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外国人労働者の雇用をきっかけに、アンコンシャスバイアスを取り除こう

「外国人労働者」と聞くと、皆さんはどのような印象を受けますか?

「コンビニでバイトしているけどサービスのクオリティが低い」
「出稼ぎできていて地方の工場で住み込みで働き貧しい暮らしをしている」
「犯罪を起こして迷惑をかけがち」

こうしたネガティブなイメージを連想する方も多いのではないでしょうか。これ、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)っていうやつで、実態とは全く異なるんです

外国人労働者については、先日G1サミットで「日本の外国人労働者:コロナ禍での現状共有の上、今後どう受け入れるべきかを議論しよう」というテーマで登壇する機会がありました。(G1@clubhouseという企画で、クラブハウス上で毎晩あれやこれやと議論していたやつです)

G1を機に色々と調べてみたところ、外国人労働者に関する論点については誤解されていることが多いことがわかったので、今日のnoteでは、その実態を正しく認識した上で、外国人労働者を雇用することの日本企業における意義について整理しておこうと思います。

僕自身、誤解していたことも多かったので、きっと何かしらの気づきがあるんじゃないかなと思います。僕の認識不足もあるかもしれないので、ぜひぜひご意見などもいただけると嬉しいです!


外国人労働者の実態を正しく認識する

冒頭で「アンコンシャスバイアスだ」と書きましたが、私自身もそうした一人だったということに、まず気づかされました。

「外国人労働者」と一言で言っても、日本ではいくつかの形態が認められていて、結構違うんですね。

(A)身分に基づく労働者:32%
 在日韓国人など、永住権を持っていて日本人と同様に働く権利がある

(B)資格外活動(留学生アルバイト):22%
 大学生など留学生のアルバイト就労。週に28時間までなどの制限があり、
都内のコンビニや外食などでは多く働いている。

(C)技能実習:23%
 日本の技術を学んで帰国することを前提とした労働者。メーカーの工場などのブルーカラーとして貴重な戦力となっている。

(D)専門的・技術的分野:20%
 エンジニアなど技術者や外資系のExpatなど、主にホワイトカラーの層。

(数字は2019年。このサイトに詳しく推移などあります。↓)

こうしてみると、何かの形態に偏っていることはなくて、いろいろなタイプの外国人労働者がいて、一括りにはできないんですよね。けど、偏って見えていることが多いと思います。

たとえば、僕の経験で言うと、マクドナルドの店舗では留学生アルバイトがたくさん働いていたし、メルカリやSHOWROOMでは専門的・技術的分野としてのエンジニアをたくさん採用しました。
そのため、「外国人労働者」というとなんとなく、お店のアルバイトや、エンジニアをイメージします。逆にいうと、地方の工場で働く方々のイメージがあまりないんですよね。これは僕のアンコンシャスバイアス

けど、人によっては、「家の近くに工場があって、ベトナム人がたくさん働いていたから自然とそれをイメージする」とか、「こないだテレビのニュースで外国人労働者の犯罪を扱っててその悪い印象がある」といった方もいらっしゃると思います。

(ちなみに、犯罪発生比率は日本人より外国人の方が低いというデータがあるので、上記の印象は事実ではなく、印象操作されて作りあげられてしまった偏見ということになります。参考↓)

このように、普段自分が見ている世界によって、偏った印象を持ってしまうのって怖いですよね。このアンコンシャスバイアスというのは、ゼロにできるものではないので、「そうしたバイアスを持っている可能性がある」と自覚することが大事だと言われています。

(アンコンシャスバイアスについては、メルカリが出しているワークショップの資料をぜひご参考ください、とてもいい内容😀↓)

僕自身、G1をきっかけに色々と調べて、こうしたバイアスがあるということを自覚できてよかったです。
バイアスによる誤解をしたままだと、意思決定を間違えますからね。

外国人労働者に関するこうしたバイアスを自覚し、そのバイアスを手放し、外国人労働者を雇用の選択肢として前向きに考えていきたいと改めて思いました。(僕は元々前向きですが、改めて。)

ということで、ここからは、外国人労働者を雇用するメリットについて考えていきたいと思います!


外国人労働者を雇うビジネス上の意義

外国人労働者を雇用することは、言語の問題や、就労ビザの問題など、企業として確かに負担がかかるのも事実です。その一方で、補ってあまりあるメリットがあり、これからの日本企業の競争優位になりうるとも言えるので、メリットや意義について考えてゆきたいと思います。

以下の通り大きく4つあると考えていて、それぞれについて、実態のパートで書いた、(A)在留資格に基づく、(B)留学生アルバイト、(C)技能実習、(D)専門的・技術的分野の4つの類型と合わせて、まず整理しておきます。

(1)海外市場へ進出
日本で雇用した外国人が、海外進出時に現地リーダーとして活躍します。
(D)は当然のこと、(C)や(B)も採用後に現地で活躍してくれたり、帰国後に将来的に採用候補になったりすることもあります。

(2)労働力の確保
日本国内の労働力として貢献してもらうケースです。
(B)と(C)は実質的に、日本人の労働力の代替として貢献してくれています。

(3)世界中のトップタレントの獲得
専門家や技術者などを世界から集め、日本企業の競争力を向上させます。
(D)専門的・技術的分野のエンジニアなどが主に該当します。

(4)イノベーションを起こす
多様性からくるイノベーションを組織的に起こすことが期待できます。
(D)の専門性の高い人材もそうですが、(B)(C)であっても起こし得ますね。

それでは、それぞれ一つずつ具体的に見てゆきましょう。


(1)海外市場への進出

日本の国内市場が頭打ちなのは誰もが分かっています。人口が減ればそれだけ市場はシュリンクしてゆきますので、成長するには事業や製品ラインを拡張し続けるしかないのですが、これはこれで大変です。
当然、1億2000万人の市場よりも、海外には70億人の市場があるわけなので、そちらに出るという選択肢を企業としては考えることになります。

しかし、日本企業は海外展開が得意とは決して言えない状況です。

製造業の海外売上高比率は70%ほどの高さを占める一方で、小売業やサービス業の海外売上高比率はわずか10%弱にとどまります。

内閣府の資料によると、三次産業としてのサービス産業全体でみると、サービス業は日本のGDPの70%以上を占めていることがわかります(小売業や外食などを含む広義のサービス業です)。

日本のGDPの多くを支えるサービス業が、成長し続けるには国内消費だけに頼るわけにはいかないので、海外展開を本格化してゆく必要があります。

製造業であれば、まずは輸出して販売する形からスタートできるので海外参入が比較的進めやすいんですよね。

しかし、サービス業の場合、無形性・同時性・異質性・消滅性という4つの特性があり、「生産と消費を分けられない」ので輸出という形をとることができず、現地で全てを行わなければなりません

(サービスの特性についてはこちら参考↓)

そうした中で、日本人がいきなり海外に行って、異なる市場・顧客・競合、そして異なる文化のなかで、日本と同じことをそのままやってもうまくいかないんですよね。

だからこそ、「海外展開するときは、先に組織のグローバル化から」が一つの定石だと言えます。
例えば、韓国展開する前に、韓国人を日本で採用して、日本の組織の中で育成してから、その人材が韓国に帰って韓国拠点の立ち上げをする。
こうすれば、自社の組織文化を把握しつつも、ローカルマーケットの文化も把握できる人材が育ち、成功確率は高まります

そのためにも、外国人労働者は早い段階で積極的に雇用しておきたいのです。

(2)労働力の確保

人口減少によるもう一つの問題は、労働生産人口の減少です。これにより、企業の労働力が不足するという問題は従来からよく言われています。

では「どういった国から来日しているのか?」というと、こんな感じです。

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厚生労働省の資料より)

中国とベトナムでほぼ半分を占めているんですよね。アジア圏が多くて、距離的な立地という影響はやはり大きいということもわかります。

特にベトナムなんかは、(3)技能実習のケースが結構多くて、日本に出稼ぎに来つつ、技術を習得すべく日本に働きにきてくれています。ベトナムはとても親日で、大学の第二外国語で日本語を専攻する方も多く、日本で働くことを目的に学んでる方が多いので採用もしやすいですね。
帰国後も、日本と関連のある企業に他より高い給与で就職できるみたいなケースも多いようで、日本の人気が高い理由になっています。

ベトナム以外でも、たとえば浜松市は、日系ブラジル人を積極的に受け入れて、貴重な労働力としながら、町にも溶け込んでいると鈴木市長もG1で言われていました。

ただし、「中国の方が給料が良くなってきているので、第二外国語で中国語を専攻する人が増えていて、中国に流れている。ベトナムの次の国を探さないと」と、あるメーカーの採用担当者が嘆いてもおられました。

日本は、世界で見れば立地的には、アジアの人材の獲得には有利ですが、中やインドを中心に、人口も多くこれからまだ経済発展が見込めるライバルも多い状況になってきています。

労働力確保の点においては、国を挙げて移住しやすい環境づくりなどの整備を進めたいですね。


(3)世界中のトップタレントの獲得

強い組織づくりにおいて、トップタレントの採用は欠かせません。

トップタレントの獲得は企業の競争力となりうるので、上記の労働力の確保以上に、重要度も高いと言えます。

そして採用するには、優秀な採用候補者に数多く接触することが当然必要になるわけです。
だとしたら、1億2000万人の日本人に対して、70億人の地球人を母集団として採用活動した方が、当然優秀な人材に接触できる確率は上がります

特に、エンジニアをはじめとする技術者の獲得です。優秀なソフトウェアエンジニアは、一人で生み出すアウトプットがとても大きいので、トップタレントの獲得競争は世界で既に起こっています。

とはいえ、コロナ禍を受け、国境をまたいだ転居を伴う採用がしづらくなっているのは事実で、グローバルで採用を進めているGoogleでも「コロナ以降、採用は国内居住の人材を優先する」という趣旨の声明を発表しています。

これによって、グローバルでのエンジニア採用が進まなくなるかというと、僕はNOだと思っています

それは、リモートで働ける環境が整ってきているからです。ソフトウェアエンジニアは特に、リモートでも十分に働けます。海外で採用して、そのまま海外に居住しつつ、日本のサービス・プロダクトに貢献してもらうことも可能です。

実際、グローバル採用している企業では、「オフィスに出社しない日があってもOK」というリモートだけでなく、「世界中のどこに住んでいても働ける(出社しないことがむしろ前提)」という環境を徐々に準備しています。

背景として、コロナ後に「採用が決定していたが、日本に入国できなくなって働けなくなった」という問題があったんですよね。
「入国できないから仕事ができない。けど、現地での前職も辞めてしまったから仕事もない。」ということが起きてしまったんです。そうした方々に対応するために、現地に住んだまま日本のために働ける体制づくりを各社進めてきました。
「コロナがリモートなど働き方改革を加速した」とよく耳にしますが、まさにこうした個別の問題に対応しながらスピードを上げているわけです。

ただし、現実的な課題として、海外に住んだまま日本で正社員として雇用してしまうと、日本と現地での二重課税の問題があったりして、税制的に難しい側面はあります。各社、現地法人で採用する形をとったり、業務委託で一旦発注する形をとったりして回避しているようですが、この辺は国としても方法を検討していきたい論点だなと思います。

加えて、どこに住んでいても仕事ができてしまうので、給与のねじれの問題も起こります。物価の安いところに住めば、同じ給与でも相対的に良い生活ができますし、ではその分給与は調整すべきなのかどうか?という論点です。この点は、これからもっと議論を深めないといけないですね。
この論点については、以前noteに書いたのでよかったらお読みください。↓

このように、まだまだ解決しないとならない論点が多いので、グローバルでリモートベースでトップタレントを獲得しながら、世界の市場を狙っていける組織づくりを、国としてもっと支援していかないとならないと思います。


(4)イノベーションを起こす

最後に、イノベーションです。個人的にはこれが一番大きいと思います。
いろいろなところで語られている「人材の多様性によるイノベーション」というやつですね。

日本企業は新卒を中心に組織をつくっていて、同じ釜の飯を食いながら、先輩の背中を見ながら、組織文化を積み上げてきました。結果として、組織としての凝集性という強みが生まれ、これが日本企業の推進力となりました

こうした組織は、改善を積み重ねながら生産性を向上させ、安定的に成長していくことには長けています。
一方で、同質的な組織をつくるので、イノベーションは起こりにくいとも言われます。

そこで、外国人労働者による多様性の向上が重要になるわけです。

多様な人材同士が、異なる背景をもとに意見を出し合い、新しい気づきをお互いに得ながら、化学反応を起こしてイノベーションに繋げるのです。

そこで欠かせない前提となるのが「心理的安全性」です。

オランダのHuman Insight社によるQIインデックスという研究では、認知的多様性と心理的安全性の双方が必要という結果が出ています。

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(こちらから引用↓)

多様性があるだけではダメで、心理的安全性が欠かせないんですね。

つまり、自分と全く違う考え方や意見を受け入れること、お互いにそうした意見を言い合える環境を作ること、が必要ということです。

多様な人材が集まり、それぞれが異なる意見を発して理解しあった先に、イノベーションが起こるのであれば、その大事なきっかけの一つとして、外国人労働者の採用というのはやはり視野に入れたいと僕は思います。

イノベーションの起こせる組織については、こちらも是非ご参考ください↓


アンコンシャスバイアスを取り除こう

最後の多様性と心理的安全性の話は、冒頭のアンコンシャスバイアスの話につながります

無意識に「あいつはまた違う意見を言うから聞くのやめよう」とか、「あいつは前提から説明しないといけなくて面倒だから後にしよう」などと言って、知らず知らずのうちに異なるタイプの人を遠ざけていませんか?ということです。

それをしているうちは、外国人労働者をたくさん雇用したところで、イノベーションには繋がらず、その価値は最大化されません

だからこそ、外国人労働者という、これまでの背景・経験の大きく異なる、いい意味での「異物」を組織内に取り込むのです。

そして、自らにアンコンシャスバイアスがあるということに一人ひとりが自覚的になり、違った考えを尊重する心理的安全性の高い組織をつくってゆくのです。

これこそが、外国人労働者を雇用することの本質的な価値だと、僕は考えています。

組織が多様な人材にあふれ、それぞれが自分らしく働いて価値を発揮し、イノベーションを通じて成長する世界に誇る組織を、日本からつくっていきたいですね!!

ということで、COMEMOの日経朝刊との連動投稿でした😀

#日経COMEMO #外国人社員に何を期待しますか


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