日本の自動車産業の未来:Slow Mobilityへの戦略転換を
日本経済を長きにわたり牽引してきた、自動車産業。自動車産業が縮小することで、関連産業全体に大きな影響が出ことを政府は恐れる。一方で、自動車産業の促進がもたらした負の側面は、ロードサイドの大規模チェーン店をはやらせ、商店街や駅前に存在した地域の文化を減衰させてきたことだ。今後、日本は自動車産業にこだわり続けるのか、それとも自動車会社とともに新たな産業を生み出すことができるのか、未来を考える。
EVシフトがもたらす日本の自動車産業の危機
次の記事は、「タイ政府が電気自動車(EV)の購入補助金を最大15万バーツ(約68万円)出したのをきっかけに、BYDや上海汽車集団系MG、長城汽車などが販売を拡大した。22日時点で約20の中国ブランドが進出または進出を表明し、この1年でほぼ倍になった」と報じている。
日本の自動車産業が長年にわたり深く関わってきたタイでも、電気自動車シフトとともに、中国ブランドへの置き換えが進んでいるというのだ。日本の自動車産業は、ハイブリッドや水素エンジンで先行し、機能的にも脱炭素的にも良い製品を開発してきたが、欧州の規制強化により電気自動車以外は市場競争力を保つことが難しくなってきている。
海外で、日本の自動車販売が不調であるという記事には、枚挙にいとまがない。次の記事は、「ホンダの落ち込みが最も大きく16%減の34万777台だった。中でも減産率が大きい中国生産は46%減の6万2629台だった。現地の電気自動車(EV)メーカーが低価格車で競争力を高めており、販売が低迷している」と報じている。
次の記事は、中国市場での日本の自動車販売が減少していることを「電気自動車(EV)など新エネルギー車の需要が堅調な中国市場で日本勢が低迷している」と報じている。
このままだと、日本の自動車産業は縮退の一途になりかねない。電気自動車規制が高まり、高価格帯は米国のテスラ、低価格帯は中国企業が圧倒的に強い状況ができてきている。では、日本の自動車産業はどうなってしまうのだろうか。
日本の自動車産業の未来をスローモビリティに賭けてみては
高齢化が圧倒的に進んでいる日本でありながら、街を歩いていて車椅子を見る割合は高くない。それはファッショナブルなパーソナルモビリティが存在しないことにも原因があるだろう。
自動車会社や電気メーカーは、以前、多くのパーソナルモビリティの開発をおこなっていた。しかし、過去のいくつかの記事をみても、実証実験止まりで、大きな市場形成は達成していない。当時つくられたパーソナルモビリティのプロトタイプの多くは、各メーカーの倉庫に所狭しと眠っていることだろう。
スローモビリティのまちづくり:都市中心部の道路からクルマを締め出す
パーソナルモビリティが普及しなかい最大の理由は、「自動車優先のまちづくり」により、「走れるところがほとんどない」からだ。電動スクーターは市民権を得始めているが、正直、自動車と同じ車線を走るのは、危なくて仕方がない。
パーソナルモビリティを社会実装するための「もっとも単純な解決策」は、広域にわたって自動車の入れないエリアを日本各地にたくさん作ってしまうことだ。いままで自動車が走るために作られていた道路は、歩行者とパーソナルモビリティのために開放される。
国内にパーソナルモビリティ市場が広がれば、各社、もっと高機能でかっこいいモビリティを研究開発することができる。このことは、地域社会にとってもメリットがある。車を締め出したエリアを緑にあふれたものにしたり、たくさんのベンチを置いたり、無料ですごせる居場所がまちにあふれるようになるからだ。
「スローモビリティのまちづくり」は、自動車会社の未来の産業となるうえに、市民にとっても、まちを自分たちの手に取り戻すことができるのではないだろうか。