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子育ての経験を「人材育成」に活かせる理由。人のポテンシャルを伸ばす10カ条とは。


皆さん、こんにちは。
今回は「教育・育成(人の能力の伸ばし方)」について書かせていただきます。

日本では98%の子供が公立小学校に通い、同じ学習指導要領のもと、似たような教室のなかで教職免許を持つ教師による検定された教科書に沿った授業を受けます。これだけ標準化された義務教育制度のなかで育つと、すべての子供に同じような機会が付与されていると感じるかもしれません。しかし、出身家庭のSES(Socioeconomic status、出身家庭の社会経済的地位)による学力や最終学歴の差は、先進諸国と比べて特別に小さいわけでも、また、極端に大きいわけでもありません。日本は誇れるほどでも過度に卑下するほどでもない、凡庸な教育格差社会なのです。ただ、教育格差が可視化されていない分、教育の結果は本人の能力と努力次第といった自己責任論は支持されやすいかもしれません。
子供の年齢層別に教育格差の実態を概観していきましょう。まず、「生まれ」による格差は就学前の段階ですでに確認できます。家庭のSESや地域によって小学校に上がるまでの年月に様々な経験の差が存在するのです。SESの代理指標である親の学歴で見ると、両親大卒や親のうち一人が大卒の家庭は、両親非大卒層と比べて、子供の発達に望ましいと考えられる「意図的養育」をする傾向があります。たとえば、複数の習い事を早い時期に開始したり、テレビやゲームといったメディア時間を抑制したりします
このような「意図的養育」パターンは小学校の間も続きます。両親大卒層の子供は家庭で書籍に囲まれ、複数の習い事を経験し、将来大学に進学することを親に期待されます。学力については、親学歴によって小学校入学時点で基礎的技能に差があります。同じ児童を毎年追跡したパネル調査によると、SESの代理指標である家庭の蔵書数によって4年生で学力格差があり、その差は大きく拡大も縮小もせず5年、6年と維持されます。この格差の平行移動は中学校に入っても同じで、小学校6年から中学3年まで学力格差は平行移動で縮小しません。SESによる個人間の格差だけではなく、公立校に限定しても小中学校で地域間格差が存在します。児童の両親の大半が(短大を含む)大卒の学校もあれば、大卒の親を持つ児童がほとんどいない学校もあり、この親の大卒割合は、学校の平均的な学力や学校外学習時間、それに親の子に対する大学進学期待割合(図3)など、様々な観点の格差の基盤になっているといえます。公立校であっても、塾通いも含め長い時間学校外で勉強し、大学を目指すことが「ふつう」な学校もあれば、そうではない学校もあるわけです。
出身家庭のSESによる学力や進学期待の格差を縮小しない状態で高校受験という選抜を行うので、生徒は実質的にSESによって別学校に隔離されることになります。データによれば、進学校の生徒の大半はその地域の高SES家庭出身者で、「教育困難校」には恵まれない家庭出身者が集められることになります。どの高校に通うかはその後の進路と強く関連しているので、高校教育制度は「生まれ」による学力や進路希望の差を固定化する機能を持っていることになります。
このように、「生まれ」が結果に変換される過程を内包するのが国際的に凡庸な教育格差社会・日本なのです。


私は教育について専門的に勉強しているわけではありませんが、一人の親として、子供の持っている能力の高さ、ポテンシャルの高さに驚いた経験があります。(特に子供が小学校受験のために塾に通い出した頃、子供の適応力の高さに驚くと同時に、教え方一つ、才能の引き出し方一つでこんなに成長するんだと非常に驚かされました。)
そして、育児を通して、「子供を育てる経験」は仕事にも活きるものだと痛感しました。
子育てに必要な基礎的な力(マルチタスク能力、リスク回避能力、情報収集力、瞬発力、判断力など)はもちろん、子供に対する教育の方針決定や、そのアプローチ手法の構築などから得たスキルは、仕事上のマネジメントの経験にも活きるものであるとも考えています。

今回はそんな実体験をもとに、一人の親の目線から、今子供に対してどんな教育が必要なのか、そして、仕事に置き換えた時にどんな人材育成が必要なのかを考えてみたいと思います。


■子供の持つポテンシャルについて

自分自身の子育ての経験から、子供ってすごい!と思ったポイントは以下3つです。

① 楽しむ力・夢中になる力・自分を肯定する力
→子供は、学ぶこと、できるようになることを楽しむ力があります。公園で遊ぶことが好きな子もいれば、本を読むことが好きな子もいて、それぞれ好きなことはバラバラですが、楽しいと思ったことには素直に一生懸命、心の底から楽しむことができます。何かに夢中になり取り組む過程を全力で楽しめるというのは、大人になってからも実は非常に重要な力ではないかと思うのです。
自然と学ぶことやできるようになることを楽しめるようになると、今度は勝手に子供なりに目標を掲げ、それができたら“嬉しい”、それができなかったら“悔しい”という感情を持つようになります。目標をクリアしていく喜びを実感できると、更に熱中して物事に向き合うことができるようになるのです。
また、子供は自分の感情に正直です。褒められたことをストレートに自信に変える力がありますし、成功体験を重ねていくと、自己肯定感を育むことができます。自己肯定感が生まれると、「自分はできる」「頑張れば結果が出る」と思えるようになり、あきらめずに継続した努力ができるようになります。
② 創造力・柔軟性・適応力
→子供は大人が持っているような既成概念がないので、常識にとらわれず自由に発想する力があります。
たとえば、段ボール一つ与えて、「●●を作ってみて」というよりも、「何でも作っていいよ」と言ってあげると、想像の斜め上をいくアイディアが出てきたりします。
また、たとえば、折り紙でお花を折る時に、その折り方を一から教えてあげるよりも、「自分で考えてお花を作ってみたら?」と言ってあげると、なんとか自分なりに花びらや茎や葉っぱを表現しようとするのです。お絵描きをする時も、「太陽は赤色でなければいけない」とか、「空は青色で」と決めつける必要はありません。
創造力を引き出そうとすればするほど、子供の持つ柔軟性や、適応力の高さに気づかされます。子供の世界を広げ、オリジナルな発想や考えを否定せず、新鮮な体験をたくさんさせることで、それぞれの解釈で吸収し、柔軟に適応する力も高まっていくと思います。

③観察する力・疑問を持つ力・自分で解決する力
→子供は普段の生活の中で、様々なものを見聞きし、特に新しい発見があると、純粋に疑問を持ちやすいです。大人にとっては見過ごしてしまうものでもよく観察していて、「これは何?」「なんでそうなっているの?」と素直に疑問を持ち、知らないことを知りたがります。子供は五感を研ぎ澄ませながら、全力で新しいものに触れる力があり、大人が考える以上に注意深くモノを見ています。
子供にとって初めて目にするものや耳にするものを、ありのままに感じてもらうことが重要で、親が先回りして答えを与え過ぎず、自分で調べようとする意欲を奪わないであげることがポイントです。
そうやって観察する力や疑問を解決する力を伸ばしてあげると、自ら考える力の向上にもつながります。
「子供はまだ考える力がない、判断する力がない、解決する力がない」と思っている親は多いのではないでしょうか?私自身も実はそう思っていましたし、何でもすぐに答えを与えてしまっていました。子供の“考える機会”を親が奪わないことが大事なのです。


■今の子供たちに必要な教育、必要な力とは。

引用させていただいた記事には、「意図的養育」という言葉が使われていましたが、
・複数の習い事を早い時期に開始する
・テレビやゲームといったメディア時間を抑制する
などは、どの程度必要なのでしょうか。

おそらく様々な研究の調査結果によると、習い事はしないよりはした方が良いし、始める時期も遅いよりは早い方が良いし、家庭でルールを決めてテレビやゲームの時間を抑制した方が良いという見解が一般的なのでしょうが、『幼少期にたくさん習い事をさせ、親は子供の日常生活に意図的に介入していく』ことだけが正解ではないはずです。

「能力を伸ばす」という観点に絞って、今、子供たちにどんな教育が必要か、将来のためにどんな力を身につけた方がいいのかについて、小学生の子供を持つ視点から、さらに、採用活動などを通して大学生と接触する視点から、3つ挙げてみます。

①正解を見つける力よりも、正解を作り出す力
→これまでの、知識の詰め込み型による記憶力勝負の教育よりも、答えのない問いに対して自ら思考し、正解を作り出す力が求められています。情報過多の時代では、何が正しい情報で、何が正しくない情報かを自分で取捨選択し、その情報を踏まえて問題解決、課題解決に導く力が必要です。正解か不正解かという〇か×かで判断される答えを導くことよりも、自分で問題を発見し、解決に向けたアクションを行い、自分で決めた内容を正解にしていく力こそ求められています。
②受動的にではなく能動的に動ける力
→従来の「与えられた環境の中で、先生が教えてくれるから勉強する」という姿勢ではなく、他者や周囲の環境に依存せずに、「自分が学びたいから学ぶ」という環境を作り、そこから自分のやりたいことや役割を見出し、責任持ってその役割を遂行するという、能動的な姿勢や思考が求められています。
能動的に動いた結果、そこで好きなことや夢中になれることを見つけ、上達するように「極めていく」。その極めていくことが、その人の未来を作り、その人にしか出せない価値につながっていくのです。
③環境や状況に合わせて自らを変えていく力
→『世の中で生き残る生物は最も強いものではなく、最も知性の高いものでもなく、最も変化に対応できるものである』とダーウィンが進化論を唱えたように、これからの変化の激しい先行き不透明な時代において、将来を担う子供たちに必要となるのは、社会の変化とともに自分自身も変化し、変化に対応しながら、新しい形を模索できる力です。どんなに“強く”て“賢く”ても変化に適応できなければ、その能力を十分活かしきることができません。
変化に対応していこうと努力する人は、他者からの指摘やアドバイスを素直に受け入れる習慣が身につき、自分の考えや行動を良い方向へとどんどん変えることに抵抗がなくなります。
素直さや受容性の高さが柔軟性や適応力に直結し、仮に大きな変化が起こっても、その困難な状況を打破するために、工夫してやり抜く力を発揮していくことへとつながるのです。


■まだ眠っている潜在能力を活かすには。

冒頭に書かせていただいた通り、育児の経験は仕事上のマネジメント経験に通ずる部分があります。『人のポテンシャルを伸ばす』という点において共通していることが多いからです。

これまで述べてきたことを踏まえて、仕事でも『人のポテンシャルを活かす10カ条』を作りました。
1から10のポイントは、私自身が子育てでの失敗経験やそこからの学びを踏まえて考えたものですが、じっくり考え出したら100個くらい出てきてしまいました。一応、厳選して10個に絞り込んだものです。

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既に顕在化している能力はそのまま活かせば良いですが、より難しいのは潜在能力を引き出す方です。世の中にリーダーシップ本、コーチング本、人材育成本は溢れていますが、相手の潜在能力を発見し、それを引き出すマネジメント手法が完璧に確立されているわけではありません。

変化の激しい時代においても、AIやロボットに仕事が代替される時代においても、人によってのみ発揮される能力は今後も不可欠であることに変わりありません。更に、人が持つ潜在能力を高めることのできるマネジメントや組織は、それ以上に必要であり、それだけで競争力になります。

自分の強みや能力を発揮して会社に貢献することはもちろんですが、他者の能力を引き出し、最大限その能力を発揮させられる人の価値は、これまで以上に高まっていくのではないでしょうか。


#日経COMEMO #NIKKEI

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