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見えてきた「地殻変動」と、新たなビジネスチャンス

米中対立の激化や新型コロナウイルスに伴う「地殻変動」に伴って、ビジネス環境の大きな変化が、ここに来て明確になってきたように感じている。

まず、米中対立によって、アメリカが通信機器など軍事的に重要な産業分野について中国企業の排除に動いていることから、その隙間を誰が埋めるかという競争が起き始めている。

ファーウェイ(Huawei)の主力事業の一つである携帯電話端末や基地局については、現在開催されているバルセロナのMWCにファーウェイは出展はしているものの、ビジネスの見通しは必ずしも明るくないようだ。代わりに、サムスンやエリクソンがその隙間を狙ってビジネスを拡大すべく動いている、とこの記事は報じている。

こうした状況を受けてか、 NEC はアメリカの会社と合弁でドイツテレコムの基地局システムの受注に成功している。ファーウェイの影響の有無は記事からは不明ではあるが、こうした環境が少なくてもプラスに作用していることは間違いがないだろう。

一方でアメリカではなかなかビジネスのチャンスを掴みにくいファーウェイは、フランスで開催された先日のVIVA Technologyにおいて、コロナの影響で海外企業の出展が難しくなっている中でもブースを構え、存在感をアピールするなど、アメリカの影響の及ばないところでのビジネスチャンスを模索しているように見える。

中国関連でもう一つ印象的なことは、中国が香港を名実ともに「本土化」していく中で、新しいビジネスチャンスが生まれていることだ。

香港が中国本土化することで金融センターとしての機能が行き場を探すなか、東京証券取引所がその一つとなり得る動きが出てきた。JDR という、海外の会社の株式を日本株とみなす仕組みを使って、東証に上場する海外企業が久しぶりに出てきたというニュースがある。


これまでアジアの金融センターといえば、香港かシンガポールというのが相場であったが、ここに来て日本にもそのチャンスが訪れているとみるべきだろう。

香港については、ここ数年、民主勢力と中国本土・北京政府との攻防が続いてきたが、ここにきて民主勢力はその劣勢が明白となり、とどめを刺したのは先日「蘋果日報(アップル・デイリー)」の関係者が拘束され、発行停止に追い込まれたことであろう。

中国がこうした動きに出れば、香港がこれまで世界経済の中で占めてきたポジションを失うことは北京政府もわかっているはずだ。そうであれば、香港が自由経済圏の金融センターとしての地位を失うことを中国は容認してるということであり、これまでの香港の金融を中心としたビジネスは今後継続が難しくなる一方で、その市場の隙間をどこが獲得できるのか、獲得競争がこれから起きる、すでに起きているのだと思って間違いがないだろう。これも米中の対立激化の影響の表れのひとつと考えられる。


また新型コロナウイルスとその影響に関しては、アメリカのユナイテッド航空が精力的な設備投資に動いているのが印象的だ。音速旅客機の導入を発表しただけでなく、大量の小型機を発注している。

この設備投資計画が吉と出るか凶と出るかについてはまだわからないが、仮に今後航空需要が順調に回復した場合、ユナイテッド航空としては小型機の需要が増えると踏んで、その発注が他社から航空機メーカー入る前に自社が発注して、優先的に最新機材を確保出来るように動いたと考えられる。

また、アメリカン航空も、スタートアップが開発した電動航空機に、350機もの大量の発注計画を明らかにした。

このアメリカンの電動航空機も、ユナイテッドの超音速旅客機も、いずれもスタートアップが開発していることも、注目に値する。

こうした航空会社の動きは、当然のことながら旅行業界全体に影響が波及することになるだろう。小型機のフライトが多くなるということは、一機あたりの輸送人員が少なくなるので、団体客をベースとした旅行ビジネスは様変わりするのだろう。国内航空会社も、大型機の早期退役を進めている。

その時にホテル業界や旅行会社、観光地がどのように動くのか。ここでも失われるビジネスと新たに生まれるビジネスが考えられる。

新型コロナウイルスについては、まだこの先の予断は許さないが、ワクチンが一定の成果をあげ、その効力も考えられていたより長く持続する可能性が出てきている中で、今後のビジネスの方向性を見定め、回復後の経済に賭ける動きが出てきている。


またバイデン大統領就任後一定期間が経過し、アメリカの対中姿勢に大きな変化がなく、今後バイデン政権が4年は続くことを考えると、米中関係について今の方針が大きく変わることはない、とみて各社が動き出していると考えられる。

スタートアップや中小企業にとっても、今後のビジネスの方向性をどのように定めていくかが重要な局面に来ており、その判断のいかんによって、ビジネスが大きく伸びもすれば厳しくなる可能性もある。

どうしても対立しているアメリカと中国に目が行きがちだが、両国だけを見るのではなく、米中以外の各国や地域が両国に挟まれながらどのように動こうとしているのかをしっかりと見定めて、日本が次のビジネスのチャンスを獲得することを考えるべき時が来ている。



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