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更に加速するユーロ圏のインフレ

ユーロ圏の2月のインフレ率は1月の5.1%から5.8%に上昇した。コンセンサス予想に対する上振れはこれで8ヶ月連続。総合インフレ率を押し上げている最大の要因はエネルギー価格である。エネルギー価格は前年同月比+32%の上昇となり、総合インフレ率の上昇の半分以上はエネルギー価格の上昇によるものとなっている。

向こう数ヶ月間、こうしたインフレ率の上昇加速が続くことになり、2022年はインフレ率が高止まりするであろう。理由は三つ。

第1に、サプライチェーン障害の強さを示す一部の指標からは、最悪期が過ぎたことが窺えるものの、ロシア・ウクライナ紛争により、上流部分の物価圧力が当初、想定されたほど短期間で解消されないリスクが高まっていること。第2に、新型コロナウイルスに関連した制限措置の緩和が続く中、レストランやホテルなど、その影響を受けてきた分野の需要が正常化することにより、物価はさらに上昇する可能性が高いこと。但し、目先の不透明な状況による需要への影響がどの程度になるかは依然として不透明でもある。第3に、食料品価格、酒類、タバコ価格の上昇率は2月に大幅に加速しているが(+3.5%から+4.1%)さらに上昇する余地が大きそうだ。昨年の農産物価格の上昇がまだ完全には反映されていない一方、エネルギー価格や、肥料を始めとするその他コストの上昇は食料品価格の再度押し上げるリスクを高めているからだ。こうした動きに加え、高インフレに直面した労働者が強い労働市場を支えに、実質所得の維持を図ろうとするため、賃金上昇率が加速することやロシア・ウクライナ紛争の影響を受け、貿易とエネルギー供給の問題からのインフレ圧力もある。

どう考えても、インフレは上昇圧力を受け続ける中、経済活動は鈍化傾向になる。ECBの金融政策は難しくなり、政策手段の調整に関する柔軟性と選択肢の維持を、当面は持つことが重要になるのではないか。

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