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データから見るオンライン学習の現在と可能性〜コロナ禍で人気のオンライン講座とは?

今朝の「チャートは語る」の特集記事では『コロナで開く「教育格差」』というテーマで、新型コロナウィルスの影響で世界中の過半数の学校(107カ国・地域)が全面休校を余儀なくされ、オンライン授業もままならない状況が示され、広がる教育の危機について指摘されていました。

記事内で紹介されている動画の中では、OECD諸国に比べ日本において学校教育現場においてデジタル機器の使用が遅れている現状が示される一方で、学校外でのチャットやゲームのためのネット利用は大きくOECDの平均を上回っている点がとても気になりました。

全国一律の学校教育現場へのパソコンやタブレット機器の導入や、指導する教員側のスキル向上には大きな予算と習熟のための時間がかかることが予想されます。一方で、国内のスマホ普及率の高さを考えると、魅力的なコンテンツがあればスマホを通じて学校外の学びの機会を享受する人も増えるのでは、ということを感じます。

教育にも小中学校での教育、大学などの高等教育、そしてビジネスの現場でのスキル向上のための教育・研修など、いろいろなカテゴリがあります。在宅での社会人対象のスキル教育や高等教育分野のデータではありますが、先日いくつかのデータを目にする機会があり、がとても興味深いものであったのでご紹介したいと思います。

コロナ禍に世界各国で人気急上昇した講座とは

オンラインの動画学習プラットフォーム大手のユーデミー(Udemy)が4月30日時点で公開したデータによると、世界各国で新型コロナウィルスの感染拡大が拡がり在宅を余儀なくされた期間に最も受講者数の率が上昇した講座が紹介されています。アメリカでは画像編集ソフトウェアのアドビ・イラストレーターの講座が上位でビジネス分野がトップにランクしている一方で、ブラジルではインスタグラム・マーケティング、フランスは金融トレーディング、カナダは株式投資、スペインのピアノなど、様々な学びの需要の様子が異なる点が印象的です。

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次は高等教育分野でのオンライン講座の需要の高まりを示す以下のデータをご紹介したいと思います。ツイートしているのはDhawal Shahさんという、Coursera、Udacity, edXなど、いわゆるMOOCs(Massive Open Online Courses)と呼ばれるサービス提供者によるオンライン講座の集約・検索・レビューサイトの老舗「ClassCentral」のCEOです。

3月15日から4月15日の間の1ヶ月間の間で、2019年の年間を通じたサイト訪問者、そしてCoursera等へのプロバイダーへの送客数[Clicks to Provider]など上回っている、という驚きのデータです。

訪問者数: 
2019年総数[690万人] →2020年3〜4月の1ヶ月間 [740万人]
MOOCサイトへの送客数:
2019年総数[250万人] →2020年3〜4月の1ヶ月間 [440万人]

また、ClassCentralとCoursera,、edX、FutureLearnという大手プライバイダーにより提供された内部データを調査することで導き出した最も人気のあった講座のトップ10は、以下の通りです。こうした講座の多くは無償で提供されています。

【パンデミック期間中に最も人気のあった講座】
1. 幸福学:The Science of Well-Being(イェール大学)
2. コンピュータ・サイエンス入門:CS50’s Introduction to Computer Science(ハーバード大学)
3. 機械学習:Machine Learning(スタンフォード大学)
4. 新興国における起業家精神: Entrepreneurship in Emerging Economies (ハーバード大学)
5. プログラミング入門:Python(ミシガン大学)
6. 学ぶための学習:Learning How to Learn(カルフォルニア大学サンディエゴ校)
7. キャリア開発のための英語:English for Career Development(ペンシルバニア大学)
8. 金融市場論:Financial Markets(イェール大学)
9. 新型コロナのための機械的人工呼吸:Mechanical Ventilation for COVID-19(ハーバード大学)
10. 心理学入門:Introduction to Psychology イェール大学

今回ご紹介したUdemyとCourseraのサイトのアクセス状況をSimilarwebという分析ツールで調べてみたところ、興味深い点が伺えます。ビジネススキルを中心に提供しているUdemyのほうがアクセスは多く、大学の講義を提供しているCourseraは平均滞在時間が約15分と比較的長い時間滞在していることが分かります。

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また、国ごとのアクセス状況を見た際(4月〜6月:デスクトップのみ)、Courseraへのアクセスのトップはインドで20.5%、2位が米国の19.25%です(3位:メキシコ、4位:ロシア、5位:イギリス)。

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Udemyへのアクセス分布を見ると、同じくインドが首位の19%近くで、2位が米国の18.38%です(3位:ブラジル、4位:イギリス、5位:カナダ)。

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もちろんこうしたデータはコンテンツの多くが英語で提供されていること、インドは人口が多いことなど、差し引いて考えるべきことはあるとはあります。

ただ、こうしたデータを眺めることで感じるのは、今後自動翻訳技術等が進化していく中で、学習コンテンツへのアクセスの垣根は次第に下がっていくことを想像する際、既に国境を越えた学習機会を求める競争が始まっていきそうな世界が存在していることです。残念ながら現時点においては言語の問題などの障壁もある中で、日本国内においては十分に恩恵を得にくい状況にあります。とはいえ、見方を変えれば、今後多くの機会へのアクセスが増えていくことが十分予想されます。

冒頭の記事の中で紹介されている「情報技術を教育に活かせない日本」のデータを見て残念な気持ちになった方にとって、いろいろな学びの機会が世界で拡がっているという点も知り、明日からの行動のヒントにしていただければ幸いです。

Photo by stem.T4L on Unsplash

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市川裕康 (メディアコンサルタント)
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