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ワークショップの「活動目標」と「学習目標」の違いを映画『ロッキー』で解説

「ワークショップ」という方法が企業や行政に注目されるようになって、数十年、その手法やあり方には多くのバリエーションが存在します。

たとえば、こちらの記事では、心理的安全性とフラットな対話の雰囲気づくりを生み出すワークショップとして、「共通点」ではなく「相違点」に着目し、可視化するプログラムが提案されています。

様々なワークショップの方法があるなかで、どのようなワークショップにも共通して「活動目標」と「学習目標」が存在します。「ゴール」という言葉で混在されがちなこの二つの目標の違いと相互関連性について、今日は書いていきたいと思います。

ベースとして「ワークショップデザイン論」の考え方を参照しつつ、ぼく自身の経験を肉付けして描き出します。

ワークショップにおける「活動目標」と「学習目標」とは

ワークショップにおける「活動目標」とは、非日常的かつ内発的な動機からなんらかの制作や遊びをともなう活動の成果目標です。プログラムの「ゴール」として描き出されやすいのはむしろこちらのほうです。

たとえば、造形を用いた組織づくりのワークショップであれば「一人一人の理想の組織像をレゴで制作し、その理想像について対話する」といったものです。

かたや「学習目標」とは、参加者の固着化した認識や関係性をゆさぶり、日常に意味をもたらすものです。ワークショップの目標として忘れられがちなポイントはこの「学習目標」にあります。

先の「活動目標」に対して「学習目標」を置いてみると、以下のように書き出すことができます。

活動目標
「一人一人の理想の組織像をレゴで制作し、その理想像について対話する」

学習目標
「組織の理想像の違いについて認識し合いながら、共通するビジョンを探索する関係性をつくりだす」

組織の現状をつぶさに観察し、認識のずれや関係性のあり方を把握しながら、対話的な関係性をつくるという理想に向かってワークショップを実施していきます。

活動目標は目に見える成果物、学習目標は目に見えない変化であると言い換えてもいいかもしれません。

活動目標と学習目標を、映画のシナリオに例えると…

これらの目標について、映画のシナリオに例えて説明します。

映画『ロッキー』において、主人公ロッキーの外的なゴールは、アポロ・クリードというチャンピオンに勝つことです。これは、活動目標に相当します。一方、ロッキーの内的な成長目標は、恋人や友人、トレーナーとのわだかまりをのりこえ、自分らしさを手に入れることです。これは、学習目標に相当します。

なぜボクシングをするのか、自分のアイデンティティはなんなのかをロッキーは葛藤しながらトレーニングを重ね、不器用ながらも周囲に感情を開いていくうちに、チャンピオンとの戦いに向かう姿勢が生み出されていきます。そして、クライマックスのボクシングシーンでは、ロッキーとアポロの試合に周囲が心動かされ、変化していく様が描き出されます。

このように、映画において、主人公の外的なゴールと内的な成長は密接に関係しています。そしてもちろんワークショップデザインにおいても、活動目標と学習目標は相互に依存しあっています。

活動目標を達成するためには、参加者が自ら動機付けをし、内発的な関心を持ちながら、周囲との協働が必要なように設計することができます。そのような活動目標の達成に向かうなかで、参加者個々人が自分の認識の変化を実感しながら、参加者の関係性が変化していくことで、学習目標の達成が起こっていくのです。

このように、活動目標と学習目標は互いに関連しており、ワークショップデザインにおいては、両者をバランスよく組み合わせることが大切です。参加者が楽しみながら学び、成長することができるようなワークショップデザインを考えることが、私たち専門家に求められる役割の一つです。

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