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「休み方改革」をいま考えるべき理由。~働き方と休み方は表裏一体の改革。休み方にもバリエーションを~

皆さん、こんにちは。今回は「休み方」について書かせていただきます。

お盆休みが終わり、夏休みも終盤に差し掛かっていますが、引用した記事の通り、企業の休み方が特定の時期に集中してしまう問題はいまだ解消されないままです。休暇の分散が進めば、交通機関や観光地の混雑を緩和できるだけでなく、観光地やホテルの人手不足問題などの緩和、サービスレベルの向上にもつながります。

観光庁の22年版「観光白書」でも休暇分散を重点施策としている。同庁による22年の国内旅行消費額(17兆1929億円)を前提とした場合、第一生命経済研究所の永浜利広氏はピーク分散による経済効果が2兆円にのぼると試算する。永浜氏は「混雑を抑えることで可処分時間が増え、その分の余裕を別の消費や観光に回せる」とし、「ピーク分散は費用対効果の高い経済政策として期待できる」と指摘する。

「働き方改革」が叫ばれてから数年経ちますが、働き方改革を推進していく上では「休み方改革」への着手も欠かせません。ゴールデンウィークや夏休みなどの休暇が同時期に集中している状態を見直し、休みの分散化や有給休暇の取得の促進など、労働者が休暇を取りやすい環境を構築することが重要です。

働き方が多様化したことで、各々のライフスタイルに合った働き方を実現しやすくなりました。一方で、仕事とプライベートの境界がなくなり、上手に切り分けられないと感じている人も少なくありません

今回は、個人単位でどのように質の高い休息を効率的に取得していけば良いのか、また、休み方にもタイパ意識のある人が増えている中、どのような工夫が必要なのかについて考えていきたいと思います。

■休み下手な人の特徴

休日にしっかり休んだつもりでもあまりリフレッシュできていない人、仕事とプライベートの明確な切り分けができずに十分な休みの時間が取れなくなっている人など、いわゆる「休み下手」と言われる人にはいくつかの特徴があります。

①他の人に仕事を任せられない
→自分の仕事に対する責任感から(または単純に人手不足などにより)、他人に仕事を引き継いだり任せたりすることに苦手意識がある人は休息が上手に取れていない傾向があります。「全て自分だけで業務の対応をしなければ」という意識によって、休み時間でも仕事のことを考え続けてしまうのです。

②仕事に関係のないことに興味を持たなくなる
→時間的な余裕がなくなると、それまでの生活習慣にないことや、仕事以外の活動や新しい趣味などに興味を持つことが億劫になっていきます。いざ休暇を取ろうとすると何をすれば良いかが分からず戸惑うことがあったり、仕事から離れたいと感じた時にどうすれば良いか分からないといった状態に陥ります。

③休み中でもついつい仕事をしてしまう
→スマホ一つあればいつでもどこでも仕事が成立してしまうような職種の場合、休暇中でも仕事のメールをチェックしたり、ちょっとしたタスクをこなしてしまいます。決してそれが悪いわけではありませんが、休んでいる間も仕事のことを考え続けるので、本当の意味でリラックスできている状態は作れていません。

④自分の身体や健康に無頓着になる
→仕事に没頭するあまり、睡眠不足や運動不足に陥ることがあります。自分の身体を犠牲にしてまで仕事に取り組むことが常態化すると、どんどん健康に無頓着になり、仕事から離れると逆に不安やストレスを感じやすくなります。仮に仕事を休んだとしても、そのこと自体に罪悪感を覚え、それを打ち消すために働くという負のループに突入しがちです。

⑤ストレスや疲れが溜まっていることに気が付きにくくなる
→仕事に集中していると、長期間にわたって蓄積されたストレスやプレッシャーに気づかず、休息やリフレッシュすることの必要性を実感しにくくなります。ちょっとしたメンタルの異変や体調の変化を察知できず、心身ともに健康な状態で働き続けることが難しくなってしまいます。

上記のような特徴には当然個人差がありますが、基本的に休むことが下手な人は、仕事に過度に熱心で、休息を取ることの重要性や必要性を軽視しがちです。自分がなぜ疲れているのか、どのくらい疲れているのかを理解しないまま働き続けてしまうことで、体調を崩したり、適切にパフォーマンスを発揮できないというようなリスクが高まります。

また、「何もしないで休むことがもったいない」「時間のロスがあるのではないか」「本当に休んでいていいのか」「空いている時間で仕事をしてしまいたい」「休むにしてもチャキチャキと予定をこなしていきたい」というような人は、休んでいるつもりでも心身ともに十分な休息が取れていない可能性が高いです。

仕事において自己管理能力が高い人でも、休暇や休息に対する管理能力が低いケースがあるので注意が必要です。

■世代間で広がる労働時間の差

長時間労働は是正されてきたものの、取り組みは若い世代が先行し、世代間の差は広がったことになる。若い世代は残業を抑えて仕事から離れているのに、管理職にあたる世代は離れられていない

こちらの記事にある通り、労働時間における世代間の差が顕著になってきています。年齢が上のベテラン社員(特に管理職)はこれまでの長時間労働からなかなか脱却できず、若い世代ほど働く時間が大幅に減少しています。

ここから浮かび上がってくることは、

  • 管理職にあたる世代は従来の働き方から今の時代に合った働き方にシフトしきれていない

  • 若い世代は生産性の高い働き方への意識が高い

  • 世代間の働き方に対する価値観のギャップが大きくなっている(それぞれの世代への不信感につながる)

  • お互いの働き方に理解・共感しきれず、若い世代の管理職離れや離職につながる

ということです。管理職世代の多くは、人生の中でも仕事に比重を置き、働き方改革が推進される今でも、職場に出勤し長い時間働くことが大事であり、それが最も成果や業績に直結する方法であると思っています。そのような価値観を持った人が上司である場合、同じように長い時間働く部下をより評価していくのが自然です。ですが、それでは生産性が上がっていくことはありません。しかも、そのような企業ほど、間違いなく若い世代に選ばれなくなります。

「上手に休む」ことに向き合っていくことは、今の時代に適応するためだけでなく、生産性を向上させるためにも、優秀な人材に選ばれる会社にするためにも、優秀な人材の離職を防止するためにも必要不可欠なのです。

まずは管理職から休息の重要性を認識し、

  • 会議と会議の間に休息を取ることを仕組み化する(休息を習慣化する)

  • 業務の目的やゴールに合わせた労働環境を提供する(アイディアを創出する時、議論を活性化する時など目的別に労働環境を変える)

  • 短時間で集中できる環境を作る(集中部屋を作る・集中タイムを設ける)

  • 労働時間ではなく生産性やアウトプットで評価する(オフィスに長くいるから評価するという状態をなくす)

などの工夫をしていくことが重要です。

個人単位でも、

  • 1日の仕事始めに休憩時間や終了時間を予め決めて、時間に制限をかけた状態で業務に取り組む

  • 机やパソコンの前から意識的に離れる時間を作る

  • 短い休憩を頻繁に取る

  • 歩いたりストレッチするなど、軽い運動を入れる

  • 休憩の時は仕事から完全に離れる

など、「質の高い休息」を取る工夫はいくらでもできると思います。
私自身は、

  • 「タスクを処理する時間」と「集中してアウトプットする時間」、「一つの課題に対して考える時間」とを完全に分ける

  • 今日1日、1週間後、1ヶ月後という単位で、どの仕事をどの状態に持っていくか目標を決める

  • 重要な仕事がある場合、それに向けて万全の状態で臨めるように、それまでの仕事量や仕事の進め方を調整する

  • 業務の優先順位を、期限と緊急度別に常に入れ替える

というように業務を管理しながら、

  • うまく進まない時は思い切って仕事を「中断する」

  • やらなくてもいいことを決めて「やらない」

  • 特定の業務が得意な人を見つけて仕事を「お願いする」

  • 行き詰っていると感じたら仕事から「離れる」

  • 「要は何なのか」を考えて余計なものは「削ぎ落とす」

など、不必要なことは「やらなくてOK」、うまくいかなければ作業を「中断・中止してOK」というように、自分で仕事をコントロールするようにしています。

■「休み方」の多様化を推進する

「充実した時間を過ごして休む」のと、「何もせずダラダラと過ごして休む」のとでは、前者の方が良い休み方だと思われがちですが、そんなこともないように思います。

仕事の進め方も休みの取り方も「効率性」を重視する人は、何もせずにダラダラ過ごすことに罪悪感を覚えます。退屈な時間を少しでも減らそうと、極端に言うと1分単位で予定を詰め込もうとします。ですが、意外と良いアイディアや斬新なひらめきは、「何もしていない時」に突如訪れたりします。

やることを決めて充実した時間を過ごすことで「良い休みを取った」と感じる人は多いと思いますが、あえて何もせずに心身ともにリフレッシュした状態で、大局的に物事を考える時間を取ることなども、良い休み方と言えるのではないかと思います。

結局は、自分に合った休み方を見つけることが重要で、「完全に仕事のオンオフを切り替え、休む時はしっかり休む」方が合っている人もいれば、「休んでいる間も仕事のことを考えながら、思いついたアイディアなどを書き留めておく」というような、完全にオンオフを切り分けないやり方の方が性に合う人もいると思います。「あえて予定を詰め込まずに何もしないでリラックスする」方が合っている人もいれば、「できるだけ休日にしかできないことをたくさんこなす」方がリフレッシュできる人もいます。

どのような働き方が仕事のパフォーマンスを最大限引き出すことになるかを考えるのと同じように、どのような休み方が仕事への「集中力」や「コミットメント」、「働きがい」や「やる気」につながるのかを考えることは非常に重要なことです。

「自分なりの最適な休み方を確立する」。ここへの工夫や投資は、結果的に自分へと返ってくるものです。

旅行サイトのエクスペディア・ジャパンが22年3月に発表した調査で、日本の有給休暇の取得率は21年で60%だった。韓国と7ポイントの差をつけられドイツ(93%)とは30ポイント以上の開きがある。

こちらの記事にあるように、日本の現在の祝日の数は、年16日に増えています。ただ、祝日が増えても実際に休めている人がどれくらいいるのかについては疑問符がつきます。

  • 物理的に休めない事情がある(人手不足、業務過多など)

  • 休みを気軽に取得できない職場の雰囲気がある

  • 自分の上司や先輩が休みを取得していない

  • 業務の範囲や線引きが不明瞭で、休むと他の人に迷惑がかかる可能性がある

  • 休むことに罪悪感がある

  • 休暇を正しく取得できる制度や仕組みが整っていない

など様々な理由で有給休暇の取得率は決して高くありません。

休み方には、

  • 勤務時間に適切なインターバルを設ける

  • プレミアムフライデーのように、特定の曜日にいつもより早く仕事を終える

  • 定期的に決まった曜日に休みを取得する

  • 不定期に予定されていないタイミングで休みを取得する

  • 数日から数週間にわたる長期間の休みを取得する

  • 通常よりもプラス1日年次有給休暇を追加して長い連休を確保する(厚労省が推奨する“プラスワン休暇”)

  • 趣味やアクティビティなど、リフレッシュすることを目的に休みを取得する

  • 新しい知識やスキル習得など、自己啓発を目的に休みを取得する

  • 育児や介護、または家族との時間を過ごすことを目的に休みを取得する

  • 仕事と休暇を共存させて、リモートワークをしながらいつもと別の場所や環境で過ごす

など、複数のパターンが考えられます。

企業側は、まずは従業員が休暇を取得しにくい要因や実態を的確に把握し、休暇を取得しやすい環境や制度を整えていくことが重要です。

「働き手が休みたい時に休める」という状態を確立することはもちろん、働き方と休み方の多様化を同時に推進していくことは、従業員が仕事のパフォーマンスや生産性を高める上で間違いなく無視できないポイントではないでしょうか。


#日経COMEMO #NIKKEI


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