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なぜ、ゾゾグラス無料配布は化粧品販売において衝撃なのか!?〜ECを巡る動きを経済の視点から〜


 コロナの影響による変化は、幅広くでています。化粧品業界も、売れ筋商品がスキンケア重視になるなど、在宅勤務浸透の影響を受けています。それは売れ筋商品だけでなく、DXなど化粧品の販売方法にも影響を及ぼしています。コロナ前は化粧品といえば、ECだけでなくオフラインも重視されたツールでした。実際、百貨店の1階等にある化粧品メーカーの売り場は、女性を中心にごった返していました。しかし、コロナの影響で気軽にお店に行きにくくなりました…。これは、百貨店売上高や、総務省が発表する家計調査統計等のデータでも、傾向が垣間見えます。そして、昨今では大手化粧品メーカーや、販売店を中心に、ECへの設備投資に関するニュースが増えてきました。今回は、「なぜ化粧品はオフライン販売に依存しやすいか」と「今後のEC動向の予測」を記していきます。


なぜ、化粧品はオフライン販売に依存しやすいのか?

 上述の記事にもある通り、化粧品は店舗での対面カウンセリングが重視されやすく、日用品などに比べてオンラインでの購入比率はまだ低い傾向でした。しかし、2020年の外出自粛期間中は、スキンケア化粧品などはオンラインの購入比率が約64%に上昇したとのことです。では、なぜ化粧品はオフラインが重視されてきたのか…。それは、化粧品を購入する際に重視される「色・触感・匂い」等の情報は、インターネット上で伝えるには限界があるからです。当たり前のように聞こえますが、これが6G、7G…という時代になれば、「色・触感・匂い」等の情報も遠隔で正確に伝えることができるかもしれません。だからこそ、信頼できるインフルエンサーによる化粧品Liveコマースが重要視され、中国だけでなく、国内の化粧品メーカーでもカリスマインフルエンサーを育てようと躍起になっていると推測されます。

 しかし、もしも化粧品情報をインターネット上で正しく伝える技術が発展したら、これまでの化粧品の店舗販売や、インフルエンサーマーケティングは少なからず影響を受けるかもしれません。実は、今の5Gの世界でも、ECで化粧品情報を正しく伝えるためのイノベーションが生まれつつあるのです。

ZOZOグラスの衝撃

 それは、衣料品販売大手のZOZOの動きです。ZOZOは、顔の肌の色を測定できる眼鏡型器具「ゾゾグラス」を無料配布し、個々の肌の色に合ったファンデーションなどが購入できる化粧品専用モールを3月18日に立ち上げるというのです。インターネット上で化粧品の「色」を正しく伝えるというより、デバイスを使うことで消費者の「色」情報を入手して、各人に合う商品を伝えるとのことです。化粧品ECの課題である「色」情報を克服しにきたのです!!!まさに、テクノロジーとアイディアの力で、DtoCの動きが化粧品業界でも更に加速し、スキンケア化粧品以外のEC販売が増えそうな気配です。すごすぎる…。


今後のEC動向の予測

 化粧品業界を巡るECの動きは、データ活用も加速し始めています。データ活用やAIという言葉はよく聞きますが、経済学でお馴染みのRCT(ランダム化比較実験)が、ファッション業界で活用され始めており、化粧品業界でも応用されつつあるのです。RCTとは、、古い施策とこれから試したい新しい施策をランダムにユーザーに割り当てて、どちらの施策の方が効果があるかを検証するための方法です。RCT計測方法の発展にも貢献したデュフロ氏達が、2019年にノーベル経済学賞を受賞したことで、注目を集めた効果検証方法です。RCTの有名な事例では、元アメリカ大統領のオバマ氏が、寄付金を集めるためのサイト構成をRCTにより作り上げたことなどが知られています。下記のRIETIディスカッションペーパーでは、RCTを効率的に行う画期的な手法が紹介されています(RCTを行うための実験コストを下げる方法を、過去に蓄積されたデータに基づいて行う手法)。


このように、テクノロジーの力、データ活用の力を用いて化粧品ECは、更に伸びそうな気配を見せています。そうなると、Liveコマースや著名インフルエンサーによる人的販売は、かげりを見せるのか、むしろ人間的な要素の魅力が引き立つのか…。それとも、掛け算が起こり、ECが更に違う方向に進むのか、注目です!


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崔真淑(さいますみ)

*冒頭の画像は、崔真淑著『30年分の経済ニュースが1時間で学べる』(大和書房)より引用。無断転載はお控えください♪

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