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インフレ見通しをどう読むか

世界経済はコモディティ価格の上昇やサプライチェーンの障害、経済再開が進む中での需給のミスマッチが生じている。こうした要因により引き起こされた物価ショックが進行している。世界中若干のインフレ気味の様相を示しつつある。

こうした状況を受けて、中央銀行はインフレが抑制不能になる事態を回避するため、ブレーキを踏んでリフレを目指した政策運営を急減速させざるを得なくなり、それが株式市場など金融市場のパフォーマンスに悪影響を与えるのではないかとの懸念が強まっている。

こうした懸念については、現在のインフレの上昇は一時的なものか、より持続的なトレンドの始まりなのか、を見極めることが必要である。

現在、インフレを押し上げている要因の大半は一時的なものという整理をする見方が大半になっている。半導体不足を背景とした米国の自動車価格の上昇や、それが中古車、リースなどにも影響を広げていること。ウッドショックによって価格が急騰している木材価格により、輸入物価を押し上げているなどもそれ。

しかし、こうした供給制約により上昇した影響を、現在のコロナ禍継続の中速やかに解消できるかどうかはわからない。一時的と言いながら、短期的に収束できない可能性もあるのではなかろうか。

欧州の6月コアCPIは上昇基調と予想するが、ホテル、輸送サービス、自動車など経済再開による伸びの牽引が大きい。ECBは帰属家賃を総合消費者物価指数に導入することを発表したが、これも緩やかにインフレ率の上昇基調を支えていくことになる。さらに重要な点として、最近の物価上昇圧力がインフレ期待にかなりの影響を与えていることも指摘したい。米国の中期的な家計インフレ期待が急上昇している他、欧州でも消費者の物価見通しは当初懸念されていたよりも堅調である。企業サーベイからも同様の傾向がうかがえ、企業は自らの価格決定力に関して以前より楽観的になっている。

できるだけ時間をかけ、経済回復に水を差さないスピードで緩やかな金利上昇を果たすこと、に中央銀行は腐心しており、中央銀行のせいでマーケットが混乱したとの批判が起きないよう文言一つとっても細心の注意を払っている様子がうかがえる。しかし、労働市場の回復などにより賃金上昇率が上昇するなどして、インフレを急加速させるリスクは意外に大きいのではないか、という気がしてならない。少々のインフレであれば、“予定通り”という見方をマーケットに根付かせておけるかどうか、も試されるのではないか。

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