新型コロナとインフルエンザ同時流行時の課題
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)収束の見通しが立たない状況でこれから迎える秋冬シーズンはインフルエンザとの同時流行の可能性も危惧されています。COVID-19とインフルエンザはともに高熱が出ることが多く、双方を鑑別するためには臨床症状だけでは難しく検査も必要です。日本感染症学会はCOVID-19の発生がみられる地域で発熱やせきなどの症状がある患者さんには、できるだけCOVID-19とインフルエンザ両方の検査を実施することを推奨していますが、症状のある方のCOVID-19検査は現状では専門の医療機関やPCRセンターなどの検査所に限られています。
昨シーズンまではほぼどの医療機関でもインフルエンザの抗原検査が行われていたと思われますが、COVID-19の流行で発熱患者さんの受診をお断りしたり、院内感染のリスクから検査を実施しない医療機関も少なくはありません。このような状況が続くと当院のようにCOVID-19の診療を行っている医療機関に発熱患者さんが集中し、対応しきれなくなる可能性があります。
厚労省は両方を検査できる医療機関を増やし、かかりつけ医などでも対応できる体制を10月中に整備する。ただコロナ検査の拡充に手間取ってきただけに、どこまで増やせるのかや患者の殺到を防げるのかは未知数だ。
記事のとおり検査可能な医療機関を増やす考えは是非とも推進していただきたいのですが、診療所でのCOVID-19対応は多くの課題があり、基本的な感染対策の個別指導、設備投資に関連する支援、感染者が発生してしまった場合の対応などが現場に浸透しなければ状況が大きく変わることは困難ではないかと思います。その代わり発熱患者さんの受け入れをお断りしているのであれば、保健所が行っているCOVID-19に関連する相談業務や、検査センターへの出向業務など、患者さんに対して「発熱患者お断り」「熱があるなら来ないでください」などと言って門前払いするのではなく、患者さんを受け入れている医療機関の負担が少しでも軽減するようなご支援を是非ともお願いしたいです。
また皆様方におかれましては、医療機関の負担が少しでも軽減するようにインフルエンザワクチンの接種をお願いしたいと思います。インフルエンザワクチンは発症を予防するものではないですが、接種していれば発症せずに済むこともありますし、重症化を防ぐ効果は実証されていますので、COVID-19の重症化リスクのある方は同時流行の時期に入る前に早めの接種を推奨します。
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