脆弱性を確認する実証実験として、多くのデータと事例を提供し、技術の進歩に対する貢献は大きい。
時代の変化に追いつけない貨幣システム
日本では、いまいちパッとしなかったブロックチェーン関連のサービスだが、世界に目を向けると、社会変革を促す重大なドライバとして機能した事例を目にすることができる。
その最たる例が、エストニアによる電子国家化だろう。
ブロックチェーン技術を活用することで実現した、エストニアの e-residency サービスは、あらゆる行政サービスを電子上で完結することを可能にした。それだけではなく、外国人でもその恩恵を預かることができ、国という垣根を超えた行政サービスの提供すら可能にしている。もちろん、エストニアのブロックチェーン技術は、行政サービスのみに閉じているわけではなく、官民共同でプラットフォームを活用することが可能だ。
エストニアの取り組みでも見られるが、ブロックチェーン技術の応用によって、大きな恩恵の1つとして、国家という単位を超えることができる点があげられる。
そして、この恩恵はグローバルビジネスを主戦場とする企業にとって、恩恵が計り知れない。彼らは、国という規制に縛られている貨幣に対して、莫大な調整コストを支払い、フラストレーションがたまっている。このフラストレーションを解決する技術が出てきたら、決壊したダムのように、一気に世界が変わる可能性すらある。
個人情報をどうやって保護するか
電子化することは、交換取引のストレスを軽減し、コストを下げ、スピード化をもたらす。その反面、どうしても付きまとう問題が、個人情報の保護だ。
仮想通貨の時だけではなく、電子決済やビックデータ分析など、個人情報の保護に関連した企業の不祥事は後を絶たない。電子化には、法整備や倫理規定なしでは信用し切ることができない、安全上の課題が多すぎるといっても過言ではない。
しかし、これだけ仮想通貨による電子取引のニーズが強いと言うことは、この時代の流れは変えようがないのだろう。それに抗っても、時代に取り残されるだけだ。われわれがすべきことは、この流れを受け入れ、それに対し、どのように付き合うことで、個人の権利と自由を保護できるのか、議論し、社会システムをいち早く構築することだろう。
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