女より男の方が何事も「見た目」で判断されます
男は容姿じゃないといわれていますが、実は女性以上に容姿は重要です。容姿に自信ある方がモテるのは当然として、年収も高くなります。「容姿がいいと年収が高くなる」という因果までは不明ですが、相関はあります。
具体的にいうと、容姿に自信のある男とない男とでは、生涯年収で約4500万円も差が出ます。郊外の家一軒分くらいの差がありますね。その差は丁度大企業大卒と高卒くらいの差に匹敵します。
男こそ見た目が大事なのです。
じゃあ、ブサイクはモテもしなければ、金も稼げないのか?という絶望の話かというとそれも違います。そんな記事をプレジデントオンラインにて公開しました。ぜひお読みください。
だからといって、男性も化粧をすべきとか、そう短絡的に考えないでください。確かに、最近では男性化粧品市場が活発化しています。
記事にある通り、「富士経済によると、メンズフェースケアの市場規模は、2010年の187億円から、19年は257億円に伸長。22年には283億円まで伸びる可能性がある」というように、注目市場であることは間違いない。
実は、男性コスメの盛り上がりは過去にもあって、1984年にコーセーが「ダモン・ブロンザー」という男性化粧品を発売しています。ファンデーションとアイブロウペンシルやリップスティックまでありました。世の中的に、日焼けした肌ず男女とも受けた時代です。広告キャラは天宮良(もう誰も知らないか)。結構売れました。
1984年といえば、東京麻布十番にディスコ「マハラジャ」が開店した時期です。それと連動して、アーストン・ボラ―ジュの肩パッドバリバリの服を着た「なんちゃって安全地帯(玉置浩二)」みたいな化粧した男どもが、夜の街を闊歩していた時代です。加えて、当時は男が香水をつけるのも流行りました。御用達は、シャネルの「アンテウス」。今も販売されてる。
おもしろいのは、当時も「個性の時代」とかいわれてた割には、みんな同じ物を買い、同じ格好をして、同じ場所に集まっていたというわけです。その当時、メイクしてディスコでウェイウェイしていた世代は今ちょうど還暦あたりの人たちです。
それだけではない。そもそも庶民の男の身だしなみやメイクは明治以前の江戸までは普通でした。天保期の1830年頃に発行された寺門静軒の『江戸繁昌記』には、「糠袋(ぬかぶくろ)で肌を磨く男」の描写がある。糠袋とは、主に女性用のデイリスキンケアアイテムだったが、それを使って肌のお手入れをしている男性もいたようです。
さらに遡って、天明年間(1781年~1789年)には、町人の若者の間で、眉を抜いて薄くした“かったい眉”と呼ばれるスタイルが大流行した。また、銭湯では毛切り石が常備されており、男たちはムダ毛ケアに余念がなかった。白い歯も江戸っ子の粋を表すとして、男たちは念入りなオーラルケアをしていた。
天明期に書かれた勝川春潮による錦絵「橋上の行交」などにも、男のおしゃれなセンスが表現されています。
当時、大流行の黒い縞模様の小袖に紫の縞の羽織を合わせ、帯と鼻緒の赤を差し色としてあわせ、黒いマフラーのように見えるのは、頭巾をマフラーにように使うのがトレンドだったから。ちなみに、頭に挿しているのは、雷除けのお守りでおしゃれではない。
男のメイク欲求や身だしなみ需要は別に突然出てきたものではなく、前からあったものです。
勘違いしてはいけないのは、男性メイク市場が活発化するのは、「女にモテたい」という個人的欲求がメインではなく、もっと内面の「自信を持ちたい」とか「他者に舐められたくない」という社会的な欲求になります。※ただし、前述の1980年代のは当時の「恋愛至上主義」の影響を受けて、完全に「モテる」系に振り切っていましたが、あれは例外です。
マーケターはここの本質的な部分を見誤るとダメですね。
僕は、宣伝会議で「メンズマーケティング講座」というものをもう3年くらいレギュラーでやっていますが、ぶっちゃけ男のメイクは、「女性にモテる」という訴求より、「面接に通るメイク」とか「年収換算でいくらくらい差が出る」とかの社会的な部分での訴求の方が効くと講義しています。これは、若い男だけではなく、おっさんにも響きます。ネガティブな言い方をすれば「メイクもしてないような汚いおっさんは年収下がる」ということです。
化粧品会社がやるべきは、実は顧客個人の購買動機の喚起より、「身だしなみを整えることが意識高いのではなく当たり前という環境そのものを整えること」です。環境を作れば勝手に商品は売れます。というか、市場が生まれます。
しかし、そのためには前提として、男どもの「面倒くさい病」を克服しなければなりません。男はかく「無理・無駄・面倒くさい」という理由で行動をしない理屈付けをします。これを超えないと彼らは動きません。
どうすればそれを超えられるのか?については、拙著「ソロエコノミーの襲来」に書きましたので、ご興味あればご覧ください。