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学びを止めない ECPの重要性

新型コロナウイルス問題で、世界各国で学校が閉鎖されている。これがもし長期化し、単に授業がなくなってしまうのであれば、学びが止まってしまうという現実がある。

これを防ぐためにオンライン授業など、インターネットやデジタルを活用した新しい学び方が大きくクローズアップされている。

実際に Financial Times 記事にあるように、Edtechと言われる教育系のスタートアップのサービスが活況を呈している。これは世界で学び方に新たな動きが起きているということを示すものだ。

例えば、今回のウイルス問題で企業でも利用が増えているオンラインの会議ツールZoomは、教育用途に限って一定期間無料で有料機能を開放すると発表し、多くの国の教育現場で使われはじめている。このほかにも様々なオンラインの学びのツールが、世界の教育現場で今使われ始めようとしている。

日本で2011年に東日本大震災が起きた時に、企業の活動をどう継続するかという観点で、BCP(Business Continuity Plan;事業継続計画) が大きくクローズアップされ、 BCP は今や企業が当然計画しておくべきものとなっている。今回、在宅勤務やリモートワークが速やかに実施された企業では、BCPの中にそういった計画が織り込まれていたケースも多いだろう。

同じように、教育の観点では、非常事態が起きた時に、いかに学びを止めないかという「教育継続計画」、言ってみれば「ECP(Education Continuity Plan)」 という観点が非常に重要で、今まさに求められているものだろう。

手前味噌ながら、2011年の東日本大震災の後に、石巻で、交通が寸断されてしまったために学習塾に通えなくなった子供たちのためにオンラインでの教育を提供するプロジェクトに、KDDIの一員として関わったことがある。

これは既に9年前のことで、今から見れば非常に初歩的な仕組みではあったが、前日に長野県の予備校で収録された授業を、翌日石巻で当時まだ珍しかったタブレットを通してその授業動画を子供達がオンラインで見ることができるという取り組みであった。世界の通信事業者が加盟する業界団体GSMAでも、モバイルを活用した教育mEducationの事例として取り上げられた。

9年後の現在では、社会全体のデジタル化やモバイル活用が一層進み、様々なサービスが出てきているので、こうした学びを止めない ECP の取り組みにも、様々な手法が容易に活用できるようになってきている。そして、世界の多くの国々がそういった新しい手法を取り入れて、学びを止めない手法を模索し、あるいは一層強化し始めているのが今の状況だ。

日本の教育現場でのデジタル化は、機器の問題から教える側のスキルに至るまで、様々な問題があるということは承知している。しかし、世界の動きに遅れをとることは、日本の子どもたちの将来の可能性を狭めることになりかねず、これは、企業の活動が止まる以上に深刻な、国の将来にとっての大問題であると、私は思う。

言うまでもなく日本は災害が多い国である。今回のようなウイルスに限らず、地震や台風などは毎年のように学びを止めてしまう影響を及ぼしている。こうした中で日本が ECPの取組を行うことにより、大きな災害などがあっても、子どもたちだけでなく、大人も含めて学びが止まらないという状況を作っていくことが、非常に重要なことだと思う。

企業でのBCP はすでに一般化したので、次は教育現場で ECP を一般化させることが、日本にとって大切だ。

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