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何をして、何をしないか-段取りこそ、仕事の効率と楽しさを左右する

村上春樹の小説「ダンス・ダンス・ダンス」に「文化的雪かき」という印象的な言葉が出てくる。世の中を回していくために誰かが担当しなくてはいけない作業の象徴が「雪かき」。ただし、肉体労働ではなく、文章を書くような知的労働なので「文化的」。

絶対必要な反面、「雪かき」には、個性を表現する余地や創造性の喜びを想像しにくい。知識経済に従事する私たちにとって、どのように「万年雪かき」に陥らない仕事を定義するかは、大きなテーマであり、この問いこそが私自身の「仕事のポリシー」の根底にある。

まるで降りかかる雪のように、ホワイトカラーの仕事は自己増殖するものだ。従って、やらないことを決め、やることに優先順位をつけることが、私にとって仕事のポリシーの大部分を占める。

まず、「これは私でないとできない仕事か?」が第一の関門。チームメンバーでより得意な人に回したり、委任したりすることにより、自分で時間をかける仕事を減らす。

それでも仕事は降り積もる。自分で作る仕事もある。それらに取り組む優先順位をつけるために、2つの軸で仕分けをしている-手間とインパクトだ。

まず、手間と時間はそうかからないが、インパクトが大きい仕事がある。例えば、チームの相談に乗る、人を紹介する、飛び込みのメディア取材に答えるなど。突発的に起こることが多い仕事のカテゴリーだが、極力悩まず、瞬発的に取り組むことにしている。

そして、最も難しいのが手間はかかるものの、インパクトの大きい仕事。個性や創造性発揮の余地は高い。一方、手間がかかるゆえに、仕事の果実を得る時間軸も長い。私にとって、コンサルタントとしてじっくりと顧客の戦略的な課題に向き合ったり、長めの記事を取材して書いたりする仕事がこのカテゴリーにあたる。

この手の仕事は、大切だと分かっていながらも労力も時間もかかる故に、無意識に後回しにしがちだ。長年の経験を経て、このカテゴリーで満足の得られる結果を出すためには、あらかじめ長めの時間を押さえるしかないということが分かっている。半日や、できれば1日近くをブロックして、よっぽどの緊急事態でない限り、言い訳せずにその時間割に取り組むのが正攻法だ。

一方で、注意が必要なのは、手間がかからないのはうれしいが、一つ一つのインパクトも小さい仕事だ。こういったもろもろの総称が「雑用」だろう。どうしても自分が承認しなければいけない実務プロセスなどがこの手の仕事にあたる。まとめてバッチ処理することにしているが、注意すべきなのは、こういった仕事が増殖して、インパクトの高い仕事をする時間を侵食してしまう現象だ。とても忙しかったのに、振り返ると「ええと、今週は何をしたんだっけ?」という金曜日が多くなると、要注意。

では最後に、手間がかかるのに、インパクトが低い仕事は?「無視する」ことはひとつの解決策だ。

「文化的雪かき」は知識経済の宿命ともいえる。一方、「雪かき」的な要素は、近い将来AIの活用でかなり軽減されるものかもしれない。時間の観念が薄い機械とは異なり、私たちは有限な時間を生きている。では、人間として、どのように創造性をもって仕事をするかという問いは、ますます重要だ。「仕事のポリシー」を定義する根本的な問いだと考える。

#仕事のポリシー

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