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2024年モビリティサービススタートアップ業界の振り返りと2025年予測

今回は日本のモビリティ業界の2024年振り返りと2025年予測について、今年発生したニュースを引用しつつ、大きな流れを深堀りし、予想していきます。

-要約-
2024年は
マイクロモビリティの普及が進み、LUUPと大手の競争やSMZの国産電動キックボードが注目された。
EVは世界的に成長が続き、KGモーターズが1人乗りマイクロEVを発表。
レンタカー・カーシェアでは無人化が進展し、インバウンド利用増に伴う回送負担など課題も顕在化。
タクシーはライドシェア解禁に向けた議論が進むも、日本の規制や受容性の壁は依然高い。
地方公共交通は減便や廃線が進み、オンデマンドバスやBRT、自動運転バスによる対応が拡大。
2025年には業界再編やEV普及、片道利用が見込まれるが、規制や技術課題の克服が鍵となる。


モビリティサービススタートアップ2024年振り返り

マイクロモビリティ

近距離のマイクロモビリティは新規性が高いニュースよりは、確実な普及と改題解決が見られた年でした。

・駐輪ポートの共有
LUUPがスタートアップなのに対し、ハローサイクリングとドコモバイクシェアは大手系列です。場所の取り合いが進んでいる中で、LUUPがリスクマネーを資金調達し、相場以上の水準で用地契約を進めていると報道があります。
それに対して、大手系2社は連合を組みました。
九州・名古屋に強みを持つチャリチャリも今後どのような動きを見せるでしょうか。

・国産スタートアップの登場
今まで電動キックボードはほぼ中国から調達しているところがほとんどでした。そこへ岡山発のスタートアップSMZが折り畳み小型電動キックボードで殴り込みをかけています。


自家用乗用車

「日本市場ではBYDが攻勢を強めるも、世界的にはEVが急減速」とされていますが、実は引き続きEVは成長しており、成長率が少し鈍化しただけの模様です。

出典:日経新聞

キャノン戦略研究所の櫛田氏がレポートで言及されているのでお時間ある方は是非一読ください。

日本市場においては、小型EVの新しいスタートアップ"KGモーターズ"が1人乗り100万円の車体を発表した。

マイクロEVはFOMMなどが先行しているが、最近は軽貨物EVにシフトしており、純粋な乗用マイクロEVはmibotのみになっていくのかもしれません。
同社が面白いのはYoutubeを活用し、ユーザーを巻き込みながら開発している点です。令和時代の車両開発スタイルは他社へも波及していくのでしょうか。

自動運転については、専門的なレベルの話はキリがないので、本稿では割愛します。ただし、米国と中国では自動運転タクシーがエリアを広げるも日本市場は自動運転についての感度が相変わらず悪く、進みが遅いのが日本人としてはやるせない気持ちになります。後述する地方公共交通の問題は待ったなしなのに、安全性や社会受容性を優先させている(ような遅さ)のは何が社会全体の課題なのか、政府一体として取り組めてないのではとすら思えます(筆者感想)

レンタカーカーシェア

こちらはポジショントークになってしまいますが、弊社の業界でもあり、少し詳しく書こうと思います。
全体的にはカーシェア化が進行し、無人・非対面で24時間貸し借りが可能になってきています。レンタカーのお店の敷地にカーシェアが置いてあるタイプも増えました。
実は大きくはレンタカー業の免許の中にカーシェアはあり、レンタカーを遠隔監視出来るようにしているのがカーシェアなんです。ただし、レンタカーは乗り捨てがお店の間で出来るのに、カーシェアでは乗り捨てが一部実証等で限定的にしか出来ませんでした。
そこに弊社の片道レンタカー"カタレン"が始まりました。スタート自体は22年3月なので、24年の話題ではありません。まずはステーション間を片道ずつ移動させることから始め、今年からは複数のステーション間での車両のやりくりも裏ではじまり、さらに鉄道や飛行機など他の交通手段との連携もしています。まさにレンタカー・カーシェアが2024年にMaaSに組み込まれたのです。
この成果は後年に振り返った際に注目の成果となるはずです。(なってくれ!)

カタレンとANA MaaSの提携内容

また、インバウンド観光客のレンタカー利用が顕著に伸び、各社過去最高を記録している模様です。インバウンドのお客様が増加した事による課題が2点浮彫になっています。

1.回送車両の増加
インバウンドでレンタカーを利用されるお客様の5割近くが乗り捨て・片道で利用されると各社からヒアリングしています。
そのため、成田空港で借りて、関西国際空港で返す等が急増し、レンタカー事業者から車両回送会社へ支払う回送費用も増大中です。一部では回送会社の人手が追い付かず、レンタカー事業者の社員が駆り出されて運んでいるケースすら多々聞いています。
この課題解決こそ我々“カタレン”のマッチングの発揮できるポイントです。
対応するエリア・台数を拡大し、回送課題の解決に努めています。

2.国際免許証とビザの確認の工数増と限定的な対応可能時間
外国人が日本でレンタカーを借りる際の書類も問題になってきています。
今までも複雑でしたが、偽造問題に加え、確認すべきことが多く、アナログで確認しているため、現場にしわ寄せが行っています。
また、カーシェアで無人・非対面で国際免許証やビザの確認が出来る仕組みが未だ無いため、外国人はレンタカ―店舗でかつ営業時間内でしか貸出・返却が出来ません。
すでに空港におけるLCC深夜早朝便などはレンタカー店舗の営業時間外であり、「到着した外国人が借りられないor便の直前では返却出来ない」事が起きています。

タクシー

今までの配車DXから次の段階「ライドシェア」の議論が大きく進み、実際に一部解禁されました。さらに年末にはWaymoのロボタクシーがGOと組んで参入というニュースまで飛び込んできました。ただし、まだ実証から始めるそうで、日本の交通法規や交通特性というのはあるにせよ、動きがまだ遅い印象です。
日本では2030年には一般道で自動運転車が本格解禁予定であり、あと5年で自家用車もレンタカーカーシェアもタクシーも関係なくなる事を考えると、この全てをどのように統合していくのか、棲み分けるのか、別の議論が必要です。
ライドシェアだけで特集が組めますので、こちらでは以上にします。

バス

地方公共交通はすでに待ったなしの状況です。
バスの不採算路線は減便→廃止が続いています。
そのためにオンデマンドバス化→デマンドタクシーと赤字を減らすためにどんどん小型で効率的な運用に切替わって行ってます。
EV化と自動運転バスも一部で開始しています。

地方都市だけでなく、大都市名古屋でも郊外ではデマンド交通の導入による効率化が始まっています。

東京でも世田谷区では一部デマンド化されはじめています。

KDDIと高速バスのWILLER EXPRESSはmobiというハイエース型の近距離相乗りのデマンド交通を東京23区でも運行していましたが、既存交通事業者との調整など課題は残っているようです。


鉄道

鉄道も地方の不採算路線の減便・廃止はバス同様であり、すでに待ったなしの状況です。廃線しその区間を専用道路のバスに置き換えるBRTも徐々に増えてきました。

鉄道による輸送サービス自体のスタートアップは見当たりませんが、自走式ロープウェイという面白い乗り物を開発しているZipInfrastructureさんが気を吐いています。今年も国内自体だけでなく、フィリピンなど海外でのニュースも飛び込んできています。代表の須知さんと私は面識もありますが、若く行動力もある方で、ブルーオーシャンを開拓していく事ができると思っています。


空は?

エアモビリティが万博を契機に一気に行くかと思えましたが、やはりダメでした。事故を恐れたら、デモフライトしかできないのは分かります。
事故時にすぐ死につながる領域で挑戦されているスタートアップの皆様には尊敬しかありません。今後の動きに期待です。

海は?

自動運航船スタートアップのエイトノット社がついに商業運航をスタートさせました。大型船も造船大手が自動化を進めています。島国日本としては、これをアジアの島が多い国に輸出するモデルが作れると良いのではないでしょうか。MaaSに対応し、ルート検索で自動運航船が選択肢に入る未来が早く来て欲しいです。


モビリティスタートアップ2025年大予想

マイクロモビリティ

さらなる合従連衡が進み、一部合併なども始まるのではないでしょうか。
地方でどの程度まで普及が進むか。軽自動車との競合がはじまるのか?
その点においては、カーシェアも地方部では未だ普及していない事を考えると相当な時間がかかると見えます。
バスや電車に簡単にマイクロモビリティで乗り込める仕組みづくりも必要です。

自家用乗用車

世界のEV化は少し速度を落としながらも進み、他国は自動運転をどんどん進めていく。日本のスタートアップも骨太のところが諸外国で先に実績を積み、逆輸入の形で日本市場にプレッシャーをかけるところが出てくるのではないか。

レンタカーカーシェア

カーシェア化が一層進み、カーシェアの片道利用が広まり出します。さらにコインパーキング等の場所でも簡単に乗り捨てが出来る連携が進むでしょう。
また、弊社カタレンもライドシェアnottecoと提携していますが、ウーバーさんもタイムズさんと連携し、ライドシェア車両としてレンタカーカーシェア車両を活用する流れも出来てきています。

タクシー

2025年4月にもライドシェア本格解禁かと24年前半には言われておりましたが、現状を見るとライドシェアが本格解禁になることはないです。
交通空白地域に限り、公共ライドシェアという形で許可を出しているが、そもそもドライバーの成り手も利用者も少ない地域では、継続性が乏しく、一過性のブームに収まります。
本質的には後述する低コスト自動運転を入れるしか、そこに住み続ける人の足は確保できません。本件はコンパクトシティ等自治体中心部への移住促進も同時に進めなければ人口減のなかでインフラ維持に繋がらないのです。

バス

オンデマンドバスでも維持できない場所は、すぐに出来て安くゴルフカーとルフカート+道路に磁石を埋め込ませるタイプの自動運転でまずは足の維持に努めます。コンパクトシティは移住させなければいけないため、すぐには効果が出ず、待ったなしの場所では、こちら即効性ある策を導入する自治体が増えるでしょう。

鉄道

JR各社も不採算路線の廃線を進めており、JR東日本は民営化後初の廃線が発表されたエリアで、足を補うためのライドシェアを実施するのではないかとのニュースが流れました。
弊社も実はある鉄道会社様と同じ文脈のプロジェクトがあり、今後廃線をただ行うだけでなく、ライドシェアを組み合わせる事で、最低限の足を補う事が同時に求められるようになるでしょう。

空と海は?

空と海は参入プレイヤーも少なく、課題が可視化されていません。
2025年は地道な実証実験が続くでしょう。空に関しては万博のデモフライトがあり、そこで機運が盛り上がるか次第です。

最後に2025年に向けて

大手自動車メーカーもすでに日本市場の比率が低いため、相対的優先順位が低い日本で、当局の規制が激しく得るものが少ない自動運転をゴリゴリ進めていく理由がない。そのため、スタートアップは規制当局の国交省と共に盛り上げていく機運を作っていきたいところです。
まさに万博は日経さんも特集ページを組まれている通り、ショーケース成り得ますので、期待しています。


未来のカタレンチームメンバーへ

カタレンはシェアリングだけでは解決できない、シェアリングの負の部分・社会課題を解決しつつ、我々ユーザーとしても便利になるサービスを目指しています。
新しい体験を作る上で重要になるのが、日々仮説検証を繰り返して、より良いサービスを作り込むメンバーの皆さんです。
ご興味頂けましたら、我々がどんな世界を目指しているのか、私が何者なのか、是非こちらの記事もお読みください。

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