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Down Underの(新しい)魅力

訪日観光客が年間40万人を超え、依然日本語が習得外国語の人気ナンバー1、マルチ文化で不況知らず、日本人にとって人気移住先トップ3に入る国はどこだろう?

そう、オーストラリアである!

海外で「終わったコンテンツ」と一蹴されもする日本が、これほど親しみ、親しまれるありがたい先進国も少ない。しかし、せっかくワーキングホリデーや観光で訪れても、深くオーストラリアとかかわる機会は限られる。鉱業に代表されるように、規模は大きいものの直接投資や輸出入にかかわる人数が少ない産業が豪州の伝統的な強み。実業では、総合商社や鉄鋼業に身を置かない限り、キャリアを通じて長く付き合う人数が広がりにくいのだろう。

一方、オーストラリアはダイナミックな変化の途上にある。シドニー、キャンベラ、メルボルンを廻った1週間の観察から、この「古くからの友人」がどう変身しているのか、日本から一見分かりにくい最新事情を届けたい。

1. 気候変動は国家課題

ちょうど私が滞在した一週間は、連邦政府の予算が発表される時期に重なった。与党と野党が予算を競うのだが、気候変動対策がその争点ど真ん中にあることに驚いた。マイニングブームは確かに経済を支えたが、近年は異常気象が続き、その代償に国民の感度が上がっている。鉱業依存から脱却するため、スマートエネルギーの研究と商業化が盛んだ。自国のエネルギーミックス改善のみならず、将来は「地面から掘り出したもの」ではなく、再生可能エネルギーを水素エネルギーとして輸出したいという壮大な計画が進められている

2. イノベーションは学術から商業へ

豪州は優秀な大学をいくつも抱えるアカデミアの優等生で、2000年代以降6件(平和賞1件を含む)ものノーベル賞受賞を果たしている。例えば、WiFiの技術ももとは豪州の研究から生まれたそうだ。しかし、学術イノベーションを商業化する橋が弱く、目立った技術大手が育ってこなかった。政府はこの弱みを理解して、補助金やプロジェクト支援などさまざまな形で産学連携を進めている。さらに、ここ4-5年で、連邦、州レベルの起業家支援が盛んになった。特徴は、産学連携やベンチャーが外国に対して大変開かれている点で、学術パートナーであろうと産業側であろうと、自国で閉じることにまったくこだわっていない

3. オーストラリア料理、恐るべし

正直、オーストラリア主要都市の外食シーンにそれほど期待していなかったのだが、その斬新さに舌を巻いた。例えばメルボルンは、美食の都ニューヨークに思い切りアジアテーストを強くした感じか?日本でありベトナムであり、それぞれの料理の良さを生かしながら伝統に囚われない解釈を加えて、今風に軽々と仕上げてある。積極的にアジア移民を受け入れ、マルチ民族を超えてマルチ文化を信条とする現れのように感じた。食は生活の基本。そもそも住み心地のいいオーストラリア都市は、さらに武器を磨いているようだ

さて、では日本はこの進化する古い友人とどのように付き合うべきか?

成長のためにイノベーションを必要とするのは、どちらも同じ。それぞれ単独では、米国の産業規模と懐にはかなわないのならば、重なる社会課題に一緒に取り組むことは理に適う。既に水素エネルギーでは、官民プロジェクトを通じて、輸出入の基盤を築こうとしている。エネルギーの他に、例えば豪州でも問題になっている高齢化へMedtech分野で取り組む余地は大きい。豪州は、連邦・州レベルの両方で、直接投資に大きく腕を開けている。政府の旗振りはもとより、日本企業やアカデミアが積極的に豪州パートナーと協業することの意義は大きい。

古くからの友人は、ややすると「いて当たり前」になりがちだが、これは危険。安保面は言うまでもなく、日本は実業面で豪州の魅力を再認識する時期に来ている。古い友人ほど大切にする国であり続けたい。

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