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不確実性と対峙する時、心理的安全性が活動の基盤となる

戦後、何もかもが不足していた時代では、食べ物はあればあるだけ売れるし、洗濯機や冷蔵庫など、生活を楽にする製品は飛ぶように売れました。

長年の先達の努力により、企業の生産力は向上を続け、人々の基本的な生活の不足は解消されてきました。

それでも、企業はさらなる成長を求めています。

たとえ顕在的な需要が充足され、さらに人口が減少期に入った日本の環境においても、歩みを止めることはできません。

売上を拡大するためには、既存の事業領域で同じことだけを続けるのではなく、みんな(競合だけでなく、顧客自身も)気づいていないけれども、提供したら喜ばれるモノやサービスを創出することが求められます。

不確実性と言っても、何に対する不確実性なのか

そもそも顧客自身が何を欲しいのか分かっていない、その顧客の潜在的な課題を見い出すことは、企業にとって簡単な行為なのでしょうか。

米国のPendo社の調査によると、米国で提供されているデジタルサービスに新たに付加された機能の8割は、実際には使用されていないという結果が出ています。

この20年ほどで確立されてきたデザイン思考やアジャイル開発の方法論を適応してきた米国企業であっても、80%は新規活動で的を外してしまうということは、顧客が何を欲しているかを捉えることが、いかに困難であるかを示しています。

もし、顧客を正しく捉えたという確信が得られても、実際にはそれは不確実な仮説に過ぎません。顧客の潜在的な課題は、常に不確実性を含んでいると考えるべきなのです。

不確実性と向き合う時にあるべき上司の態度

顕在化した需要を満たすために、最も重要な観点は生産性です。経営者は従業員のミスを最小化させることを重視し、従業員は規定に従い、間違いを犯してはならないという考え方に基づいて活動します。

ひるがえって、不確実性に対処するためには「仮説を確立し、スピードを上げて検証をし続ける」という実験・学習型のアプローチが必要になります。

もちろん、仮説は真実に近い方が良いですが、常に正しいわけではないから仮説なのであって、それが間違っていても学習できれば良いのです。

仮説段階で「この企画は必ず成功するのか?」「この機能は絶対に使われるんだな?」といった問いかけは、百害あって一利なしです。

たとえ企画が失敗し、使われなかったとしても、その仮説が間違っていた理由や背景がわかれば、顧客について学習したことになり、次の仮説立案に活かせます。柔軟に継続的に仮説を立案し、挑戦し続けるマインドセットが最重要になります。

心理的な安全は活動の基盤となります。発想と挑戦の自由が確保されれば、不確実性に対峙し続けることができるのです。

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遠藤 直紀(ビービット 代表)
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