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お宿再考。楽しみが増えてきた!

振り返ると過去30年、仕事絡みの旅がほとんどだったような気がする。そのため、宿選びは当然のことながら、利便性をもっとも重視してきたように思う。とにかく、目的地の近くで、しっかりとしたデスクと椅子があること、そしてチェックイン・アウトがスムーズであること。自分にとっての魅力的なホテルの条件はこんな感じだったと思う。あ、一つ忘れていた。それはバスタブが付いていることだ。旅の疲れを取り、次の日の朝から最高の状態に持っていくには、バスタブにお湯を溜めて、ゆっくりと浸かることが不可欠だったからだ。

利便性とバスタブ。ホテルに対するニーズは、以前はこれだけでよかったのだが、ここ数年で大きく変わってきた。経営コンサルティングという仕事を離れて、少し時間ができたこともあるが、それよりも新たに観光を題材にした仕事が増え始めたからだと思う。仕事となると、悪い癖か、途端に色々なことが気になってくる。宿泊自体を宿の基本機能と捉え、その他にどんな形で楽しませてくれるのか、様々な期待をするようになってきたのだ。高台にあって眺望が素晴らしい宿、部屋の露天風呂が楽しめる宿、アートや美術品に囲まれた宿、自然なおもてなしで豊かな気持ちになれる宿、とにかくご飯が美味しい宿などなど、ホテルの魅力がとても多様なことに、今更ながら気づいてしまった。

そんな中、ここ最近、気になっているのは趣味の宿だ。まずはモビリティだが、富士スピードウェイホテルが昨年開業した。なんといってもライセンスを取得して、レースまでやる車好きなので、ここは外せない。サーキットビューの部屋からは、レースの練習走行の様子が丸見えだという。国際レースもある。コースのどのくらいの範囲が見られるのかは定かではないが、ブレーキングと加速、ラインどり、そして爆音まで、くつろぎながら堪能できるのは極上の体験だろう。でもどうせなら、サーキット走行やインストラクターによるトレーニングなどもセットにしたパッケージが欲しくなる。連泊してとことんまで走り込んでみたいと思う。もちろん、疲れた体には温泉だ。大浴場のみならず、屋内プールもあるので、ゆったりと緊張を解きほぐしたいと思う。一方、そこまでクルマ好きでない人は、ラグジュアリーな空間で、ゆったりと大自然と温泉を楽しんていてもらう。これならWin-Winにできそうだ。

昨年、千葉のシェラトン・グランデ・トーキョーベイ・ホテルでも、興味深い企画が始まった。これもたまらない。ボーイング737型機のコックピットに座り、操縦体験ができるシュミレータが導入されたのだ。パイロットの訓練にも使われる代物で、離着陸の音も再現される。空を飛んでみたいという多くの人の夢が叶う気がする。さらに、極め付けは、訓練会社のインストラクターの指導まで受けられるというのだ。大学の先輩がアメリカで空を飛んでいるのをSNSで見かける度に羨ましく思っていたが、まずはシミュレーターで試してみて、空の免許を挑戦するどうかを考えてみようと思う。

シュミレーターの検索をしていたら、鉄道の運転士を本格的に体験できるものも見つけた。浅草東武ホテルの1室に、東武鉄道が乗務員の訓練に、実際使っていたシミュレーターを移設したという。CGで沿線の風景も本物そのもの、流石に電車の運転を趣味にできるとは思わないが、これも一度は体験してみたいものだ。「電車でGO」の凄い版という感じなので、初心者は人が運転する姿を見ても、ゲーム感覚で自分で動かしても、十分に楽しめるのではないだろうか。

この他にも、自らで運転はせず、見るだけだが、トレインビューやエアポートビューと題して、電車や飛行機を真横や眼下に見れる部屋を提供するホテルもある。マニアには垂涎ものの体験だ。一方で、一般人にとっても、意外と使い道がありそうだ。首都高速の夜景なども同じだが、単調に何事もなく繰り返し通り過ぎるモビリティの姿は、物思いに耽けるには丁度良いと思う。

趣味のホテルで最も行ってみたいのは、北海道ボールパークFビレッジだ。既に話題沸騰なので知っている人も多いと思う。ここの特徴はなんといっても、野球好きの範囲を大きく超えた、野球ファンでない人すらも惹きつける魅力が満載であることだ。自分の泊まっている部屋から見るプロ野球選手の姿。これは特別な体験だ。水着を着用すればサウナから寛ぎながら試合の観戦もできる。さらに、クラフトビールの醸造所兼レストランが球場内にあって、インフィニティープールならぬ、インフィニティカウンターでは、カウンターのすぐ目の前で、選手が躍動している。どれもこれも刺激的すぎる。宿泊すれば、試合の前後の様子ですらバッチリみられる。グランド整備から、練習風景なども当たり前のように目に入る。これは唯一無二の体験になりそうだ。

自然の雄大さだったり、アーティストやデザイナーの凄技だったり、本物の道具に触れられたり、プロフェッショナルを間近に見られたり。それぞれのホテルには、独自の価値が存在している。価値の幅や深さはまちまちだが、マニアの人を鷲掴みにする企画から、新たなファンを作るきっかけとなる仕掛けまで様々な工夫も感じられる。もっと色々なホテルを調べて、独自の価値を見極め、行きたい宿のリストを作ってみたいと思う。伝統芸能、寺社、城など文化的な宿にも興味がある。今の時代、ワーケーションもできるので、仕事半分、趣味半分で日本全国の宿を巡る旅を始めてみたいと思った。とても楽しみになってきた。


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