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欧州展開の足がかりとしてのIFA NEXT

今年もIFAがベルリンで始まった。CESの欧州版ともいえるIFAだが、今年の会場に足を踏み入れた日本人に「おや?」と思わせるのは、JAPANの文字が目立つことではないだろうか。これは、IFAに併催されるスタートアップイベント「IFA NEXT」に、今年は日本が初の公式スポンサーとなったからだ。初回だからということもあるのか、思っていた以上にJAPANが大きくフィーチャーされている。

会場は昨年と同じ26ホールを使っているので面積的には同じだが、昨年と比べて出展社の密度が高くなったように思うし、会場を訪れる人の数も増えているように感じる。日本のスタートアップの出展も、J-STARTUPを中心に、French Techと同じくらいのボリューム感にはなっていると思う。

スタートアップに関しては、日本ではどうしてもアメリカ、特に西海岸・シリコンバレーに目が向きがちだ。しかし、欧州市場も十分に大きな経済圏であり、スタートアップのエコシステムや、社会環境の類似性などを考えても、アメリカより欧州の方が日本のスタートアップになじむ面もあるように感じる。そうした欧州市場に目を向けていくことは、細っていく国内市場だけにビジネスの成長を頼らないためにも大切なこと。これはすべての日本企業に当てはまることだが、とりわけ短期間に飛躍的な成長を目指し、それを投資家からも求められるスタートアップにとっては、アメリカやアジアの市場とならんで重要なマーケットであるはずだ。

そういう中で、メインイベントであるIFAに一定のプレゼンスがあり、その併催イベントとして誕生して間もないIFA NEXTに日本がスポンサードしていくことは、日本が埋もれるのを避けながら存在感を出していくためには、悪くない選択だと思った。日本が、こうした海外のスタートアップ関連イベントのメインスポンサーになるということは珍しい。それだけに、手探りをしていかなければならない面も大きと思うが、今後、日本がIFA NEXTを、スポンサードという手法に限らず主催者と一緒に育てていけるかがポイントになると思う。

French Tech (Business France) は、IFA NEXTの担当をドイツ駐在からフランス本国に移したという話も聞いた。それだけフランスもIFA NEXTに力を入れるということと考えられるのかと思う。CESのEUREKA PARKなどと比べて出遅れ感のあるIFAのスタートアップへの取り組みなだけに、こうしたスポンサーシップを通じて盛り上がりを作っていけるのであれば、日本も主催者もお互いに有意義ではないだろうか。

日本のスポンサーが経産省・JETROによるものなので、複数年度の実施を期待できるのか、という疑問・危惧もあるが、スポンサーのポジションを続けられないとしても、JAPANブースの一定規模での継続的出展などJETROによる日本のスタートアップの出展サポートの継続を通じて、IFA主催者と一緒にIFA NEXTを育てていける関係構築が出来ているなら、それを大切にしていくことに価値がありそうだ。

今回のスポンサードをうけて、会場内のステージで経済産業省の方のキーノートがあり、その内容は、たとえば花見を引き合いに出して日本人は働き中毒というよりアル中だ、と紹介するなど、ちょっとミスリードではないかと聞いていて気になったが、終わってしまったことでもあり、これも経験を積みながら改善していけばよいことだろう。

一方、これは日本の問題ではないのだが、IFA NEXTに関して気にかかることがあるとすれば、スタートアップの展示やプレゼンにドイツ語が大きく残っていることだ。せめて、展示物や配布物は英語併記を必須として欲しいと思う。この点、フランスで開催されるVIVA Technologyは、一般公開の最終日を除けばフランス語を基本的に使っていない。こうした点も、日本がパートナーとして主催者側に働きかけていくことで、英語を共通語とする国際イベントにしていけるなら、さらに意義深い。

欧州内は距離も近く移動も容易だし、地元開催にこだわる必要もないのだろうけれど、せっかくベルリンにスタートアップの集積が出来つつあるのだとしたら、主催者発表で24万人以上(2018年)が訪れるIFAの場を活かせないのはもったいないと思う。

メインイベントであるIFA自体が次の活路をどう見出していくのかという点も気にかかるところだが、まさにIFAのNEXTを創るものとして、このイベントが定着してくれるならと思った。

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