”テレワーク”は推進するが”事業場外みなし”そのものには消極的な厚労行政のジレンマ
リモート勤務などの柔軟な働き方を認める企業の方が、出社型企業よりも業績の伸びが4倍であるという調査が出たようです。
従前からこうした見方はあったものの、因果関係は不明なところでしょうし、業態にもよるところもあるでしょう。
いずれしても、コロナ禍後もテレワークを継続すべきか検討している企業は多いものと思われます。
そこで問題になってくる労務管理の点では、厚労省は「テレワークに事業場外みなしを使うことができる」として、事業場外みなし労働時間制度の活用を勧める一方で、「事業場外みなし労働時間制度」そのものについてこれまで同様厳しい態度で臨む厚労行政の態度がみられます。
ちょうどそのような場面をお客様からの相談で直面したので今回はそのことについて書いていきます。
厚労省はテレワークとの関係では「事業場外みなし」を推進
まず、厚労省は、テレワークガイドラインで以下のように「事業場外みなし労働時間制」を位置づけています。
テレワークガイドラインは、コロナ禍を受けて一度改定されていますが、テレワークの場合に事業場外みなし労働時間制度を活用することができるという点は、変わりはありません。
むしろ、コロナ禍でのテレワークを進めるために、具体例をより分かりやすくしています。
つまり、厚労省は、テレワークを推進するという文脈においては、事業場外みなし労働時間制の活用を推しているといえます。
ただ監督行政は「事業場外みなし労働時間制」そのものにはかなり厳しい
しかし、テレワークを離れて「事業場外みなし労働時間制」単体の話しになると、厚労省の監督行政はかなり厳しい態度を取っている印象です。
私のお客様では、監督署から「事業場外みなし労働時間制は判例で否定されているから駄目だ」と言われ、およそ事業場外みなし労働時間制は使えないのだというニュアンスで言われた例があります。
法律上書かれている制度なので、「事業場外みなし労働時間制」そのものを裁判所が否定するということはないと思いますが、いずれにしても、監督行政はかなり否定的に扱っているということが見て取れます。裁判例も肯定例はあるもののやはり厳格に解釈しています。
事業場外みなし労働時間制度の当否とテレワークでの柔軟な働き方をどう進めるかを検討すべき
確かに、実労働時間による労働時間管理を不要とするもので、例外的であるべきではあり、軽々に認めるべきではないでしょうが、同じ条文上の制度の適用の問題であるのに、テレワークの場面においては「柔軟に使ってね」といいつづ、そうではない場面では「事業場外みなしなど存在しないのだ」問わんばかりの対応をされるのは、一貫せず、事業者としては困ってしまいます。
事業場外みなし労働時間制が元々想定していたのは、「営業職など外回りの職種」だったのだろうと思いますが、テレワークによって、およそホワイトカラーであれば事業場外みなし労働時間制を活用することが可能という整理になっており、おそらく問題はここにあるのだと思います。
先日公表された「新しい時代の働き方に関する研究会」の報告書にも、以下のとおり示されています。
テレワークガイドラインも、さすがに「テレワークの場面全て」に適用できるとしているわけではなく、「勤務時間中は通信回線自体の切断はできず、使用者の指示は情報通信機器を用いて行われるが、労働者が情報通信機器から自分の意思で 離れることができ、応答のタイミングを労働者が判断することができる場合」などとしており、簡単にいえば、労働者が裁量的に働いてる時等には事業場外みなし労働時間制を使うことができるとしています。
しかし、これは他方で、特定の職種に限定して厳格な要件を課している裁量労働制を骨抜きにしてしまう考え方とも言えます。
そう考えると、テレワークの普及によって、労働時間制度の在り方、特に事業場外みなし労働時間制の在り方は、テレワークの場合の労働時間管理の在り在り方と共に、検討し直す必要があるように思います。
私としては、何か考えが固まっているわけではないですが、個人的にはテレワーク自体は推進しているので、テレワークを柔軟に行いやすい仕組みは検討していただきたいところです。