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広がる直感、閉じる直感 〜「未知」との上手な付き合い方

お疲れさまです。uni'que若宮です。

今日は最近思っていることについて。


最近前にも増して、「なにしてるか分からない人」と言われます。自分としてはコアははっきりしていて、それはあくまで「軸足は事業家である」ことです。ただ、それを軸足としながら、色々と「実験」をしていたい。もしかすると事業も「実験」なので、事業家というより職業は「実験家」なのかもしれません。

もともと割と落ち着きがない方なのですが、最近はとくに直感的に動いている感じがあります。そうしているうちに、「直感でうごく」場合にも、良いケースと悪いケースがある気がしてきました。

良いケース、というのは「直感」によって自分が広がるケースであり、悪いケースは逆に狭めるケースです。


「なんかありそう!」は、やった方が良い

長いこと新規事業をやっていると、理屈で前もって説明できないことが自分の可能性を広げたり成果につながる、ということをたびたび実感します。説明がつかないんだけどやりたい、といういわゆる「直感」が結果として奏功することがある。

そもそも「理屈」とは自分の中にもっている既知の体系・価値軸であり、そこにない「未知」のものは「合理的な判断」では意思決定できないものです。「未知」のものを理屈で考えれば考えるほどpros/consどちらも出てきてしまう。そしてconsの最たるものは「リスク」なので、これはいくら考えてみてもやってみるまでは解消できない

だから、直感で「あ、面白そう」とか「なんかあるかも!」ということには飛び込んでみたほうが良いと思うのです。飛び込むメリットは3つあり、

・上手くいくか分からないことだからこそ、上手くいった時には想定外の成果が得られる。
・たとえ失敗しても、あたらしい知見や経験が得られる。
・よくわからない「やってみたい」と思えることには理屈を超えたパワーがある。

成功すれば大成功、失敗しても得られるものがあり、成功確率も相対的に高いのです。


図で描くとこうなるのですが、「なんかある!」は
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「既存の合理=それまでの自分の理解できる範囲」を超えたものと出会っていて、にもかかわらず面白さを感じ、未知なるものの「引力」に引っ張られて既存の合理を超えようとしている状態です。ですから、この直感に従うことは自分を拡張するのです。

「なんかありそう!」という直感で踏み出すべきか?と、理由や理屈を探すことがありますが(特に企業ではそうした説明が求められますが)、理屈で説明しようと時間をかければかけるほど(合理の外にあるのが怖くなってしまうので)進みづらくなります。

このブレーキに止められないためにも、「直感」にまかせてさくっと動いてしまったほうがよいのです。


「なんかなさそう…」は、切り捨てるべきではない。

一方で、直感的判断が逆効果なときもあります。それは「なんかなさそう…」と思う時です。

新規事業を長年やっていて、投資判断をするような場面などでは、「なんかなさそう…」と思ってやらなかったことがあとでめちゃくちゃ当たって後悔する、というケースをよく経験します。
(あのEast Ventures大河さんすらこんなに…という衝撃のポスト↓)


「なんかありそう!」と同じく、「なんかなさそう…」の「なんか」というのは、「既存の合理=それまでの自分の理解できる範囲」を超えたものと出会っている時ですが、この時、「なんかありそう!」とは反対に未知なものとの間には「斥力」が働いています。

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企業で新しいことにチャレンジできない時にはだいたいこのケースが多いのですが、「なんかなさそう…」だからやめといたら?という時、ひとは既存の合理の領地に引っ込んで、やらない理由をさがし始めます。そして実際にはやってみないとわからないことを「合理的でない」という理由で却下するのです。本来、未知のことは「既存の合理」の埒外にあるので、「やらない理由」もまた合理的に説明することはできないはずなのですが、「説明できないから」という理由だけで(皮肉にも非合理に)拒否するわけです。

この拒否感には「未知なるもの」への「恐怖」が根っこにあります。

なので「やらない」という判断を続けてしまうと、未知なるものから逃げ続けることになります。新しいものを取り込む機会が減り、どんどん狭い領地に逃げ、高い城壁を築くのです。進撃の巨人の三重の壁のように。


「なんかなさそう…」とどう付き合うか?

では、「なんかなさそう…」と思ってしまったときにはどうしたらよいのでしょうか。自分なりにはここで2つの方法があると思っています。


ひとつは、「なさそう…」の理由を考えてみること。何故自分はやったこともないのにそれを「なさそう…」と思うのか?「なし」という結論ありきではなく、なぜそれに拒否反応があるのか?と改めて考えてみることで無意識にもっていたバイアスに気づけることがあります。


そしてもう一つの方法は、「なさそう…」と付かず離れずにいることです。

「なんかありそう!」の場合とは逆に、「なんかなさそう…」の場合には気乗りしていないのですから、無理にやってもあまりパフォーマンスが出ないのも事実です。

こういう時どうするか、というと、僕は最近「保留思考」をすることにしています。「保留思考」というのはやるかやらないかを焦って決めたり切り捨てたりせず、parking lotに入れて少し寝かせてみるのです。

「未知」は、”まだ”その時の自分に分からないだけで、成長のきっかけになることもあります。たとえば幼少期僕はパクチーが大きらいだったのですが、ある時期を境にとても好きになりました。これはもちろん、美味しいパクチーが開発されたからではなく、自分が変化した結果です。

また「なんかなさそう…」と思ってもそこで切り捨てずに寝かして置くと、「発酵」して、それが美味しいものに変わることもあります。

なので、直感で「ありえない…」とか「生理的に無理…」と思っても、それを拒否して既存の自分の殻に逃げ込んでしまわず、付かず離れずの関係でいたほうが良いのです。


「直感の瞬発力」と「咀嚼の時間」

「なんかありそう!」と「なんかなさそう…」はどちらも「既存の合理」の埒外にある「未知」であり、「分からない」ものです。だからこそ理屈では説明できず、「直感」が働きます。

このところ「直感で動こう!」とか「速い思考」が大事、という話もよく聞きます。僕自身アート・シンキングの本を書いているので直感主義のように思われますが、実は直感には二種類あるとおもっていて、

「好奇心」の直感は、理屈で変に足踏みせず、さくっとやっちゃう。

これは直感で動くのが吉です。しかし一方で、

・「拒否感」の直感の場合は、切り捨てず、じっくりと付き合う。

というのも大事です。「なさそう…」の理由をじっくり考えたり、じっくり寝かしてみる。

よく「第一印象は最悪だったんですけどね…」なんていうのろけ話を聞きます。「なさそう」とおもっても自分が変化することでそれが180度変化するときもある。


「なさそう…」な未知のものは、「咀嚼」のために、より時間がかかるのです。

直感は瞬発力なので、パワーもありますが注意も必要です。すぐ付き合うべき「分からないもの」と咀嚼しじっくり付き合うべき「分からないもの」、そのどちらもがあるので、この時間的特性を考えて上手く付き合いながら、自分を広げていくことが大事だと思っています。

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