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リモートワークできる環境があるのに、それでも明日は出社しますか?

首相は「緊急事態を1カ月で終えるためにはもう一段の国民の協力が不可欠だ」と述べた。「通勤者の減少が十分でない面がある」と指摘し、オフィスでの仕事は原則自宅でするよう求めた。「どうしても必要な場合でも出勤者を最低7割は減らす」と訴えた。


「働く環境」は驚くほど変化していない

ほんの1か月前まで「東京ですらリモートワークが浸透していないのに、地方でなんか無理だ」なんて考えていましたが、防疫の観点で「出来る・出来ないの問題ではなく、やらないと命に関わる事態」に変わりました。

現在、私の勤めるJX通信社では完全フルリモートワークにて稼働しており、普段の業務はSlack+Zoomで回しております。最初は戸惑いを抱きましたが1週間ほどで慣れてきました。「こういう働き方も良い」と感じています。

とりあえず、私の中で良い感じの部屋着ニーズ(ビジネスカジュアルはしんどい)が爆増しております。なんとかして、ユニクロさ〜ん。


さて、では世間はリモートワークに移行できているのでしょうか。

国土交通省が2020年3月に発表した平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査によれば、調査期間(3月)から遡って1か月の間に、感染症対策の一環としてリモートワークを実施した人は12.6%でした。

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【調査設計について】
実施日は20年3月9日(月)~3月10日(火)。テレワーク人口実態調査の回答者のうち、雇用型就業者35,807人に配布し、4,532人サンプルを回収。うち297人が自営業・自由業・収入ある仕事に就いていない。

3月9日と言えば、まだ全世界の感染者数が今ほど増えておらず、今ほど悲壮感あふれる状態ではありませんでした。ちなみに当時はイベント自粛するか否かでギャーギャー揉めてました。懐かしい。今では外出自粛ですよ。

あれから1か月、世界は大きく変化してリモートワーク導入を始めた企業も大勢いるはずです。しかし、それが安倍首相が求めるような70%まで到達するとは、とても思えません。

そもそも、企業規模別で見てもリモークワークの「準備」をしていた企業は少ないのです。先ほどの平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査から「企業規模別テレワーク制度等の導入割合」を引用します。

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大半の企業が「認めていない」「わからない」。言い方を変えると、社内で準備が整っていないのです。ちなみに、もともとやっていなかったけど今回を機に始めたと回答した人は、たったの5.2%でした。

しかも、制度等がある会社に勤めている人が20%強いるのに、「実施したが出来なかった」と回答のあった割合が15%もあるのです。「制度(側)だけ作った」んでしょう。

実際、個人のネットワーク回線が遅くて会話にならない、VPNにアクセスが集中して接続できない、セキュリティが厳しくてログインできないなんて問題を多く聞きます。

「認めていない・わからない」多くの会社が、これからリモートワークに移行するとして、IT・情報セキュリティの観点から「今まで通り仕事ができない」と悲鳴をあげるのが目に見えています。

NTTさんは「ICTる?」とか言ってる場合じゃなかったんだな。

一方で、リモートワークに向かない職業も中にはあります。先ほどの平成31年度(令和元年度)テレワーク人口実態調査から「業種別テレワーカーの割合」を引用します。

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IT系はともかくとして、対人サービスを伴う業種は、相対的に低い。こちらも新型コロナウイルスの蔓延に伴い、防疫の観点で相対的に上昇しているでしょうが、2倍3倍にはなっていないと想像します。

都道府県からの自粛要請は、人が集まりクラスターとなる可能性を抑えるのが主眼だと思いますが、関連して「従業員が感染しないようにする」のも考えているでしょう。

どうしてもリモートワークに向かない場合は仕方がありません。各事業所の案内に従って、感染症対策を実施した上で、業務に就いていただき、それに私のようなリモートワーカーは本当に頭を垂れて感謝する他ありません。

だからこそ、リモートワークできる環境がある人は、出社せず、お家で仕事をした方が良いと考えています。

その他にも、LINEと厚生労働省による第1回「新型コロナ対策のための全国調査」が先だって行われ、その結果が公表されています。なんと「仕事はテレワークにしている」と回答された方がわずか5.6%だったそうです。
ただし、これはn=2409万7701人の中に、未成年・高齢者・主婦などの非労働力人口が含まれているからだと考えます。従って、参考程度にしか見れません。


「思っている以上に感染者はいる」とマインドを変える

LINEと厚生労働省による第1回「新型コロナ対策のための全国調査」の結果が公表され、注目を集めました。私もデータを触りましたが、思っている以上に「地方がやばいのではないか」と考えを改めました。

調査では「37.5度以上の発熱が4日間以上続いている人」=「発熱者」と定義した上で、各都道府県別の回答者中何人いるかを集計しています。

この結果と、4月12日10時30分時点での各都道府県別の人口比感染者割合感染者数÷2018年10月人口推計【都道府県別人口】)を散布図で描画してみました。

感染者数はJX通信社にて適時集計し、公開しています。宜しければ、ご参照ください。

【図を見る上での注意事項】
⒈調査はLINEユーザーのみを対象としているので、回答者に偏りが考えられます。特に「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によれば、60代のLINEユーザー率は52.8%で、高齢になるほど下がると思われます。
⒉重症者は回答出来ないでしょうし、感染症予防の意識が高い人ほど回答する傾向にあると思われます。
⒊回答者における発熱(37.5度以上)の割合に過ぎません。それがすなわち新型コロナウイルスの発症を表していません。
⒋回答者の全員が、真面目に回答している保証はありません。

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横軸はLINE×厚生労働省による「発熱者割合」、縦軸は自治体から発表された感染者数を人口で割った「感染者数人口比」です。傾向を見るために回帰直線を引きました。

ちなみに感染者数が1名以上10人以下の香川県、鹿児島県、鳥取県、島根県、徳島県は除外しています。

こうして見ると、東京都や大阪府は感染者数人口比で見ると十分に高いし、その傾向を示す通り発熱者割合も高い。

一方で、福井県や石川県は感染者数人口比で見ると十分に高いですが、発熱者割合は低い。LINEが浸透していないかもしれません。

福井県や石川県を基準に考えてしまうと、他の45都道府県は「出なさ過ぎ」となってしまうので、12日時点では「被害が広がり過ぎている」と解釈した方が良いのでしょう。

先ほど紹介した「新型コロナウイルス 日本国内の最新感染状況マップ・感染者数」ではアプリをDLすると、感染事例が報告された場所の情報を取得できます。福井県、石川県を見ると、10数名規模のクラスター報告事例は見当たりませんでした。

さらに、北海道や沖縄は感染者数人口比で見ると真ん中ぐらいですが、発熱者割合は高い。検査しきれていない人たちが、大勢いるのかもしれません。

さて、そこで東京都、大阪府、北海道、沖縄県、福井県、石川県を除いて、もう1度見てみましょう。

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発熱者割合は収集に偏りが考えられる前提に立つとして、発症者割合が同じ0.100%の岡山県や青森県、福島県が、高知県や京都府と相対的に比較して「感染者数人口比」が低いのは、実際に発症者が少ないからか、別の風邪が流行っているのか、サンプリングの偏りの問題か、デタラメな回答が多いからか。どう考えれば良いでしょうか。

最悪のケースで考えると、すでに感染が拡大しているけど、本人に自覚症状が現れていないか、検査に時間が掛かっているかで捉えた方が良いかもしれません。

感染者数が2倍にかかる期間をNewsDigestではグラフにしていて、上位の県は軒並み地方です。これから首都圏・関西圏での自粛要請が地方に波及するとなると、けっこうゾッとします。

繰り返しますが、だからこそ、リモートワークが可能な人たちは、リモートワークに徹した方が良いと思う次第です。


リモートワークの環境が整っているのに出社する理由

リモートワークの環境が整っているのに、出社する理由って何でしょうか。

もしかして、自分は感染しない、自分は大丈夫と思っていませんか。それは正常性バイアスと言って、意思決定・思考の歪みが生じています。

■正常性バイアス(Normalcy bias)
なんらかの被害が予想される状況に陥っても、正常な日常生活の枠組みの中で解釈してしまい、事実を認めず都合の悪い情報を無視する傾向。
自分の持っている知識にしがみついて「まだ大丈夫」だとリスクを過小評価してしまいがち。

全 国 で 状 況 は 悪 化 し て い ま す 。

文字がソーシャルディスタンスを保たないといけないぐらい、状況が改善している場所は無いんです。もし、出社したい人が「大丈夫だ」と思うなら、その根拠を示してから出社をして下さい。

東日本大震災が発生した日、私は関西に暮らしていたので東京の空気感が分かりませんでしたが、少なくとも「津波に飲み込まれる市街地」「爆発する原子炉」を見て「これはやばい」と感じました。

地震直後、街中に残られいた方の多くは津波に巻き込まれました。

今、この状況は「津波てんでんこ」なんです。

あなた(責任者)が家に逃げれば周り(部下)を守れる。

あなた(家長)が家に逃げれば周り(家族)を守れる。

あなた(住民)が家に逃げれば周り(他の住民)を守れる。

あなたからリモートワークを始めるべきです。

それでも、なんとなくリモートワークに躊躇いを覚える人もいるでしょう。もしかしたら現状維持バイアスにかかっているのではないでしょうか。

■現状維持バイアス(Status quo bias)
得られる「リターン」よりも、失う「リスク」に過剰に反応して変化を望まない傾向。現状を抜け出して新しい状態に移る場合、コストだけでなくリスクがある。であれば「現状」のままが良いだろうと意思決定を下すようになる。変化した後の先が見えない怖さがあるのでしょう。

今までと大きく変化して、会社に行かず在宅で過ごすのは大きなリスクも伴います。たとえ出社する人が減ったとしても、今までと同じ行動を取っていた方が安心できますよね。

こう考えてください。

⒈今まで通り出社して、あなただけでなく家族が感染するリスクを負う
⒉リモートワークに切り替えて仕事の進め方が変化するリスクを負う

どちらのリスクが許容できるでしょうか。

もっとも身近なクラスターは家(世帯、家族)だと言われています。4月11日には、10日に感染が判明した40代パート女性の子供2名が感染したと明らかになりました。

他にも、感染者の濃厚接触に当たる家族も合わせて感染していた事例は多く出ています。

感染者人口比で考えて自分の住む都道府県では0.005%だから「いや、自分は大丈夫でしょ。その確率なら宝くじ当たって欲しい」と考えているなら大きな間違いです。あなたが感染したら、かなり高い確率で周囲が感染するのです。そのリスクを考えたことはありますか?

我が家は家族会議を開いて、これを理由に完全リモートワークへの移行を決断しました。

改めて考えたい。リモートワークできる環境があるのに、それでも明日は出社しますか?

そして、そうした環境が無いのなら、早急に早急に早急に整えましょう。

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松本健太郎
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