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欧州で感じたブランドコミュニケーションの変化

欧州(アムステルダム、コペンハーゲン、パリ、ブリュッセル)を回りながらヨーロッパのブランドコミュニケーションについて調査をしてきました。

その中で、確実に変わってきているトレンドがあると感じることがありました。

ブランドコミュニケーションは
1. 「機能性だけではなく、地球・社会にとっての意味」を伝える
2. 「課題解決だけではなく、問題提起」を伝える
が重要になってきていることです。

以前から何となく重要だなと感じていた視点なのですが、日本で考えられているレベルと全く違うと肌で感じました。

いくつか見てきたブランド事例も踏まえながら、変化の視点をまとめていきます。

1. 機能性だけではなく、地球・社会にとっての意味を伝える

社会への配慮が足りないブランドは、若者だけではなく社会全体で選ばれなくなってきている

現地でマーケティングの仕事をする方から聞いたお話

店舗を見て、サステナブルな商品づくりは、プロモーションのためではなく、ブランドが生き残るための戦略として必要になってきていると理解できました。

スポーツブランドのナイキやアディダスのパリ中心のお店を訪れると、かなり広いスペースを使って「サステナビリティ」に関する展示がされています。

アディダスの店舗にあった脱プラスチックに関する展示(お店の真ん中にありました)

アディダスのコミュニケーションは、2年前ごろから地球環境への配慮が商品開発の裏側にあることを強調する方向に変化していますね。

adidas Originals | End Plastic Waste | STAN SMITH, FOREVER

こちらはナイキの店舗にあった展示の写真です。

ナイキの店舗で展示されていた、ナイキが靴の生産を見直していることを示す展示

パリで興味深かったのが、ファッションブランドH&Mの店舗に対してファストファッションを反対する張り紙が貼られていたことです。

ハッシュタグは、#stopfastfashion

ファストファッションへの反対運動ですね。

H&Mの店舗に貼られていた紙

そして、店舗に伺うとH&Mのほぼ全てのタグには、リサイクル素材比率が提示されています。

このような配慮を細かくしないと買ってもらえない環境だと理解

H&Mを取り巻く動きからも、地球・社会にとっての意味が伝えられないと購入してもらえない現実を理解ができました。

2. 課題解決だけではなく、問題提起を伝える

ここまで書いてきた通り、SDGsやサスティナビリティに取り組んだり、ダイバーシティ・多様な人への配慮することは、ヨーロッパでは「前提」となっていると感じました。

では、その前提を押さえた上で、ブランドは何を仕掛けているのでしょうか?

その答えが「問題提起コミュニケーション」でした。

オランダを代表するビール会社「ハイネケン」は、キャンペーン動画として「アルコールに対するジェンダーバイアスの提起」を行なっています。

Heineken® | The Social Swap」のキャンペーンをご紹介します。

簡単にキャンペーン内容を要約します。

・「ハイネケンのソーシャル・スワップ」は、ハイネケンが元イングランド代表サッカー選手のジル・スコット(女性)とガリー・ネビル(男性)と共同で行った社会実験

・実験では、スコットとネビルは5日間、密かにソーシャルメディアのアカウントを交換。
二人はサッカーのさまざまなトピックについて本音の意見をシェアし続けたが、それはお互いのアカウントを交換した上で行った。

・実験の結果は…スコット(女性)のアカウントから投稿したネビル(男性)は、サッカー界の女性がしばしば直面するジェンダーに基づく否定や偏見を身をもって体験した。
女性(スコット)が男性のサッカーについてコメントすべきではないという罵倒や否定的なコメントをSNSから受け取った。

Heineken® | The Social Swapのキャンペーン内容を要約

アルコールは社交の場で利用されるブランドカテゴリーです。

ジェンダーバイアスに対する問題提起をブランドを通じて行うことで、ハイネケンは広く、かつ深く信頼を獲得することにつながっていることがわかります。

もう一つ面白い事例をご紹介します。

オランダでシェアNo.1で大人気のチョコレート「トニーズ」です。

この動画は、トニーズのサイトで一番最初に表示されるブランドムービーです。

ミッションである「100%強制労働に頼らないチョコレート作り」を体現しており、つくり手が誰なのか?をブランドコミュニケーション全般で強く打ち出しています。

トニーズは2005年、世界のカカオ豆の大部分を生産している西アフリカで、違法な児童労働と現代の奴隷制度が蔓延していることに衝撃を受けたジャーナリストたちによって設立されたブランドです。

トニーズは、オランダや近隣国のコンビニ、スーパー、お土産屋など、どこに足を運んでも大きな棚を占めています。

右上に大きな棚を占めているのがトニーズチョコレート

そんな大衆に受け入れられているチョコレートは「社会や業界構造に対する問題提起コミュニケーション」を継続して行なっているのです。

ブランドのコミュニケーション姿勢を見直すタイミング

SDGs、サスティナビリティなど言葉として言われているからとりあえず発信しておこう…

この考え方では、間違いなく世界ではブランドとして受け入れてもらえなく、今後の世界で競争力をもつことも難しいと考えています。

前提のルールが変わってきており、そのルールの中で上手に振る舞えるブランドになるかが競争力づくりに関わってくるわけですね。

ESG規制に関しての日本経済新聞の記事で、下記のように書かれています。

日本企業が注意すべきは、海外の規制が事業に及ぼす影響が強まっていることだ。西村あさひ法律事務所パートナーの平家正博弁護士は、「欧米のESG政策は、人権や環境のルールを守ることが競争力に結び付くような市場のルールをつくろうという側面もある。人権や環境対策を重視しないと、競争に勝てないことを認識すべきだ」と話す。企業にとって対応の遅れは致命傷になりかねない。

日本経済新聞:ESG規制が相次ぎ施行 製品出荷先の人権配慮も必要

ESG対策、SDGsといった言葉を使ってしまうと、形だけで終わってしまいやすい側面もあると感じています。

まずは、ご自身が関わるブランドが発信する内容に
1. 「機能性だけではなく、地球・社会にとっての意味」を伝える
2. 「課題解決だけではなく、問題提起」を伝える
この2つの要素を組み入れることができないかを考えてみていただき、それが未来への切り口を見出すきっかけにしていただけたら嬉しいです。

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