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診療所でコロナ検査ができるのか?

 新型コロナウイルスの検査については多くの課題があり、現在でも発熱などの症状があってもすぐに受けられない場合もあるようです。これを受け、日本医師会は新型コロナウイルスの検査を身近な診療所で受けやすくするよう政府に提言ことを明らかにしました。現状で検査が可能なのは、全国約3,000の医療機関など全体の3%程度に限られていますので、どこの診療所でもすぐに検査ができるわけではありません。当院は「新型コロナウイルスの帰国者・接触者外来と同様の機能を有する東京都認定医療機関」でいずれの検査も可能なので、遠方からも患者さんが連日来院されます。最近では症状がなくても検査を希望される方が急増していますので、検査が滞る事例も出始めています。

  診療所で検査を推進させる後押しになっているのが唾液による検体採取です。通常はPCR検査も抗原検査も患者さんの鼻の奥に長い綿棒を差し込んで拭い液を取る手法で検体を採取しますが、採取者の曝露や環境汚染のリスクから診療所で実施することが容易ではなく敬遠されてきました。唾液の採取であればこのようなリスクは軽減されることから、最近では感染症を専門としなくてもPCR検査を実施する診療所が増えてきました。確かに症状の有無にかかわらず検査対象を拡げていくことは経済活動を円滑に進めるためのひとつの手段にはなりますが、容易にできる唾液検査であっても感染のリスクが全くないわけではなく、採取時や受け取った後の処理時の感染対策がおろそかになれば当然ながらリスクは生じます。中には「症状のある方は検査をご遠慮ください」などど案内している診療所があることには驚愕しました。症状がある方が最優先に検査を受けなければならないのにそれを断るのは如何なものでしょうか?無症状であれば陽性になることはないとお考えなのでしょうか?もし症状があってもそれを申告せずに受診する可能性があることを考えておられるのでしょうか?診療所での検査を推進させるのであれば、数だけ増やすのではなくまずはしっかりとした感染対策を指導して有症状者の診療もできるような体制作りも並行して行うべきであると考えます。

 手間がかかるとされてきた検査をやりやすくする動きが相次ぐ一方で、唾液検査の精度の低さを懸念する意見も挙がっています。また抗原検査に対しても簡易迅速診断キット(富士レビオ社)は唾液検体の精度については明確になっていません。多くの診療所でコロナ検査を推進していくためには、まだまだいくつもの壁を乗り越えなければならないようです。

疑いのある患者さんの診療の実際を動画にしました(結構大変です)。

#COMEMO #NIKKEI

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