企業の1stプロダクトは組織である 〜複業時代の組織マネジメント
© comemo992439091
第一顧客は「従業員」
顧客視点を掲げる企業が、従業員をモノや駒のように使うのはなぜだろう?
好業績で地方銀行のトップランナーと思われていたスルガ銀行のブラック体質がニュースになりました。
http://news.livedoor.com/article/detail/15275311/
「企業とは結局「人」だ。」そう、多くの経営者が言います。
しかしその一方で、「働き方改革」を言われつつつも、非「人」的な扱いをするケースはまだまだ多い。
こういったことは「ハラスメント」という意味で倫理的にも問題ですが、経営の視点からみてもやはり悪手で、そういう企業はいずれ失敗する、と僕は思っています。
「顧客視点」「顧客第一主義」という言葉を聞いたことがあると思います。
企業は、事業やサービスを通じて価値を届け、その対価を得ます。
「顧客視点」は「提供者視点」の対義語であり、その視点がない企業からは顧客が離れ、事業が継続できなくなるよ、という考え方です。
あまりフォーカスされませんが、実は同じことはそこで働く「従業員」にも言えるのです。
(ここでいう「従業員」には正社員だけでなく非正規雇用や業務委託など、様々な働き方を含みます)
© comemo992439091
企業は、従業員が発揮する価値を組み合わせ、活用し、ユーザーに価値を届けます。そしてその対価として給料、代金という形でお金を交換します。
そういう意味では、従業員こそが「価値の源泉」であり、企業は従業員とユーザーとのためのプラットフォームに過ぎない、ということもできます。
僕は、ランサーズという会社でも働いています。
ランサーズというのは、「クラウドソーシング」といって、インターネット上で企業と(複業なども含む広義の)フリーランスのお仕事マッチングをするサービスです。ランサーズ上では企業からの仕事の依頼を、たくさんのフリーランスの方々(「ランサーさん」と呼んでいます)が解決しています。
上図に当てはめると、左側がランサーさんで、右側がクライアント企業ということになります。
そしてランサーズは真ん中のプラットフォームとして、日々、クライアント企業だけでなく、むしろランサーさんのことを第一に考えて、ご要望にお答えし、少しでもフリーランスの方が働きやすい環境となるように知恵を絞り、サポートを整備しています。
https://japan.cnet.com/article/35124637/
なぜか?
それはランサーさんこそがランサーズが提供する価値の源泉だからです。いくらプラットフォームがあっても、ランサーさんがいなければランサーズの価値はゼロなのです。
同じように企業は従業員を第一顧客として考える必要があるのではないでしょうか?
「顧客視点」をいうなら、従業員を顧客として捉える視点がない企業からは従業員が離れ、事業が継続できない、ということになります。(ランサーさんに冒頭のスルガ銀行のような圧迫をしてランサーさんがいなくなってしまったら、ランサーズはお仕事プラットフォームたり得るでしょうか?)
そしてこれは一度就職したら「逃げ出すことができない」旧来型の終身雇用が崩壊しつつある今、これからますます重要な視点になってくる、とおもうのです。
プロダクトをつくるように組織をつくろう
© comemo992439091
働き方に関して相談を受けた時や登壇した時、「プロダクトをつくるように組織をつくろう」と提案しています。
これは「価値提供のプラットフォーム」として、従業員に対しても価値を最大化できるよう知恵を絞っていこうよ、ということです。
googleなら「世界中の情報を整理する」
Mercariなら「Go Bold」
カヤックなら「つくる人を増やす」
素晴らしい従業員を惹きつけ、業績を伸ばし続けている企業は、ユーザーに約束する価値と従業員向けの価値が一致しています。
情報の力を信じるgoogleは、人事もデータドリブンにやっています。
メルカリは大胆に代表でも育休をとりますし、カヤックは「ぜんいん人事」「月給ランキング ワークショップ」をしたりと、制度自体を従業員がつくっています。
企業をランサーズのようなプラットフォームサービスと同じと考えるとわかりますが、それは従業員という第一顧客向けの、企業の最初のプロダクトなのです。
これがしっかりしていないと、従業員が離れ、価値の源泉を失います。
「プラットフォーム」に大事なのは、プラットフォームを貫き、浸透するコアバリューです。顧客ごとに対応がちがったり、価値がバラバラではいけません。そういうプラットフォームは、ブランド力を築けず、やがて誰もいなくなってしまいます。
世の中にはまだまだ、「顧客視点」といいながら、従業員をないがしろにしている企業が多いように思います。
それは二枚舌のプラットフォームです。
スタートアップこそ新しい働き方をつくろう
さて、弊社は「複業スタートアップ」というちょっと変わったスタートアップをやっています。
http://uni-que-inc.com/blogs/1088/
こういう形をとったのは、女性の感性をもっと活かせる社会にしていきたい、と思ったからです。(単純化のため「女性」というひとくくりにしますが、所謂固定的なジェンダーを指すものではありません)
会社としては女性向けのサービスしかやらないと決めているし、「女性の”したい”を実現する」というミッションには、自社サービスを通じてユーザーがやりたいこと、つくりたいものを実現する、という意味が込められています。
そしてまたこのミッションは、「uni'queの従業員」の「”したい”を実現する」という意味でもあるのです。
だから「全員複業」をやっている。量を働くのがえらい、だと女性より男性が偉いことになってしまうから。
「バンドスタイル」や「フィギュアスケート型」という新しいチームのあり方に取り組んでいるのもそのためです。
「複業スタートアップ」を当初掲げた時には、友人の投資家や起業家にずいぶん反対されました。でも、だからこそやることにしました。
事例がないと変わらないからです。誰かが風穴を空けないと閉塞するからです。
(ただ、実際にやってみると・・・
アドバイスいただいたように、ホントにいばらの道でした(笑)。
時間をどう捻出するか?メンバーのマインドシェアをどうやって維持するか?
知恵を絞ってすこしずつ上手くなってきました。そしてそこには実は、これまでプッシュ通知やコミュニティ運営など、BtoCのサービスをやってきたノウハウが活きています。まさにプロダクトをするように組織を回しているわけです。)
さて、「スタートアップ」は世の中を変える、新しいプロダクトを生み出すことを目指します。
ですが、人事制度は?というと、他の企業を参考にして他と同じような組織づくりをしている企業がまだまだ多いように思います。
とにかくたくさん働こう、というのもその一つです。人事制度や評価制度をつくるときには人事コンサルに言われるままに、どこかにある一般的な制度を模倣するだけだったりします。
もちろん、人事や組織はとても大事なので、失敗したくない、という気持ちはわかります。ですが、外向けには「どこにもないイノベーションを!」といっているのに組織は固定化していたりする。(もっというと、こういう固定化の大ボスが「教育」だとおもっているのですが、それはまたいずれどっかで書きます)
β版やリーンに試しながら組織や制度をつくっていけばいいじゃないか。
世界を変えるプロダクトをつくるなら、スタートアップこそ、その1stプロダクトとして知恵と実験にあふれたどこにもない組織を工夫しながらつくっていこうじゃないか。
そしてそれは「世の中を変えるプロダクト」を約束するスタートアップだからこそできることだし、プロダクトと一致した組織のコアバリューをつくれれば、大企業に負けない素晴らしい人を集めることができるはずです。
スタートアップの皆さん、一緒に新しい働き方を発明していきましょう。
↓9月からKOLとして不定期で投稿しています。興味持っていただけたら他の記事も読んでいただけたら嬉しいです