休日増加という敗北主義~10連休を「奇貨」としよう~
10連休を前に思う所を書かせて頂きました。
10連休だからこそ考える いま日本で「休日が増えること」の功と罪
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/64298
本日が平成最後の出勤日で明日から10連休という方が多いのではないでしょうか。しかし、今や、本邦の金融市場参加者においては10連休を「リスク」と呼称することが普通になってしまっています。コラム中にも書かせて頂いておりますが、これだけまとまった休みを取るために企業、金融機関は各種工夫を強いられている状況です。もはやここまで来ると「休むために働いている」という域に入ってきている風情も感じます。
真偽はさておき、個人投資家も多く参加し、急変動がしばしば話題となる為替市場においては「日本だけ休み→東京時間に市場参加者が少ない→値が飛びやすい→投機としては攻め時」という客観的な市場環境があることは確かに否めません。東京休場の最中に起きる「日本の個人投資家のロスカット誘発を狙った仕掛け」という指摘は、今や年末年始・お盆そしてゴールデンウィークの風物詩のようになっているようにも感じます。
こうした動きは見方によっては「市場の歪み」を利用した(一部短期筋にとっての)収益機会ともいえ、あまり健全な話ではないでしょう。過度なショックを回避するという視点に立てば、そして東京が本当に国際金融都市構想に沿って前に進みたいのであれば、金融市場の運営に限っては世界基準に合わせることも将来的には決して絵空事ではないように思います。既に「日本は海外に比べ祝日が多い。売買機会が減るのはリスクで、日本株を敬遠する動きにつながりかねない」という声も出ているわけです。
コラム中にも書いているように、日本の公休は欧州のそれよりも大分多いですが有給取得率の低さも相まって結局は「休めていない」という構図 になっています。「自主的に休めないから強制的に一律休む」という敗北主義は海外勢にとっては日本市場での取引機会減少を意味し、日本経済にとっては労働投入量の削減(≒産出量、要はGDPの削減)を意味するはずです。理論的に考えれば、生産性上昇がなければ、必ず成長は落ちます。しかし、「早帰り」や「残業削減」に矮小化された働き方改革で生産性が本当に上がっているのか?確信を持てる人は恐らく多くないでしょう。
世論調査などを見るにつけ休みを増やすことへの世間の考え方も変わってきているように思います。必ずしも休みを増やせば良いというものではない、という世論の変化を感じます。日本社会における労働観に関し「長時間労働の慢性化」が「労働時間の削減」に至り、今後は単なる「労働時間の削減」から「労働時間の柔軟化」に進化しようとしている過渡期なのだと見れば、今回の10連休を1つの社会実験として有用な試みと理解することも可能かもしれません。これを奇貨として働き方改革の中身も変わっていくことを期待したいです。
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