“女性登用は難しい”と考えている経営者の方へ
女性活躍が今更叫ばれる。日本政府は2020年までに女性役員(管理職)の割合を30%にすると掲げた。1985年に制定したいわゆる男女雇用機会均等法以来、35年かかったが。
ESG投資が進む中、もっとも評価が難しいのはSocial(社会)である。Socialの分野で必ず論じられるものの一つが、女性管理職の割合となっている。この割合も含め、女性起用の在り方が評価軸の一つとなりだしたことは事実。外国人投資家の目線に合うためにも、この数値の改善を考える必要が企業側にも出てきた。
とはいえ、だ。あるところで、次の議論を聞いた。「女性社外取締役を頼もうと思ってもなかなかいない。一人に幾つも重なってしまっている。そこで、当社では、Comply or ExplainのExplainを選択した(ルールにComply従うか、従わないならExplain説明するかという選択のことで、ここでは、女性社外取締役を無理に増やさず、なぜ増えなかったかを説明することにした、という意味)」という。なるほど、である。それに、無理に増やされたのでは増やされた女性役員も気の毒だ。
しかし、また別の機会に、こんな質問を受けたことがある。「仕事と家庭の両立はどうしてきたのですか?」。誰も何の疑問も抱かず、その問いに私なりの答えをしたが、今になって、この質問自体が未だ男性社会であることの証だということに気付いた。日本の多くの男性諸氏は家庭を持っている場合でも、両立について問われることなどなかったのではないか。
女性だ、男性だ、という設問が無意味になって欲しいと切に願う。そうならない限り、“Social”分野で目標とする平等社会にはなっていないのであろう。わたしは、どちらかというと、無理やり女性を登用するより、適切な人材を適切に登用すべき、と考えていた側である。しかし、前述の例一つとっても、我々の社会には男性社会が根強く息づいているのは事実だ。そうだとすれば、性別を無視できる社会に近づくためには、意識して、女性の取締役数を増やすということが必要な時期であることも認めるべきではないか。
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