藍染の魅力、ジャパンブルーに引き込まれる。
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藍染の魅力、ジャパンブルーに引き込まれる。

長島聡(きづきアーキテクト株式会社代表)

広い空、無数に流れる川、海に囲まれた国土。青は、日本を象徴する色だと思う。明治初頭に来日した英国人科学者のアトキンソンは、街が藍色に彩られている様子を「ジャパンブルー」と表現したという。

当時使われていたのは植物染料の「藍」を用いた藍染だ。江戸時代ごろから藍染は、庶民的な染物で、青く染められた木綿の着物などが広く普及していた。ただ、他の染料植物とは異なり、煮ても色素は取り出せない。そこで、藍を瓶に入れて発酵させるなどして藍液をつくる。そこに糸や生地を浸して、染めていく。空気に晒すと、直後は黄土色だが、徐々に酸化して青に発色していく。何回も繰り返して、青に濃淡が生み出される。職人の技術で一つひとつの作品が大事に作られていく。

そんな藍染を身近に体験できるスペースが来月、北海道の美瑛町にオープンする。「藍染結の杜」だ。様々な藍染の製品を購入できるお店に加えて、イベントスペースやカフェが併設される。藍の栽培体験もできるらしい。

最近は、木の家づくり、木工などの手仕事体験に凝っているので、藍染にも興味津々だ。自分で摘んだ葉を発酵させて藍液をつくる。そして、スカーフや手ぬぐいを染める。簡単には上手くいかないとは思うが、初めから終わりまで一気通貫で触れると、モノづくりの素晴らしさや有り難みを改めて感じることができる貴重な体験になると思う。

ジャパンブルーといえば、デニムも最近頑張っている。広島県福山市には、海外の高級ブランドのデニム生地を手掛ける企業が集積しているが、そこで昨年から新たな取り組みが始動している。地元の企業10社以上で立ち上げた「プロジェクトボレーガ」だ。オーダーメードでジーンズを作ることができる。

その価格はなんと税込110万円からだが、素材はワタから選び、色味はもちろん、染色方法や生地を織るための織機まで、自由に選べる。生地は1000種類以上から選択できるという。デニムが完成する過程を、工場で、そして職人との対話を通じて体験できるのだ。特別の体験で、唯一無二の「一生物のジーンズ」を手にすることができると思う。

藍染はどうやら奥が深そうだと考えていたら、「熱しない藍染」という記事が目に止まった。奈良時代から続く「正藍冷染」という日本最古の染色技能だ。「群青色をした染水の表面にぶくぶくと泡が出てきたら、うまく発酵が進んでいる証だ。この泡を「藍の華」と呼ぶ。華がたくさん咲けば咲くほど、布はきれいに染まる」と職人の千葉さんは語る。

通常の藍染では、藍瓶を加温して発酵の加減を調整しながら年中染めることができるが、「正藍冷染」は熱を加えることなく自然のままに発酵を促すため、染めのできる期間は初夏のごくわずかな期間だという。自然のものだけを使って、自然の力だけで作るので、他の藍染めよりも、色が澄みわたる。匠の言葉からは、科学や論理を超えた感性に響く奥行きが伝わってくる。

「宇宙から届く光の悠遠さ、自然の繊細さ、生命の力強さ、そして松枝さんが愛した歌心。それらが濃淡を駆使した藍の色味と反復を生かしたシンプルだが巧みな構成によって見事に表現されている」と、久留米絣作家の松枝さんの作品を絶賛する記事を見つけた。私自身は絣の着物など、まったくの素人だが、写真で拝見するだけでも、なんとも奥行きの深さを感じる作品だ。作品のタイトルは「光芒」だ。光の先っぽという意味らしい。デザインから確かにそのイメージが伝わってくる。

加えて、記事を読み続けると、「藍の歴史、久留米絣の「歴史の先っぽ」でそれらの力と助けを借りながら作っている」というなんとも気持ちを揺さぶる松枝さんの言葉を見つけた。「先人の知恵からの何百年もの歴史があって、その延長線上にぼくらの仕事がある」と話す松枝さんの言葉からは、様々な歴史を学んで、背負って、リスペクトを持って文化を育む生き方が滲みでているように感じた。

改めて、モノづくり、作品づくりをもっと意識して日々の生活を営んでいきたいと感じた。これまでの歴史の中には、地層のように積み上げられてきたものがたくさんある。もちろん、それらすべてに簡単に触れることはできないが、モノや作品に触れるとき、その成り立ちや奥行きに興味を持つことはできると感じた。下手でもいい、自分で触れてみることにも挑戦したいと感じた。そんな中で、成り立ちや奥行きのあるものが自然と好きになっていくと思う。

最近、SDGsやサーキュラーエコノミーといった言葉が注目されているが、実践は意外と簡単なのかもしれない。モノの成り立ちや奥行きに触れる中で、モノを大事にする心やリスペクトする心を養う。これまで培ってきた文化を、未来の社会で活用してもらえるように伝えていく。こんな日常の延長線上に、SDGsやサーキュラーエコノミーが自然に生まれていくはずだ。単に消費を楽しむだけではもったいない。想像力と好奇心を持って、人が培ってきた文化、育んできた文化に触れていきたいと思う。きっと心豊かな楽しい毎日になるはずだ。

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長島聡(きづきアーキテクト株式会社代表)
由紀ホールディングス社外取締役、FS協会理事、慶應大学SDM特任教授、NDMA代表理事、工学博士。 早稲田大学理工学部助手、ローランド・ベルガー日本代表、同グローバル共同代表を経て、2020年7月きづきアーキテクトを創業。 https://kidukiarchitect.jp/