景気予測調査から見た24年度決算見通し
大企業の景況判断指数(BSI)、3期連続プラス 10〜12月 - 日本経済新聞
●売上高・経常利益とも計画上方修正
12月11日に公表された2024年10-12月期法人企業景気予測調査は、今年11月下旬にかけて資本金1千万円以上の法人企業に対して行った景気予測調査であり、今期の業種別企業業績計画を予想するための先行指標として注目される。
そこで以下では、来年1月下旬からの四半期決算発表で、今年度の企業業績計画の上方修正が見込まれる業種を予想してみたい。
下図は、法人企業景気予測調査の調査対象企業の各調査時期における、売上高と経常利益計画の今年度見通しの前回からの修正度合いを見たものである。まず売上高を見ると、製造業が下方修正の一方で非製造業の増収率が上方修正となっている。
一方の経常利益は、製造業・非製造業とも上方修正となっているが、予想以上のインバウンド消費の拡大などもあってか、非製造業を中心に全産業ベースでは増益計画に修正されている。このことから、1月下旬からの四半期決算発表では、非製造業を中心に今年度利益計画の上方修正が期待される。
●「不動産」「木材・木製品」「学術研究、専門・技術サービス」で増収率上方修正
以下では、1月下旬からの四半期決算で、今期売上高計画で上方修正が予想される業種を見通してみたい。下表は業種別売上高計画を前年比と前回調査からの修正率で比較したものである。
結果を見ると、24年度は多くの業種で増収計画となっているものの、前回から下方修正となっている業種が目立つ。こうした中で、前年比の上方修正率が高い業種は「不動産」「木材・木製品」「学術研究、専門・美術サービス」「生活関連サービス」「建設」となっている。
「不動産」については、都市部を中心に不動産価格が値上がりしていることが反映されていると推察される。また「木材・木製品」や「建設」については、輸入原材料の高止まりや円安進行が進んだことで、価格転嫁の動きが進展している可能性が推察される。一方、旅行業が含まれる「生活関連サービス」については、夏場にかけて想定以上の旅行やインバウンド需要が拡大した影響が大きいことが推察される。
なお「学術研究、専門・技術サービス」については詳細は不明も、①学術的研究,試験,開発研究などを行う事業所や、②法律,財務及び会計などに関する事務や相談,デザイン,文芸・芸術作品の創作,経営戦略など専門的な知識サービスを提供する事業所、③依頼人のために,広告に係る総合的なサービスを提供する事業所、④獣医学的サービス,土木建築に関する設計や相談のサービス,商品検査,計量証明,写真制作などの専門的な技術サービスを提供する事業所が含まれることから、こうした事業所で価格転嫁が進んだことが推察される。
●「その他の輸送用機器」「娯楽」「学術研究、専門・技術サービス」等が増益率大幅上方修正
続いて、経常利益計画から増益率の上方修正が期待される業種を見通してみよう。結果を見ると、製造業を中心に多くの業種で減益計画となっており、これは円安や人件費高等に伴うコスト増が主因と推察される。こうした中、増益率の上方修正が目立つ業種は「その他の輸送用機械」「娯楽」「学術研究、専門・技術サービス」「鉄鋼」「情報通信機械」等であり、いずれも10%を上回る上方修正率となっている。
中でも「その他の輸送機械」については、代表的な輸出・防衛関連業種である。このため、この3か月間で想定以上に円安が進んだことで利益が上振れしたことに加えて、防衛費増額に伴う需要見通しが上方修正された可能性も推察される。
一方、「娯楽」では、売り上げ計画が上方修正された「生活関連サービス」と同様に、夏場にかけての旅行需要やインバウンド消費の拡大効果等が寄与しているものと思われる。また「学術研究、専門・技術サービス」は売上高計画の上方修正が素直に反映されている。
他方、「鉄鋼」も減益計画ながら減益幅が大幅に縮小している。こちらは売上高計画が逆に下方修正されているため、経営の構造改革やリストラ効果が反映された可能性が推察される。
また、「情報通信機械」についても、増益計画ながら売上高計画は下方修正されているため、何かしらの構造改革やリストラ効果で経常利益計画が大幅上方修正されている可能性が高い。
なお、日銀が来週公表する12月短観の業種別収益計画(大企業)は法人企業景気予測調査に比べて聞き取りのタイミングが若干遅いことから、直近の為替や国際情勢などの影響をより織り込んでいる可能性が高い。このため、12月短観における大企業の収益計画も四半期決算と今期業績見通しを読み解く手がかりとして注目したい。