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コミュニティをはじめたいのに、二の足を踏んでいるあなたへ
少しずつコミュニティに対する社会的な認知が進んでいると実感している。しかし、コミュニティは重要だと認識はされているものの、立ち上げ、運営することに二の足を踏んでしまっているクリエイターやブランド、企業の方々は依然として多いと思う。
コミュニティは一人では成り立たないように、コミュニティの立ち上げや運営もまた一人(一社)で背負い込む必要はないと声を大にしていいたい。今回は、コミュニティを立ち上げたいと思ったときの「伴走者」の重要性について綴っていきたい。
新しい挑戦には「想い」が必要
現在、コミュニティの立ち上げを検討しつつも躊躇されている方々の多くは、メリットを理解していても実行には踏み出せないいくつかのボトルネックや不安があげられる。
一番の不安は「自分たちでうまくコミュニティを運営していけるか?」という点だろう。特にクリエイターの場合、まず「創作の苦悩」があり、次に「SNSの苦悩」がある。ただでさえ、炎上に怯えながらファンを増やし続けていく不安を抱えている。それらにコミュニティの苦悩が加わってしまえば、三重苦になってしまう。
企業の担当者であれば、マーケティングやブランディングでの成果を出す苦悩、SNSなどすでに行っている施策の苦悩もあるだろう。それに加えて、コミュニティを立ち上げたときの手間、トラブルなどの苦悩が増えると思うと、二の足を踏んでしまうのは当然のことだ。
例えば、Soup Sotck Tokyoなどを生み出したスマイルズの遠山正道さんは、OSIROでご自身のコミュニティ「新種のimmigrations」(通称:イミグレ)を運営されている。
遠山さんはオシロ社の事業やコミュニティの価値もご理解いただき、出資までしていただいているとはいえ、それでもご自身のコミュニティを立ち上げた当初は「変な人が入ってきたらどうしよう......」と不安に思われていたのだ。
しかし、実際には最初のイベントを開催した時にその不安は一掃された。なんとそのイベント直後に「全員とサシ飲みしたい!」とおっしゃったのだ。それだけ心を開けると思える仲間が集まっている場だと実感されたからだと思っている。遠山さんは日経さんのインタビューでもイミグレについて度々紹介されている。
コミュニティに二の足を踏んでしまう理由は、なにより「やったことがないことをやる」という未知への恐れが少なくともあると思う。そしてコミュニティの本質的なメリットは、実際に体験しなければわからないものでもある。
しかし、あらゆる新しい挑戦は未知のところから始まる。コミュニティの知識や経験の有無よりも「その場に集う人々がつながり、ウェルビーイングな環境がかたちづくられていく、そうあってほしい」という想いが一番大切だ。
逆にそのような想いさえあれば、その想いをかたちにし、実りあるコミュニティづくりを支援していくのが「伴走者」の役割であり、そこにわれわれオシロ社の価値があると思っている。
コミュニティの醸成プロセスは「農作物」に似ている
オシロ社ではこれまで300以上のコミュニティの立ち上げと運営をご支援させていただいたが、そのなかには成功事例がある一方で、失敗事例もある。あってはならないことだと思ってはいるが、お客さまのお役に立てず、涙が出るほど悔しい思いをしたこともあった。
しかし、そういった失敗からも学ばせていただき、コミュニティを難しくしている要素を一つひとつ解明し、再現性を高める方法を学び、知見として蓄積してきた。
コミュニティを運営する目的は立ち上げる方の個性や、大切にしているアイデンティティ、目指したいビジョンによって十人十色で、準備も始め方もそれぞれ異なる。ただ、最初は手間がかかることは共通しているといえる。
しかし、コミュニティは醸成するにつれてその価値を実感しやすくなり、オーナーにとっても単なる「場」ではなく、かけがえのない存在になりえる。
問題は、その醸成のイメージを持てるかどうか。未来の姿を想像できなければ、大変さばかりが際立ち、踏み出せない。
企業の立場から見ても、コミュニティの価値は理解されつつある。しかし、現場で担当される方が「新しい仕事が増える」と感じてしまい、ただでさえ時間がないのに...と先送りするケースも少なくない。
「はじめたら、ちゃんと運営しなければ」という責任感の強さから葛藤されている方もいらっしゃる。そのような方には、コミュニティの形成は「農作物の成長」をイメージしていただきたい。
つまり、最初は畑作りからはじめ、育てるのが大変だが、適切な環境を整え手間をかければ、やがて自律していく。手間は徐々に減っていき、やがて素晴らしい農作物をもたらしていくものだ。
われわれが定義するコミュニティでは、コミュニティオーナーとメンバー(1:n)の関係性を「求心力」、メンバー同士(n:n)の関係性を「遠心力」と説明できる。
場のオーナーが掲げる目的や想い、意義、価値観がコミュニティへの求心力となり、そこに人々が共感して集う。ただし、求心力を保つために常に発信を続けなければならないとなるととてつもなく大変だ。
交流型コミュニティであれば、その場に集まった人同士がつながり、仲良くなって、盛り上がっていくと、メンバー同士の交流自体そのものがかけがえのないものになる。それらが、遠心力となり、コミュニティの魅力がより広く波及し、自然と人が集うようになっていくのだ。
編集者のように、コミュニティをプロデュースする「伴走者」が必要だ
このようなコミュニティは、実際に体験しなければ理解しづらいものだと思う。しかし、そのような醸成を遂げているコミュニティは、たしかに存在する。
問題となるのは、そのようなコミュニティへと醸成していくために、どのようにコミュニティを立ち上げ、そして運営していくかだ。
コミュニティの立ち上げ・運営は、いわば本をつくるようなもので、初めての人にはなにから手をつけていいのかわからない。企画から執筆に伴走してくれる編集者がいなければ、方向性を見失ったり、書き続けることも困難になってしまう。
同じように、コミュニティにもプロデュースしてくれる存在が必要だ。優秀な編集者が著者の本質を引き出し、かたちにしていくように、豊富な知見を持った「伴走者」が必要なのだ。