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リスキリングの未来を占う米国労働市場の新たな流れ〜大退職時代を経てスタバ、アマゾン等で労働組合を結成〜

1. The Great Resignation(大退職時代)の現在の状況


2021年11月に過去最高の月間453万人の米国の労働者が自主退職した現象はThe Great Resignation(大退職時代)と名付けられ、空前の労働者不足を生み出す大きな社会問題となっています。

最新の米国の求人労働異動調査(JOLTS: Job Openings and Labor Turnover Survey)においては、月間400万人が退職するまで低下しましたが、依然として高い水準となっています。

statista: Nov 2nd, "The Great Resignation Is (Slowly) Losing Steam"

このThe Great Resignationの名付け親であるUCL School of ManagementのAnthony Klotz助教授は、12月27日付のWall Street Journalにおいて「職場のパワーバランスは雇用主に戻っているかもしれないが、安心するのはまだ早く、他の問題を従業員が起こす可能性ある」と述べています。

Quiet Quitting(静かな退職)と呼ばれる、同じ組織で働いてはいるものの、必要最低限の仕事しかしない等の新たな現象も起きています。

2.米国における労働組合組成の高まり

1) スターバックス、アマゾンにおける労働組合の結成

The Great Resignation(大退職時代)を経て人材不足の状態のままポストコロナで需要が回復し、賃金上昇が始まり、労働者が更に望ましい環境を求めて労働組合の結成に動き出している、と12月30日のnpr(米国公共ラジオ放送)の記事でStacey Vanek Smith記者は、述べています。

月間453万人の退職を記録した翌月、2021年12月にはスターバックスで米国初の労働組合が結成されています。
2022年7月までに組合設立を決めた店舗は180を超え、300店舗以上が投票をこれから申請すると報じられています。

また2022年4月、ニューヨーク市スタテン島の物流施設でアマゾン初の労働組合が結成されました。ラッパー出身でアマゾン労働組合のChris Small氏は、労働組合結成の象徴的な存在となり、アマゾンとスターバックスの従業員たちともに、9月5日のLabor Dayにはニューヨークでデモ行進を行っています。


2) 全米で労働組合結成の申請数が57%増加

そして米国市場全体においても、全米労働関係委員会(NLRB: National Labor Relations Board) が
2022年度上半期の労働組合結成の申請数は57%増加したことを発表しました。

また、2022年8月に集計されたGallup社の調査によると、米国人の71%が労働組合について賛成する結果となっています。これは、1965年以来最も高い数字となっています。

Gallup社データより

米国における労働組合の動きはこれからの労使関係に大きな影響を及ぼす可能性があり、引き続き注目してゆきたいと思います。

3.労働組合とリスキリングの関係について

1) リスキリング成功の鍵を握る3者契約
 〜労働組合の役割とは〜

海外におけるリスキリングの成功事例として、Tri-Party Agreement(3者契約)という形態が多く見られます。これは主に、①行政(政府・自治体)、②企業(経営)、③労働組合、が契約を結び、労働者の雇用を守りながら、組織内での労働移動を促進してゆくリスキリングの仕組みです。

例えばデンマークでは、財務省、企業、労働組合の三者契約の締結によって、企業におけるアプレンティスシップ制度によってリスキリングを推進しています。

またオーストラリアの首都キャンベラ市では、EV分野のバスの整備士を育成するリスキリングを実施していますが、この場合も、キャンベラ市、製造業の労働組合、キャンベラ交通(バス会社)の3者契約によって、既存の内燃機関のバスの整備士が失業することがないようにリスキリングを進めています。

個人が好きなことを学ぶ「学び直し」とは異なり、自社の成長事業や新たな分野の事業に就けるよう、労働組合の支持を得た上で雇用を守りながら、リスキリングの機会を企業側は提供してゆくのです。

2) 日本におけるリスキリングと労働組合の関係

日本においても労働組合の存在が注目される出来事が起き始めています。2022年11月、日本最大の労働組合の中央組織である連合(日本労働組合総連合会)の芳野会長がリスキリング議連の要請で講演をしたという報道がありました。

芳野氏は企業でのリスキリングによる従業員の再配置が重要との見解を説明したとのことです。つまり、企業の責任において社内で成長事業を創出し、無くなってゆく仕事から成長事業に就けるようリスキリングを実施し、社内における労働移動を実現するということです。

一方で、労働者の解雇無効時に企業側が金銭を支払うことで労働契約を終了する仕組みや、高度人材の解雇規制緩和についても議論が始まっています。


「『失業なき』成長産業への労働移動」を実現させるため、
2023年も、一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブは、引き続き政策提言や企業向けのリスキリング導入支援を行って参ります。

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