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国東半島「カルチャー・ツーリズム」という新たな観光のあり方

コロナの影響で大きく影響を受ける地方の観光業ですが、大分県北東部の国東半島では地域固有の歴史や伝統に根ざした文化資源や現代アートをともに楽しむ、国東半島「カルチャー・ツーリズム」という新たなツアーモデルが誕生。現代アート、土地の土着の文化、食、宿泊、登山など様々な要素が複合的に組み込まれた盛りだくさんのツアーです。


プレス向けの限定ツアーに参加させていただいたので、その体験をレポートします。

空港レーンで回転寿司の洗礼

初めて降り立つ大分空港。コロナ禍で久しぶりの空港に興奮しながら手荷物受け取りレーンに並ぶと、目を疑う光景が……。

寿司が……回っている……!??(大分人には当たり前の風景らしいですが多くの人が衝撃を受け、上記の映像がバズって2万RT&160万回再生超え
まさか到着30分でバズるとは思わなんだ、大分のコンテンツ力恐ろしい……。

大分・別府は他にもツッコミどころのある風景が多く、街歩きしているだけで奇妙なものとのエンカウント率が高くて楽しいです。ご案内役の方いわく、「大分人はダジャレが大好きな県民性」とのこと。

別府の商店街に突如あらわれる「エッチビル」「エッチ美容室」に思わず中2男子的に注目してしまったり(実力派の着付け屋&美容室のようです。しかしこのフォント、狙っとるやろ……)、

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夜の別府を歩いてるとスナックやガールズバーの看板で構成されたステンドグラスが出現。聖と俗が入り乱れた現代アートかと見紛った。

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今日び珍しいほどのドープさを誇る別府の街を堪能しました。宿泊先の山田別荘さんも歴史を感じる宿で素晴らしい宿泊体験。朝食が本当に美味しかった。

大分はご飯も最高です。別府名物である「地獄蒸し」に特化した「蒸士茶楼」さんの薬膳コース、目にも舌にも体にも優しく、五臓六腑に染み渡りました。温泉の水蒸気を長い時間をかけて抽出したスープとか、一体どれだけ時間がかかっているのか……。

雄大な自然と美術作品をのぞむ、修験道のような鑑賞体験

二日目からは大分県北東部の国東半島に移動(ここからが本番)。
渡来の文化と土着の文化が混在し、神仏習合文化発祥の地ともされるこの地でかつて「国東半島芸術祭」が開催され、オノ・ヨーコさんや宮島達男さんなど錚々たるアーティストが参加。このときに設置された作品の一部は常設化し、いまでも国東半島の名所となっているようです。

最もシンボリックなのが、厳しくそびえる修験道にきりたつ崖の上に立つアントニー・ゴームリーの彫刻作品《ANOTHER TIME XX》。
世界で最も危険な場所に設置されている作品なのでは……。作品設置も一筋縄ではいかず、地元の方々が一緒に知恵を絞りながら運び込まれた作品。

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また、今年生まれた新作としてフィーチャーされていたのが、国内外の様々な展覧会や芸術祭で活躍する島袋道浩さんの新作群。

竹田津地区の馬ノ瀬に設置された《マノセ》は「石をつむ」「流木をたてる」「穴のあいた石をさがす」という3つの文章が提示されているのみ……という超シンプルな作品。
鑑賞者は、そのガイドに準じ、海岸で土地とたわむれ関係します。実際にやってみると童心にかえって素直に楽しい、石を積んだり木を立てたりすることは、最も原始的な土地との関わり方やメッセージの送り方なのかもしれない。

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島袋さんは「なるべく土地に手を加えず、住民の方々が大事に守ってきた景観を壊さない」ことを遵守。そこに暮らす人々へのリスペクトを持ちながら場所とコラボレーションを行っていったと島袋さんは語ります。

島袋さんの別作品《息吹》は、島袋さんが国東半島の海辺の堤防にあった使われなくなった外灯に魅入られ、それを作品化したもの。日没になると街灯が光り、人の呼吸のリズムを模して明滅します。
海辺の古びた外灯がまるで満月のように光り(実際に月の色に近い光にしたそう)、打ち捨てられたUFOのようでどこか宇宙との交信を感じる、ポエティックな作品でした。

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旭日地区の祇園山に新設された《光る道ー階段の無い参道》は、夜になると光り輝く手すりを設置した作品。急な斜面を完全に手すり&腕力だけで急勾配を登って参拝するパワープレイ参拝を体験することができます(まじでキツかった😂)。

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山を登った先には、日本全国の様々な地域から運んできた石でつくられた《首飾りー石を持って山に登る》が広がっています(島袋さんは”石サミット”と解説されていました)。鑑賞者は自分の好きな石を持ち込み、そこに置くことができる。10年後、50年後、100年後とたった時に作品がどう変化していくのか思いを馳せてしまいました。

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全体として、危険で厳しい場所も多い鑑賞体験でしたが、自分の身体感覚を研ぎ澄ませながら作品鑑賞のためにコミットするためか感動も倍。修験者を疑似体験するかのような鑑賞ルートでした。

この日の宿泊先「旅庵 ふきのとう」さんで疲れを癒やしました。朝からハードに動き回ったので温泉がクッソ気持ち良いし、ご飯とお酒が美味しい……。Wi-Fiも完備で仕事もはかどる最高。

今なお残る、数々の神仏習合の風習

現代アート作品が設置されている一方で、大分・国東半島は神仏習合の発祥地として知られ、古くから山岳信仰が根付いています。ツアー3日目はかなり濃い神事・仏事体験を朝からできて個人的に最高でした。

国の重要文化財である「熊野磨岸仏(くまのまがいぶつ)」は、切り立った崖に巨大な仏像が彫られている、山岳信仰を象徴するような場所。
鳥居(神道)を潜って長い石段を登ると崖に巨大仏像(仏教)が掘られ、さらに石段を登ると神社(神道)があり、その裏手には小さなお地蔵さん(仏教)がいる……という見事な神道と仏教のチャンポンぶりに興奮。

ツアー中に初めての座禅や護摩焚きも体験できたのですが、いずれも素晴らしい体験でした。ツーリズム体験の尺度として一般的な「グルメ」「エンタメ」とかだけでなく、その土地にある伝承の深さ、神事や仏事のクオリティというのもあるんだな、と改めて実感。国東半島のそれは一級品でした。

日本人として初めてエルサレムに渡った日本人ペトロ・カスイ岐部の道行きをテーマにした常設作品も見られました。川俣正《説教壇》。川俣さんの「アートレス」を以前に拝読して感動していたので作品が拝めて嬉しい。

肉体的・精神的・霊的にそれぞれ浄化され、コロナ禍の都会でデスクワークでなまった心身をリフレッシュでき、全体として非常に良い体験ができた滞在でした。

かつて日本各地で開催されてきた、不特定多数が一斉に集まる地方芸術祭モデルはこれからの時代なかなか厳しいのではと思っていますが、少人数・(おそらく)高単価のカルチャー・ツーリズムというパッケージも合理的。
以前に伊勢市クリエイターズ・ワーケーションの企画者である伊勢市役所の立花さんを取材した際にも「文化的なものにお金を投じる層は観光業と相性が良い」という仮説が立てられていました。参加者のマナーもある程度は担保されているはず。

どの産業においても様々な「番狂わせ」や「波乱」が相次ぐ昨今。しかし、様々な地方において文化を活用した新たな産業、新たな取組の萌芽が見られることに、一抹の希望を感じた滞在でした。


別府や国東半島はじめ、大分は景観・気候もよく食べ物も美味しく人が優しくQOLも高そうで、移住先としても魅力的な土地です(自分も移住欲が高まってしまった)。アフターコロナの移住先・2拠点生活候補の視察も兼ねて、カルチャー・ツーリズムが正式にオープンした際にはぜひ参加されてみてはいかがでしょうか。


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