ワクチン接種が遅れる日本経済の悲劇
株価同様に、年明け以降の米国における景気指標は改善傾向が強まっています。中国の購買担当者景気指数も改善しています。欧州でもユーロ圏のPMIが改善傾向にあります。これに対して対照的なのは日本です。新型コロナウィルスの感染拡大に伴う消費者のリスク回避姿勢継続からサービス業の悪化が続いた結果、日本の総合PMIは主要国で唯一分岐点の50を下回っています。
そこで、人口100人当たりワクチン接種回数を説明変数、PMIの水準を被説明変数として単回帰分析をすると、サービス業PMIとワクチン接種回数の関係が深いことがわかります。この背景には、ワクチン接種により移動や接触を伴うサービス関連産業がより恩恵を受けることがあると推察されます。
効率的な医療提供体制の構築が遅れ、慎重な国民性の日本経済を正常化に近づけるには、諸外国以上にワクチン接種に伴う集団免疫獲得の必要性が高いでしょう。しかし、人口当たりのワクチン接種率の国際比較をすると、日本の接種率が圧倒的に低いことは既に知られています。ただでさえ医療提供体制の差がある一方で、ワクチン接種率が圧倒的に遅いとなると、日本経済の回復が諸外国に比べて大幅に遅れることが必然といえるでしょう。
また、ワクチン接種率が進む欧米中心に集団免疫が獲得されれば、経済政策が出口に向かうでしょう。このため、仮に日本でも経済政策を出口に向かわせる議論が高まり、欧米経済と違って経済の正常化から程遠いのに経済政策の出口に向かうと、日本経済は正常化に向かうチャンス失うことになるリスクがあると思います。
ワクチン接種が進んでいるとされる日本以外の高所得国では早晩集団免疫が獲得され、サービス関連産業の回復も期待されます。これに対し、高所得国にもかかわらずワクチン接種が遅れている日本では、他の高所得国がサービス業の回復が遅れるK字型回復を脱したとしても、日本は当面K字型回復から脱却できないでしょう。世界経済はワクチン接種が進む多くの高所得国が正常化に近づく一方で、ワクチン接種が遅れる日本や途上国の回復が遅れるK字型回復になることが予想されます。
つまり、コロナショックは移動や接触需要を急激にシュリンクさせたことで業種や産業間でK字型回復をもたらしましたが、今後はワクチン接種率の格差により、国間でのK字型回復をもたらすことになります。特に日本は高所得国の中で数少ないワクチン接種が遅れている国ですから、他の先進国に比べて経済の正常化が大幅に遅れ、デフレ克服がより困難になるでしょう。
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