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マーケティングに求められる、複雑さと矛盾を乗り越えて考える力

マーケティングは、売上・利益をつくり、組織の成長"のみ"を考えれば良いわけではなくなってきています。

2023年はサステナビリティ情報の開示義務化も進みました。

ブランドの活動が、
1. 地球への良い影響
2. 社会への良い影響
3. 生活への良い影響
この3つのバランスを保てることが重要になってきています。

ESGはSDGsといった言葉の理解を深めることは、
Want to(できると良い)
ではなく、
Must(必須であり前提)
となってきていると感じています。

では、どのように「ブランドの成長」と「地球や社会の持続性」のバランスをとっていけると良いのでしょうか?

2023年に出会った考え方で、これからのブランドのあり方、戦略をつくるプロセスを考える上で大切になってくると感じた視点をまとめておきたいと思います。

1. ドーナツ経済モデル

わたしたちに必要なのは、成長してもしなくても、繁栄をもたらす経済だ。

そのような発想の転換ができれば、成長への盲信が消える。さらには、金銭面でも、政治面でも、社会面でも成長依存を呈している今の経済を、どうやって成長してもしなくても動じないものに変えられるかを探れるようになる。

ケイト・ラワース ドーナツ経済

ケイト・ラワースの著書とフレームワークは2023年に出会った一番の衝撃でした。

「成長だけを目指すのではなく、繁栄をもたらす経済」という新しいモデル提示がされています。

ケイト・ラワースはドーナツ経済モデルというの可能性を提示しました。

繁栄をもたらす経済をドーナツに喩えて視覚的に表現をし、
ドーナツの生地のところに全員が入るように政治や経済を進めていくこと
を目標とする考えです。

企業ではないですが、オランダ・アムステルダムでは、都市の戦略づくりにドーナツモデルが採用されています。

「循環型都市(サーキュラーシティー)」を標榜し、世界に先駆けて経済社会システムの変革を進めるオランダの首都アムステルダム。市内に点在するサーキュラースポットの代表格、汚染された造船所跡に立地する「デ・クーベル」では、循環型都市づくりの実験が10年にわたって進められている。

廃船をクリエーティブに再生(アップサイクル)したオフィスには企業やアーティストらが入居し、屋根は太陽光パネルで覆われている。廃材を集めてつくられたレストランでは、ビーガンや地元食材メニューが提供され、食品ロスは堆肥化される。プランターには汚染物質を除去する植物が植えられ、アクアポニックスという魚の養殖と水耕栽培を組み合わせた循環型都市農業の実験も進む。

日本経済新聞:ウェルビーイング軸に都市づくりを 野田由美子氏

人にとっても地球にとっても最適化された戦略づくりは、これから一層求められてきます。Want toできたら良いではなく、Must取り組む必要があるのレベルに変わってくると考えています。

1. 地球の持続性
2. 人の生活・社会の繁栄

この2つの相反する領域のバランスを保っていく感覚と知識が、戦略を考える人には求められてくることになると思っています。

動画でドーナツ経済の考え方をインプットするのには、ケイト・ラワースのTEDがオススメです。

2. ヘドニスティックサステナビリティ

2つ目のキーワードです。

ヘドニスティックサステナビリティは「快楽主義的な持続可能性」と訳されており、デンマークの建築家であるビャルケ・インゲルスがつくった造語です。

簡単に言うとヘドニスティックサステナビリティは、人々の生活の楽しさと、環境へのやさしさなどの「持続可能性」を融合しよう、というアイデアだ。ヘドニスティック(快楽主義的)とサステナビリティ(持続可能性)という2つの言葉は、これまでは「うまく組み合わせられない」と、多くの人々から捉えられてきた。地球や社会の持続可能性を追求するには、楽しさではなく、何らかの「我慢」「あきらめ」が必要だと思われることが多いからだ。

IDEAS FOR GOODより引用

デンマーク・コペンハーゲンを訪れた際にヘドニスティックサステナビリティを象徴する取り組みである「コペンヒル」を見学させてもらいました。

廃棄物処理場を、市民・観光客が楽しめるものに変えてエネルギー問題をより身近なものにしようという取り組みです。

生活者が地球環境を守るために我慢するのではなく、楽しく参加できるデザインを設計することは、これからのブランド体験設計に求められてくると考えています。

ビャルケ・インゲルスのTEDやNetflixドキュメンタリーは、これからの時代に求められるクリエイティビティとは何かを考えるヒントが詰まっていると感じています。

複雑さと矛盾を乗り越えて考える力

・経済性と社会性
・地球環境と人の生活
など、ブランドに求められる要素は複雑化してきています。

orからandの発想へ

地球環境を優先してブランドの成長を止めようという考え方では無理があります。

サステナビリティorブランドの成長
といったorの発想ではなく、
サステナビリティ and ブランドの成長
and発想への切り替えが求められる時代になっていると感じています。

複雑さを受け入れ、社会の矛盾する構造と向き合い、
「どうすれば矛盾した複数の要素を両立できるか?(時には矛盾を乗り越えるか)」
を考えることが、マーケティングの仕事をする際に重要だと考えています。

参考書籍:パラドックス思考

2023年に読んだパラドックス思考は、複雑化した社会環境の中でどのように考えるかのヒントが詰まった本でした。

2024年も複雑な問題解決を楽しみながら、未来に少しでも良い影響を与えられるブランドづくりに貢献していきたい。

マーケターの役割は、複数のステークホルダーと矛盾と向き合いながら、最適解を導き出すことと捉えて、良い対話の場をつくっていきたいと思います。