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「3高」「4低」…。結婚するための条件が非婚化を進める【コラム02】

バブル世代にはなつかしい「3高」という言葉があります。当時、モテる男の条件とは、「3高」、つまり「高学歴」「高収入」「高身長」といわれていました。

今更ながら疑問に思うんですが、「高学歴」と「高収入」はわかりますが、「高身長」とはどういう意味だったんでしょうか?

当時の女性たちが顔の造作をまったく気にしなかったわけではありませんし、みんなジャイアント馬場のような大きな人が好きだったわけでもありません。

要するに、これら3つの「高」は希少価値だったわけです。

80年代男子の大学進学率は4割にも達していませんでしたし、その中で東大や早慶などの高偏差値大学に通える男子は少数です。さらには、そうした高偏差値大学の中から高い所得を得られる一流企業に就職できるのも一部でした。ちなみに、1980年の30歳男性の平均身長は166センチでした。モテめと言われた175センチの身長のある男性もまた一部でした。

つまり、「高学歴」「高収入」「高身長」とはそれぞれでも希少性が高いものであり、その3つをすべて満たしている男性は「超希少性男子」だったのです。

さて、時代は移り変わり、今や女性にモテる条件は変わりました。

2012年頃から「4低」という言葉が言われるようになったそうです。


簡単にまとめますと、「4低」とは…

①低姿勢(家族に威張った態度をとらない)

②低依存(家事や子育てを妻にまかせっきりにしない)

③低リスク(リストラにあうリスクが少ない)

④低燃費(無駄なお金を使わない)


モテる条件というよりも、結婚したい男の条件といったほうがいいかもしれません。もちろん女性の本音として「高収入」であることは望ましいでしょうが、90年以降サラリーマンの平均給与はあがるどころか減り続けています。右肩上がりの収入増など全員が享受できた時代は過ぎ去りました。

「高収入じゃなくていいから長期的な安定収入があればいい! 」

そういうふうに彼女たちが軌道修正するのも頷けます。当然、妻である彼女たち自身も共働き意識も高いでしょう。大学生たちの就職先の人気が「公務員」であるというニュースも過去に拝見しましたが、そうした世相を反映しているものと考えられます。

もうひとつ特徴的なのは、②の「低依存」です。これは家事・育児というった部分を妻任せにするのではなく、夫としてもキチンとこなしてくれないとダメだということですね。共働き世帯が専業主婦世帯を上回っている現状では、こうした希望が出るのも当たり前かもしれません。

ですが…

これらの「4低」を妻側の視点から意地悪い見方をすると、

①低姿勢(私に威張らないで! 私に口答えしないで! 私に従順でいて! )

②低依存(家事や育児は私に頼らないで! あなたもやるべき仕事なんです! )

③低リスク(別に出世なんか望まないけど、クビにだけはならず真面目に働いて! )

④低燃費(小遣いは3万円以内。余計な出費は一切しないで! )

なんとも世の旦那たちからしてみたら切ない話ではないですか。

言葉は悪いですが、どこかの独裁国家の不自由な市民のようです。


ところが、これら4つの条件は、100年前男女逆転して妻側に突き付けられた条件と相通じるものがあります。それは、明治民法によって確立した家父長制度による「良妻賢母」規範です。

「黙って夫についてこい! 」

「家事や育児はお前がやれ! 」

「(家のために)真面目に働け! 」

「無駄遣いするな! 」

「4低」条件とそっくりです。


勘違いしている方が多いですが、江戸期~明治初期までは女性も経済的自立をしていました。夫婦であっても財産は別管理ですし、夫といえども妻の着物などを勝手に処分することなどできませんでした。さらに、銘々稼ぎといって共働きが当たり前だったのです。しかし、この明治民法によって、それまで経済的に自立していた女性は、「家の一機能」として取り込められ、自由や自立を奪われました。当時の女性にしてみたら、「結婚して家の支配下に入る」ことこそが「生きる術」であり、こうした一方的な制約があったとしても、ほかの選択肢はなかったのです。

とはいえ、現代の男女は「必ずしも結婚する必要を感じていない」人も多いわけで、だったら何も自分の自由や自立性を犠牲にしてまで結婚したいかといえば、そうではない。だからこそ未婚が増えているわけですから。

実際、結婚とは経済生活であり、お金は大事です。離婚原因は不倫や浮気より圧倒的に経済問題の方が多いくらいですから。また、結婚は共同生活であるわけで、個人の完全なる自由はなくなることも当然です。しかし、だとしても、それはあくまで「お互い様」であり、このようにどちらかが一方的に条件を押し付けられるものではないはずです。もし仮に、すべての女性が結婚相手にこんな「4低」条件を突き付けるのだとしたら、世の独身男性たちは「結婚なんてしない」と思ってしまい、未婚化はさらに加速するのではないでしょうか。


長年の会社勤めを辞めて、文筆家として独立しました。これからは、皆さまの支援が直接生活費になります。なにとぞサポートいただけると大変助かります。よろしくお願いします。