見出し画像

40代はスタートアップでキャリアの停滞を乗り切る

40代以降の中高年がスタートアップへの転職を増やしている。この動きは、いくつかの要因が重なり合った結果として自然の流れとも言えるだろう。中高年が大企業で直面するキャリアの行き詰まり、スタートアップ側の待遇改善、そして両者のニーズが一致しつつあることが背景にある。

キャリアプラトーとスタートアップへの転職

40代の会社員にとって、昇進や昇格の見通しが立たず、日々の業務が繰り返しに感じられる「キャリアプラトー」の危機は珍しくない。この段階に達すると、モチベーションが低下し、能力開発の機会を見出しづらくなることが多い。こうした状況で、スタートアップという新しい活躍の場を求めるのは自然な選択肢だ。

スタートアップでは、新しいビジネスモデルやプロジェクトに取り組む機会が多く、職場環境も柔軟だ。そのため、これまで培った経験やスキルを再び活用し、自己成長を実感しやすい環境が整っている。

スタートアップの待遇改善が促す転職

かつては、スタートアップに転職すると年収が大幅に下がるというリスクがあった。しかし、近年では状況が変わりつつある。スタートアップへの資金流入が増え、給与水準や待遇が向上した結果、中高年にとっても経済的に魅力的な選択肢となってきた。たとえば、エン・ジャパンの調査では、2023年の新興に転職した40代以上の年収は758万円と、大企業を含む全転職先の平均を上回っている。このような環境の変化が、転職のハードルを大きく下げている。

大企業から持ち込まれるノウハウ

スタートアップは急成長を遂げる過程で、ビジネスのスケールアップや組織づくりが課題となる。ここで、大企業出身者が果たす役割は大きい。ニトリやアイリスオーヤマなど、現在の大企業が成長する過程でも、大企業出身者の知見が活用された例は少なくない。スケールの大きなビジネスの作り方、組織運営のノウハウ、さらには顧客やサプライヤーとの広い人脈など、大企業での経験はスタートアップにとって貴重な資産となる。

文化の違いが生む課題

一方で、大企業出身者がスタートアップで適応に苦しむケースもある。たとえば、大企業での「稟議書文化」や「階層型の組織管理」などの習慣を持ち込むと、スタートアップ特有の迅速な意思決定やフラットな組織文化と衝突する場合がある。この「大企業病」とも呼ばれる考え方がトラブルの火種となることは否定できない。

スタートアップに求められるのは、変化への適応力と柔軟性だ。大企業出身者にとって、これまでの成功体験を一旦リセットし、新しい価値観を受け入れることが成功のカギとなる。

中高年転職市場の未来

スタートアップが成長を続ける中で、経験豊富な中高年が果たす役割は今後ますます重要になるだろう。スタートアップにとっては、スケールアップを支えるために、専門知識や人脈を持つ人材の確保が不可欠だ。一方、中高年にとっても、自分のキャリアを再定義し、新しい挑戦に取り組む絶好の機会となる。

労働市場全体で見ると、日本は労働移動が少なく、従業員の平均勤続年数は12.3年と米国の3倍に達する。この長期間の勤続が安定をもたらす一方で、キャリアの柔軟性を妨げる要因にもなっている。スタートアップと大企業の間で労働移動が活発になることは、労働市場全体の活性化につながる。

スタートアップと中高年のマッチングを円滑に進めるには、仕組みの整備が必要だ。退職金制度や税制が、労働移動を妨げない形に見直されるべきである。また、スタートアップで働くことのリスクを減らすための支援策、例えば社会保険の適用拡大やスキルアップ支援も求められる。

スタートアップと中高年の労働市場は、新たな可能性を広げている。両者のマッチングには課題もあるが、これは日本の労働市場の構造を進化させるチャンスでもある。これまでの経験を活かし、新しい挑戦に取り組む中高年の背中を押す仕組みづくりが進めば、スタートアップだけでなく日本経済全体の成長をもたらすだろう。


いいなと思ったら応援しよう!