新卒採用が本当に多様な採用機会を阻害しているのか?

少し前の話題になるが、今年4月、厚生労働省が、日本経済団体連合会、経済同友会、全国中小企業団体中央会、全国商工会連合会に対して、多様な選考・採用機会の拡大に関する周知啓発への協力を要請したという。多様な採用機会というのは、新卒一括採用偏重ではなく、中途採用、ブーメラン採用、地方限定正社員など、採用対象や雇用形態の多様化のことを指しているようだ。このように、採用に多様性をもたようという動き自体は歓迎すべきことだ。特に、中小企業が会社説明会を開催し「大学生がこない」と嘆くのであれば、大企業に就職したが上手く適応できなかった第2新卒やUターン人材に切り替えたほうが上手くいくこともあるだろう。

しかし、新卒採用は本当に多様な採用機会を阻害しているのだろうか。疑問を感じる。そもそも、中途採用者の人数は1980年代から新卒採用者よりも多い。リクルートワークス研究所によると、日本全体の入職者数のうち、新卒採用者の割合はたったの18%だという。残りは中途採用者と非正規雇用である。つまり、すでに人数だけでみれば多様な採用は行われているのである。新卒採用の18%にばかり目を向けていて、残りの82%が経営者の視界に入っていないことこそ、問題ではなかろうか。

2001年に、マッキンゼーのEd Michaelsが 「タレント獲得競争(War for Talent)」を出版して以来、如何に優秀な人材を獲得するかは世界的な人事課題となっている。しかし、それももう17年も前の話だ。世界で最も採用競争が激しいサンフランシスコをはじめ、「優秀な人材の獲得」は人事部だけの問題ではなく、全社員がコミットすべきマネジメント上の課題にまで大きくなっている。

新卒採用か、中途採用かと採用経路の話に閉じてしまっている時点で、残念ながら世界の人材マネジメントの潮流から周回遅れとなってしまっている。

参考URL:リクルートワークス研究所(2016年)「戦略的採用論」 

https://www.works-i.com/pdf/160407_sr.pdf

http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000204528.html

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