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戦略なきコミュニティマーケティングはなぜ失敗する?7つの落とし穴から学ぶ成功法則
最近、今後のマーケティング手法や新たなビジネス戦略としてコミュニティマーケティングが注目されています。顧客やユーザー同士の繋がりを重視し、コミュニティを形成・活性化させることで、ブランドロイヤリティ向上、顧客獲得・維持、さらには製品開発へのフィードバック活用など、多岐にわたる効果が期待できます。
しかし、コミュニティマーケティングの導入を急いでしまい、戦略的な計画や準備を怠ると、期待した成果を得られないばかりか、逆効果となるリスクもあります。
コミュニティマーケティングは、ブランドを広め、潜在顧客と繋がる上で非常に効果的な戦略であり、その成功事例やソリューションに関する情報を目にする機会は増えています。弊社も先日コミュニティマーケティングに関するソリューションの提供を開始し、その記事が掲載されました。
その一方で、多くの企業がコミュニティマーケティング戦略を実行する際に、失敗をすることも多々ありますが、そうした情報を目にする機会は多くありません。
今回は、コミュニティマーケティングで避けるべき7つの落とし穴について、海外の記事の翻訳を中心にご紹介したいと思います。
【落とし穴1】 計画なき船出:戦略なきコミュニティ構築の危険性
コミュニティ醸成は、単に人が集まる場を作れば良いというものではありません。ビジネス目標と紐づいた明確な戦略、そして、コミュニティメンバーに提供する価値を定義することが不可欠です。そのためには下記のポイントに気をつけましょう。
1. ビジネスにとっての価値を明確化する
コミュニティを通じて、どのようなビジネス課題を解決したいのかを考える必要があります。
(具体例)顧客サポートの負荷軽減(問い合わせ件数削減)
マーケティングコストの削減
顧客体験の向上による解約率の低下
新規顧客獲得
製品・サービスへのフィードバック収集
上記課題を解決するために、コミュニティがどのように貢献できるのかを考え、具体的な目標設定(KPI/OKR)をしましょう。
例:カスタマーサポートへの問い合わせ件数を〇%削減する
例:コミュニティ経由での製品購入率を〇%向上させる
2. コミュニティメンバーにとっての価値を定義する
顧客・ユーザーは、どのような課題やニーズを抱えているのか、ユーザーペルソナの作成をしましょう。
コミュニティは、それらの課題やニーズをどのように解決できるのかを考えましょう。
(例)情報交換、相互支援の場
限定コンテンツ、イベントへのアクセス
ネットワーキングの機会
製品・サービスに関する直接的なフィードバックの機会
競合他社のコミュニティとの差別化要素は何かを考えましょう。
3. コミュニティの目的を明確化する
下記のようなコミュニティを醸成する目的や意義をまず考えましょう。
なぜこのコミュニティを構築するのか?(バリュープロポジション)
業界や市場において、どのような役割を果たすのか?
競合との比較における優位性は?
これらの要素を明確にすることで、ステークホルダー(経営層、関連部署など)からの理解と協力を得やすくなり、コミュニティ構築・運営に必要なリソース(予算、人材)の確保にも繋がります。
【落とし穴2】 コミュニティのサイロ化:全社的な連携の重要性
コミュニティは、特定の部署だけでx運営するものではなく、全社的な連携が不可欠です。各部署がコミュニティから得られる価値を理解し、積極的に活用することで、ビジネス全体の成長を加速させることができます。各部門ごとに提供される価値の例は下記の通りです。
カスタマーサポート:
コミュニティ内でのユーザー同士の質疑応答、FAQの充実 → 問い合わせ件数削減
顧客の生の声の収集 → サービス改善、顧客満足度向上
営業:
既存顧客との関係強化 → アップセル・クロスセルの機会創出
コミュニティ内での潜在顧客の発掘
製品開発:
ユーザーからの直接的なフィードバック収集 → 製品改善、新機能開発
ユーザーテスト、アンケートの実施
マーケティング:
ブランドロイヤリティの高い顧客層の育成 → 口コミ、UGC(User Generated Content)促進
コミュニティ限定のキャンペーン、イベントの実施
コミュニティを「全社的な資産」と捉え、各部署が積極的に関与する体制を構築することが重要です。
【落とし穴3】 過剰な売り込み:価値提供とのバランス
コミュニティは、製品・サービスを販売する場であると同時に、顧客に価値を提供する場でもあります。過度な売り込みは、コミュニティメンバーの離脱を招き、エンゲージメントを低下させる可能性があります。気を付けるポイントは下記の通りです。
価値提供を最優先する:
有益な情報、ノウハウの共有
メンバー同士の交流促進
無料コンテンツ、イベントの提供
売り込みは控えめに、適切なタイミングで:
コミュニティの目的に沿った製品・サービスの紹介
メンバーのニーズに合わせた情報提供
透明性を確保する:
広告、プロモーションであることを明確にする
ステルスマーケティングは避ける
コミュニティメンバーとの信頼関係を構築し、長期的な関係を築くことが重要です。
【落とし穴4】 独創性の欠如:競合との差別化
多くの企業がコミュニティマーケティングに取り組む中で、自社のコミュニティが競合他社とどのように異なるのかを明確にする必要があります。そのために下記のようなアクションが考えられます。
競合調査の実施:
競合他社のコミュニティの活動内容、提供価値を分析する
自社の強み・弱みを把握する
独自の価値提案の策定:
ターゲット顧客のニーズに合わせた独自のコンテンツ、イベントを提供
他にはないコミュニティ体験を設計する
ユーザーペルソナの明確化:
どのような顧客層をターゲットとするのか?
彼らのニーズ、課題は何か?
明確な差別化戦略を持つことで、コミュニティの存在意義を高め、メンバーの参加意欲を向上させることができます。
【落とし穴5】 リソース不足:適切な投資の重要性
コミュニティの成功には、適切なリソース(人材、予算、ツール)の投資が不可欠です。そのために考えるべきことは下記の通りです。
コミュニティマネージャーの配置:
専任のコミュニティマネージャーを配置する(兼任は避ける)
コミュニティマネジメントのスキル、経験を持つ人材を採用する
プラットフォームの選定:
コミュニティの目的に合ったプラットフォームを選択する
無料プラットフォームのデメリット(広告表示、データ所有権、機能制限など)を理解する
有料プラットフォームの導入を検討する(予算確保)
コミュニティ運営に必要なツールの導入:
分析ツール、コミュニケーションツール、イベント管理ツールなど
コミュニティを「投資」と捉え、長期的な視点でリソースを配分することが重要です。
【落とし穴6】 モデレーションの過不足:適切なコミュニティ運営
コミュニティの健全な運営には、適切なモデレーション(監視、管理)が不可欠です。そのために下記のアクションが必要となってきます。
コミュニティガイドラインの策定:
明確なルール、禁止事項を定める
メンバーへの周知、同意を得る
モデレーターの配置:
コミュニティマネージャーが兼任、または専任のモデレーターを配置する
モデレーションのトレーニングを実施する
違反行為への対応:
迅速かつ公平な対応
警告、投稿削除、アカウント停止などの措置
メンバーからのフィードバックの収集:
ガイドライン、モデレーションに関する意見を収集する
必要に応じて改善を行う
モデレーションは、コミュニティの秩序を維持し、メンバーが安心して参加できる環境を作るために不可欠です。
【落とし穴7】 成長偏重:価値提供とのバランス
コミュニティの規模拡大(メンバー数増加)は重要ですが、それ以上に、メンバーに価値を提供し、エンゲージメントを高めることが重要です。そのために必要な考えは下記の通りです。
価値提供を最優先する:
メンバーのニーズに合わせたコンテンツ、イベントを提供する
メンバー同士の交流を促進する
エンゲージメントを重視する:
アクティブなメンバーの割合、投稿数、コメント数などを指標とする
エンゲージメントを高めるための施策を実施する
長期的な視点を持つ:
短期的な成果にとらわれず、コミュニティの価値を育てる
メンバーとの信頼関係を構築する
コミュニティの成長は、価値提供の結果として自然に生まれるものです。
まとめ
コミュニティマーケティングは、ビジネスに大きな変革をもたらす可能性を秘めています。しかし、戦略なき導入や、よくある落とし穴にはまることで、その効果を十分に発揮できないばかりか、逆効果となるリスクもあります。
今回ご紹介した7つの落とし穴を回避し、
明確な戦略と目標設定
全社的な連携
価値提供と売り込みのバランス
競合との差別化
適切なリソース投資
適切なモデレーション
価値提供を重視した成長
を心がけることで、成功確率を高めることができます。
コミュニティは、企業と顧客、そして顧客同士を繋ぐ、強力なアプローチとなります。その力を最大限に活用し、皆さまのビジネスの成長を加速させましょう。
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