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これからの対面イベント(展示会・見本市)のあり方とスタートアップ

スペインのバルセロナで例年2月に開催されるMWC が、今年は6月の今日から開幕した。新型コロナウイルスの影響で2020年の開催は見送られたので、ほぼ2年半ぶりとなる。

ヨーロッパやアメリカでは感染の拡大が一定の落ち着きを見せはじめ、ワクチンの接種も広がりを見せていることから、この後徐々に対面のイベントの開催が予定されている。

先陣を切って先日フランス・パリでは VIVA Technology が開催され、入場者数を制限をするなど感染防止の配慮をしながらも、マクロン大統領が来場・登壇し、起業家と長時間にわたるディスカッションを行うなど、対面でなければできない内容も盛り込んでの開催となった。

デルタ株など変異株の流行が引き続き懸念されており、ワクチン接種が遅れれば遅れるほどこうした変異株の流行や新しい変異株の出現もしばらくは収まらない懸念がある中で、下記の記事が言うとおり国際的なイベントへの参加は、現時点では「不確定要素があまりにも多すぎる。(企業や来場者が)見本市への参加を、計画することは不可能に近くなっている」という状態だ。

仮にイベントに参加するとしても、今回の MWCやVIVA Technologyのように参加者はワクチンの接種記録を求められたり、48時間ないし72時間以内の陰性証明の提示を求められるなど、参加に対しては非常に大きな手間とコストがかかる。

また感染抑止のため出入国に制限がある国も多く、日本の場合も、日本人であっても、また仮にワクチンの接種が終わった人であっても、現時点では入国時に14日間の自己隔離が求められ、加えて出発する国によっては一定日数の強制的な隔離の措置がとられている。

この記事の中で指摘されているように、大企業の中には集合的なイベントの出展を取り止め、自社イベントをやるほうが効率が良いという判断をしている会社もあるようだ。こうしたことはコロナ禍の前から一部の企業では言われており、実際にそういう行動をとっていた企業もある。

一方で、スタートアップや中小企業のように、一社ではイベントをするだけの資金力や集客力もないといった場合、こうした集合的な対面イベントが、ビジネスパートナーや顧客を見つけたり、投資家との接点を持ったりするために、引き続き重要な機会であり続けるだろう。

大企業が自社イベントを行うとしても、商談など対面の優位性がある点をどうするか、感染拡大を防ぎつつ解決する必要があることは集合的なイベントと同様である。

今回のVIVA Technologyでは、オンラインとオフラインを同時に開催し、全ての参加者に対してオンライン参加の権利を付与するという、いわゆる「ハイブリッド開催」が行われた。オンラインとオフラインを分けて考えるのではなく、オンライン参加が基本であり、現地に行ける人は4日間の会期中1日だけ入場できる、という仕組みである。

従来(2019年以前)から、著名人の講演には多数の人が集まり、長い時間行列して待たなければいけなかったのだが、今年のハイブリッド開催では、直接生の声や姿を見ることをあきらめるなら、現地にいる人であっても腰を落ち着けやすい場所で、行列する時間を無駄にすることなく、こうした著名人の講演を聞くことができるようになった。

また、こうした方法を採用することによって、登壇者がオンライン参加する人も出てきた。今回であれば Appleのティム・クック氏や Facebookのマーク・ザッカーバーグ氏といった注目の登壇者もオンライン参加であった。ただ、参加者全員がオンラインである場合と異なり、受け答えする側はパリ会場のステージ上にいて、会場にいるオフラインの観客から起きた握手や笑い声などはオンラインの相手方にも伝わるために、臨場感のあるトークイベントとなっていた。このような「ハイブリッド」な登壇が可能になったことで、今後より多くの登壇者が参加する可能性が開かれたのではないだろうか。

仮にコロナウイルス流行の懸念が去ったとしても、今後のイベントの在り方が、2019年までと同じ姿であるとは考えにくい。オンラインかオフラインか、という二者択一ではなく、オンラインとオフライン両方の良さをうまく取り入れ、また感染の流行状況によってオンラインとオフラインの比率を柔軟に変化させるなど、新しい形の対面イベントのあり方が求められており、 VIVA Technology はその点で、新しいスタイルの模索において一定の成果をあげた言って良いのではないだろうか。

そして、日本の多くのイベントも、この機に国際イベントとなる方策を模索するチャンスが来ていると思う。先行する各国各種のイベントの在り方を参考に、新しい開催の形を考えるべき時が来ている。

特にスタートアップイベントを今後どのように開催していくか、知恵の絞りあいとなるだろうし、その中から新しい形・スタンダードが生まれてくることを期待している。



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