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ファミレスの都市部展開、コロナ前のリベンジなるか?

コロナ禍もひと段落して元気が出てきた外食産業

外食産業にとってはまさに天災だった新型コロナウイルスも5類に移行し、飲食店もかつての賑わいをみせてきた。私の住む九州ではインバウンド観光客の増加もあって、繁華街はかなりの賑わいをみせている。週末などは、少し気の利いた店に入ろうとおもうと、前日予約をしないと満席だ。
ファミリーレストラン業界も、物価上昇という逆風はあるものの、友人や家族と楽しむ日常生活に根付いた外食の在り方として売り上げを伸ばしている。日本経済新聞の記事にあるように、すかいらーくホールディングスの2023年12月期の連結最終損益が黒字に転換し、大幅な増益を達成することができている。

同記事のすかいらーくホールディングスの谷真会長への取材によると、従来の出店の中心であったロードサイド型の店舗の売上高は減少傾向にあるが、地方都市部の外食ニーズは高いため、今後は地方都市部への出店を増やしていくという。

地方都市部で行うファミレス事業の難しさ

ロードサイド型の店舗ではなく、都市型のファミリーレストランはこれまでも様々な施策が各社から打ち出されてきた。しかし、期待通りの成果を上げることができてきたかというと課題も多い。

例えば、すかいらーくホールディングスは都市型店舗として、関東圏を中心に2001年から「Sガスト」を展開してきた。定食や丼ものを中心に提供し、コストパフォーマンスの良さと手軽に食事を楽しめることが好評だったが、コロナ禍の2020年7月に全店舗が閉店している。

また、比較的都市部に強いサイゼリアも、都市型店舗では新業態を展開してきたが、現在は全店舗が閉店している。2016年から、首都圏を中心に「スパゲッティ マリアーノ」を展開していた。「オフィス街」「ランチ」マーケットの獲得にむけて、1~2分での高速提供を売りにしていた。また、2020年には和・伊融合の新業態「伊麺処」(パスタドコ)をスタートし、都市型コンパクトなファストカジュアルレストラン業態として浅草と新宿に2店舗をオープンさせている。しかし、2022年にはどの店舗も閉店している。

地方のファミレスの雄として知られるジョイフルも、都市型店舗には苦戦している。都市型店舗として実験的に大分駅前で2019年にオープンさせたジョイフル・エクスプレスは、コロナ禍の大量閉店時に終了している。このときに、同じように街中で営業していた大分駅南口店や東京都の赤坂店も閉店している。東京の赤坂店は、その後、2022年に宅配専門の「ジョイフル 赤坂南部坂店」として再スタートしている。

これまで取り上げてきたどの取り組みも、コロナ前に事業をスタートさせて、コロナ禍で閉店していることを考えると事業としてうまくいかなかったと軽々に判断できないところもある。ただ、都市部でのファミリーレストラン事業が簡単ではないことは共通しているだろう。
特に、地方都市部の飲食店は地元密着の店舗も多く、価格も首都圏に比べると驚くほど安い。フランチャイズのチェーン店が進出して、うまく顧客のニーズをつかみきれるのかは不透明なところも大きい。

ファミリーレストランが地方都市部で新事業を展開することは簡単ではないだろう。しかし、それだけ創意工夫の余地も大きい。各社がどのような施策を講じてくるのか楽しみだ。

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