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ラグビー日本代表を支えたSPORTSTECHの可能性

スポーツとテクノロジーの組み合わせが急激に進み始めています。資金面でも市場規模でもトライアルの数と歴史でも、出遅れていた感のある日本ですが、ここに来てドライブがかかってきました。今回は、スポーツ領域でのカンブリア爆発の可能性を見ていきたいと思います。

"ONE TEAM"を支えたONE TAP

カンブリアナイト初回の最初の登壇者は、スポーツとテクノロジーで日本のスポーツ界に変革を起こしてきた株式会社ユーフォリアの共同代表の橋口寛さんでした。同社は、2019年12月12日にシリーズBラウンドの資金調達を実施し、ますます目が離せないベンチャーのひとつです。

この初回カンブリアナイト の際には、ラグビーワールドカップ2015における日本代表の南アフリカ戦での劇的勝利まで、エディー・ジョーンズ体制のもと三年間、選手のフィットネスデータマネジメントシステムを構築運用してきた実績から、カンブリアサイクルの重要度を話していただきました。

主観による体調と、客観的数値による体調。このふたつが乖離すると、気持ちに体がついていかずに怪我を負う可能性が高まる。 主観と客観のデータをどのように集めていけるのか。ユーフォリアのONE TAP SPORTSと連携できるセンサーについて熱く語っていただきました。

これが、もう4年ほど前。この頃に連携できていたセンサーは、今まさに日本スポーツ界の最先端を見つめています。その後も、カンブリアナイト沖縄では、ユーフォリアの共同代表の宮田誠さんに、カンブリアサイクルそのものがスポーツデータマネジメントに合致する考え方であるとのお話をいただきました。

スポーツ現場における安全性

スポーツする上で安全面を考慮することは当然と言われながらも、実際の現場で十分な対応準備ができているとは言い難い状況があります。NPO法人スポーツセーフティージャパン代表理事の佐保豊さんによれば、スポーツ時の死因には、3Hと呼ばれるものがあるそうです。Heart, Head, Heat。つまり、心臓疾患などによる突然死、脳振盪をはじめとする頭部への外傷、熱中症など体温調整機能の破綻など。

スポーツ現場の指導者に、これらの対処方法が正しく伝えられていないという事実。そのために、教育、道具、体制など、様々な面で改善が必要とされています。
今回のラグビーワールドカップ2019では、スポーツセーフティージャパンが開発した、怪我をした選手の搬送に使われる専用ゴルフカートが実際に競技場に導入されていました。

ヘルスウェアという介入ツール

スポーツ選手の怪我予防とパフォーマンス向上に、実は介護領域で効果を発揮しているヘルスウェアがありそうだと、ずっと思っていました。

当時大阪大学にいた山下和彦さんは、外反扁平足の弊害と介入について語ってくれました。その解決策のひとつとして、新潟の靴下会社である株式会社山忠のヘルスウェアがあります。足裏の圧力を適切な形に補正してくれる靴下です。山忠の白倉重樹さんは、足裏の圧力測定を活用したマーケティングについてカンブリアナイトで語ってくれたことがあります。そこで知り合った株式会社ベネッセスタイルケアの原田さんと白倉さんは、三年間かけてコラボレーションを実現。介護現場との連携、新たな介入手段としての靴下が生み出されました。

今年の夏に立ち上げた一般社団法人ライフロングウォーキング推進機構のビジョンは、OFF LIMIT。心も体も社会的にも、制約なく何処へでも行ける、というものです。これは、個々人の願いと社会の要請が合致するもののひとつです。この一般社団法人ライフロングウォーキング推進機構は、山下さん、白倉さん、僕というカンブリアナイトの出会いから生まれたものでもあります。

スポーツ領域でも、こうしたコラボレーションが生み出したいと考えています。じつは、多くのスポーツ選手が、足回りに大きなリスクを抱えているのだそうです。骨格の定まらない子供の頃から、特定の競技に特化した専門シューズを長期着用することによる、骨形成への影響。浮き指の状況。それらによる、足のグリップ力の低下など。これらを、骨格計測、足指筋力測定、足裏圧力測定と共に、靴下というヘルスウェアによる介入が可能かそうです。秒単位、ミリ単位で競い合う日本代表選手を足元から支えることができるかもしれないのです。

休息とパフォーマンス

スポーツ選手のパフォーマンス向上ということであれば、休息の重要性も忘れてはならないものです。先のユーフォリアの橋口さん宮田さんが、試合当日に調子のピークを迎えられるように体調をマネジメントすることが大切なのだ、と言っていました。どんなに理想の筋力をつけたとしても、試合当日にパフォーマンスを最大限に発揮できなければ意味はない。この「ピーキング」のコントロールが、トレーニングと連動して、とても大切なのだそうです。

江崎グリコのパワープロダクションは(渡邉圭祐さん、藤本由香子さん)、サプリメントでの、休息とパフォーマンスの関係性をデータ分析し、その効果検証をみえるわかる化することで、スポーツのパフォーマンス最大化に貢献することを目指しています。仕事でも同じですね。どんなに能力が高い人でも、寝不足続きで疲労困憊では、その力を発揮できません。休息は仕方がなくとるものではなく、鍛えることと同じくらい積極的にとるべき、とはよく言われますが、その効果を定量的に把握できるようになると、働き方改革という文脈でも、大きな価値を生み出せるかもしれません。


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