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クールジャパンの海外進出は終了しています。=ドイツの事例

誇張したタイトルですが、そういう側面もあるんじゃないかなと。ドイツでの「気づき」を今回は振り返ってみます。

日本からアニメやマンガといったコンテンツを海外に!と国内では関連ニュースが増えています。

筆者はドイツ・フランクフルト在住で、現地側としてお手伝いすることがあるのですが、「海外進出」における課題が見えつつあるように感じています。まずは2024年の事例を2点、紹介します。

フランクフルト近郊で開催されたアニメ・マンガファンのイベント「Wie.MAI.KAI」(読み:ヴィーマイカイ、意味:ヴィースバーデンとマインツの会)で、バーチャル空間サービス「VRChat」における日本界隈の事情を紹介するプレゼンが行われました。(プレゼンの様子は以下のNote投稿の後半に詳しくまとめられていますので、よかったら読んでみてください)

「VRChat」は世界中からアクセスできるサービスですが、プレゼンをお手伝いして意外と言葉の壁があることが分かりました。キャラクターやその衣装など、日本のクリエーターが制作したものが、利用できる状態にあるにも関わらず、ただ知られていないだけで「埋もれた」状態になっているようです。プレゼンで、クリエーターやその作品を紹介することで、集まった人に新たな「界隈」を知ってもらうことができたのではと思います。実はそれ以上に、プレゼンの実施ではイベント主催者から事前に告知があったのですが、その告知を見て来たという人もいました。現地で何かしらのアクションを起こす大切さを再認識しました。打てば響くのです。

2点目の事例はアニメ『青のミブロ』です。2024年秋シーズに開始したアニメシリーズですが、ドイツのカッセルで開催されたイベント「アニメフェスティバル・カッセル」で欧州先行上映会が行われました。

このドイツでの上映会は大盛況で、その後、ドイツでも「青のミブロ」の配信はほぼリアルタイム(サイマル配信)で、ドイツ語字幕が付いた状態で行われています。

日本国外におけるアニメのネット配信は好調で2023年は前年比1.5倍の約2500億円だったそうです。

好調なのはよいのですが、懸念もあります。コンテンツの供給過剰に陥ってないかという点です。アニメ専門配信最大手のクランチロールは毎シーズン50本程度の新作を追加し続けています。ネトフリもアマプラ、ディズニーも強力です。アニメを観る環境はドイツでも近年整いました。

ただ、日本のアニメ制作スタジオが自社の作品を観てもらいと思ったとき、期待度が高い超大作でなければ、視聴できるが視聴されない、そんな状況に陥っていそうです。

例えば、アニメ「青のミブロ」のように先行上映会で作品を知ってもらうことで、その後の配信視聴の機会創出につなげるのが大事なのかもしれません。ただし、本作はクランチロールではなく、ドイツではフランスのアニメ専門配信会社ADN(アニメーション・デジタル・ネットワーク)で配信されています。毎シーズンの配信タイトル数が10本程度とクランチロールと比較すると5分の1程度なので、ADNを利用していれば目に付く機会は多く視聴される可能性も高くなります。しかし、利用者の絶対数が少ないという別の課題もあります。いずれにせよ、視聴環境は整っているわけです。

バーチャル空間サービスとアニメ配信サービスというまったく別ジャンルの事例です。共通点があるとするなら、

1)現地での利用環境はすでに整っているが、
2)注目される機会が少ない

という側面があるように筆者は感じました。

タイトルに「海外進出は終了」と書いたのは、まさにこういった理由となります。2025年も日本国外で利用/視聴できるコンテンツはさらに増えるでしょう。ただし、「その他多く」に埋もれてしまわない工夫は今後、さらに重要性を増していくのではと考えています。今回は以上です。皆さんは、どう思いますか?


タイトル画像:
ドイツのアニメ・マンガファンイベント「Wie.MAI.KAI」の入口の様子。(筆者撮影)

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