Brexit:土壇場で進展‐メイ協定案の合意なるか?
英国議会では、本日から3日連続で「意義ある採決」を行うことが予定されている。まず12日火曜には「現時点のメイ首相の協定案を認めるか」の採決が行われる。これが否決された場合は翌13日に「合意なし離脱を認めるか」を採決する。そして「合意なし離脱」が否決された場合は14日に「短期間に限定した離脱延期を認めるかどうか」を採決する。
ここ数週間で、EU懐疑派議員がメイ首相の現協定案への反対姿勢を軟化させている兆候が現れていた。そこへ、3月11日遅くに事態は急速な進展を見せた。報道によると、3月11日にメイ首相はユンケル欧州委員長と会談した後、アイルランド国境を巡るバックストップは恒久的でなく一時的であり、「法的拘束力を伴う修正についてEU側の同意を取り付けた」ことを発表し、ユンケル委員長も修正に合意したことを確認した上で、「英国は5月23日までにEUを離脱しなければならない」と述べた。これ以上の詳細は現時点では不明ながら、この「新たな合意」に基づいて英国政府は協定案を修正し、本日の議会採決で是非を問うことになろう。
本日の採決で修正後の協定案が可決されれば、英国の為替とリスク資産には相当なポジティブ・サプライズとなろう。かりに否決されても、議員の両極端(離脱強硬派と残留支持派)が妥協案に向けて緩慢ながらも収斂している兆候が見られるため、13日の採決では「合意なし離脱」という選択肢は否決される公算が大きい。そのため、修正後の協定案が否決されても、リスボン条約第50条の延長(すなわち3月29日の離脱を延期する)が可決される確率は高いとみられる。
市場はすでに離脱延期を高い確率で織り込んでおり市場への影響は限定的だろうが、第50条の延長が可決された場合には、市場は合意なきBrexitの確率を引き下げるとみられる(すなわち、明るいセンチメントが強まる)。延長が可決されれば、EUはそれを認めるだろう。だが、欧州理事会は延長の目的を明示するよう求めるだろうから、延長の目的を決定するために議会でのさらなる採決が必要になる可能性がある。
延長期間はその理由次第となろう。ユンケル欧州委員長は5月23日(すなわち欧州議会選挙より前)に固執しているようだが、2-3カ月という(つまり新たな欧州議会が開会する7月2日までの)短期間のテクニカルな延長なら、英国議会もEUも合意することは可能だと思われる。重要となるのは、本日の修正後協定案に対する採決で否決となった場合の票差だろう。2月14日の「首相の交渉方針に賛成するか」の採決では、反対303対賛成258という結果だった。修正案が否決されても議会の首相に対する不信任の度合いが従来よりも緩和されるならば、比較的短期間の延長で修正後協議案が議会で可決される見通しが高まるし、延長の理由についても期間についても議会にとってもEUにとっても合意が容易となる。
協定案に対するEU懐疑派議員のトーンが軟化しており、一部の労働党議員が協定案を支持する兆候が強まっていることを踏まえると、延長期間中に調整が必要だとしても、メイ首相の協定案は最終的に可決される可能性はある。