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「よい利益」と「悪い利益」

 前稿で「よい幸せ」と「悪い幸せ」について論じた。
 今日は話題を「人」から「法人」へ、そして「幸せ」から「利益」へ移そう。
 企業にとって、利益をだすことは、存続のための必要条件であり、予期せぬ変化に対する保険である。そして、企業を存続させて、関係者の継続的な努力を、社会のために活かすことは、社会の目的と合致する。この意味で「利益は社会の善」である。

 この「利益は社会の善」を大前提としても、利益には、実は「よい利益」と「悪い利益」がある。
 なぜなら、企業は、一社単独では商品やサービスを提供できないからだ。企業はかならず、多数のサプライヤーや供給業者と相互依存して、サービスや商品を提供している。
 仮に、ある企業が大きな利益を上げていたとしても、それは、その利益をあげるために、まわりの企業の利益をそれ以上に下げているかもしれない。社会全体では利益を生み出していないかもしれない。これはいわば、関わり合う企業に対し、取引上で一種のハラスメントを通して、利益を得ている状況といえる。これは「悪い利益」の例である。
 さらに、従業員の利益(報酬)を不要に下げることで得た利益も「悪い利益」である(従業員の生活の質や幸福にも影響を与えるだろうが、ここでは純粋に利益の観点だけから考える)。従業員の報酬を下げるのは消費を抑えることにつながり、この企業に見える利益より、社会全体での企業の利益の実態が低い場合には、それは「悪い利益」である。
 加えて、企業が利益を得るために、地球環境にダメージを与えるのも「悪い利益」につながる。得た利益を超えて、その対策に社会コストがかかるならば、社会全体の利益を増やしていない利益であり「悪い利益」である。
 この議論は、ESG投資やステークホルダー資本主義へと本質的にはつながる。ただし、ESG投資やステークホルダー資本主義という言葉は分かりやすくはない。営利を求める企業に、利益以外のことにも配慮しなさい、という道徳を求めるイメージがつきまとう。
 「よい利益」と「悪い利益」という捉え方によって、純粋に利益視点から捉えていく方が、わかりやすい面があると思う。
 


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