見出し画像

脱炭素の有望株、微細藻類やプランクトン 世界をリードする基礎研究の重要性

こんにちは、電脳コラムニストの村上です。

ESG投資やグローバルの動きの活発化しているなか、カーボンゼロ社会に向けた取り組みが加速しています。日経電子版にできた特集ページは、様々な側面からこのトレンドを読み解けるので最近よくチェックしています。

先日見たニュースで「すごいなー」と思ったのが、こちらです。

研究グループが見つけた植物プランクトン(ディクラテリア・ルトゥンダ)は、炭素数10〜38個の幅広い炭化水素を合成する能力を持つ。

炭化水素を合成する植物プランクトンや藻類などはこれまでも知られているが、合成できる炭化水素の炭素数の範囲が狭く、酸化されやすく不安定な構造(不飽和炭素結合)を含んでいることから、バイオ燃料製造用として実用化するうえで制約があった。化石燃料と混合して利用しなければならない。

新発見の植物プランクトンは軽い炭化水素から重い炭化水素まで幅広い組成をいっぺんに作れ、不安定な構造を持たない質の高い燃料を合成できる。量産化できれば単体で燃料として使える可能性を秘める。

菌類や藻類の世界は非常に多様で奥が深いですね。世界初の抗生物質となるペニシリンが、青カビの代謝産物から発見されたことは有名です。このように微生物から数多くの物質が発見されて医薬品開発に貢献してきました。現在では技術の発展と大量生産のため化合物合成が主流となっていますが、今でも天然化合物に由来した医薬品は多いそうです。

日本は全陸地における占める面積こそ0.25%ほどの小さい島国ですが、海も山もあり縦長のために亜寒帯から熱帯まで幅広い気候帯があります。また、四季があることや離島が非常に多いことから、非常に生物多様性に富んでいます。例えば菌類で言えば、現在までに約10万種もの菌類が世界中で見つかっていますが、日本からはそのうち1万5千種が見つかっているとのことです。菌類は地球上に150万種以上いると推定されていますので、未発見のものがまだ20万種以上存在していると考えられます。

2011年ごろにTVでも紹介されて注目を集めた「石油をつくる藻類」があります。オーランチオキトリウムです。

オーランチオキトリウムは、ラビリンチュラ類に属する従属栄養藻類で、有機物によって増殖するのが特徴です。そして光合成を必要としないので、光がなくても炭化水素オイルを生産します。

藻類ではあるものの光合成をしないタイプで、有機物(つまりエサ)で増殖します。増殖のスピードが非常に速いことから、とても期待を集めました。しかし、光合成をしないということはエサを与え続けなくてはならず、それをどのように安価に大量に調達するのかという課題が解決できず現在では下火になっているようです。

そんなオーランチオキトリウムですが、全然他の利用法があることがわかりました。藻類の一種であるミドリムシを使ったバイオ燃料や健康食品などを開発しているユーグレナによる研究結果です。

株式会社ユーグレナ(本社:東京都港区、代表取締役社長:出雲充)は、コオロギに微細藻類オーランチオキトリウムを給餌することで、コオロギに含まれるドコサヘキサエン酸(以下、「DHA」)の含有量の増加を確認しました。なお、本研究成果は「ASEAN InsecTech Forum2021※1」にて2021年7月31日に発表しました。

DHAといえばサプリメントでも人気のものですね。DHAが豊富なプロテインと考えると、今後のニーズもありそうです。

このように企業による研究開発も重要ですが、基本を支えるものとして大学の研究力が最重要です。しかしながら、これは年々低下していっている状況のようです。

「国立大の法人化後、日本の研究力が海外に比べて相対的に低下したと断定できる」。豊田長康・鈴鹿医療科学大学学長はこう指摘する。三重大学学長も務めた豊田氏は日本の研究力低下を強く危惧し、論文数や大学ランキングなどのデータ分析に取り組んできた。国際比較から「最大の原因は大学の研究への政府投資が人口規模に比べて少ないからだ」と訴える。

文部科学省科学技術・学術政策研究所がまとめた「科学技術指標」によると、日本全体の研究開発費のうち大学部門は18年に00年比1.0倍と全く伸びていない。米国やドイツが1.8倍、英国が1.6倍、韓国が3.1倍、中国が10.2倍などと増えたのに対し、日本の停滞は明らかだ。

2021年度の科学技術の関連予算は4.1兆円でした。中国の28兆円(18年)、米国の15兆円(19年)に遠く及びません。国の台所事情が苦しい中でどう資金を捻出するか。その1つの案が、大学10兆円ファンドです。

ファンドの運用益の3%を研究支援に当てる方針で、これまでにない画期的な取り組みだと思います。実際にどのように運用するのか、期待するリターンが出せるのか等々懸念すべき点はありますが、ぜひうまくいって欲しいですね。

---------
みなさまからいただく「スキ」がものすごく嬉しいので、記事を読んで「へー」と思ったらぜひポチっとしていただけると飛び上がって喜びます!

タイトル画像提供:kikuo / PIXTA(ピクスタ)

#日経COMEMO #NIKKEI

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?